■2003年7月号

今月の潮流
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バイオジャーナル

ニュース


●BSE
BSE発生、米国が打ち消しに躍起

 カナダ政府は5月20日、95年生まれの8歳の牛1頭が、ウシ海綿状脳症(BSE)に感染していることを発表した。カナダでは93年に英国から輸入した牛が発症したことがあるが、同国で生まれ育った牛での第1号感染牛となった。
 この牛は1月に屠畜されたが、検査の結果が確定したのは5月18日であった。感染は、90年以前に英国から輸入された牛の肉骨粉ではないかとされている。
 カナダでのBSE発生で危機感を強めているのが米国である。同国は、96年のBSE発生以前に英国から牛や牛肉、肉骨粉を輸入していた。欧州委員会の科学アドバイザーは、米国での発生を警告している。それに対して米農務省のBSEワーキンググループのリンダ・デトワイラは不安打ち消しに躍起となっている。
〔New Scientist 2003/5/29ほか〕

●分子農業
B型肝炎ワクチン生産作物

 作物に医薬品を生産させる分子農業の分野で、B型肝炎ワクチンが注目されている。米ニューヨーク州ロズウェル・パーク癌研究所がB型肝炎ワクチンを作り出すジャガイモを開発した。これはB型肝炎表面抗原を発現するジャガイモで、生のまま食べたマウスがB型肝炎に対する抵抗力をもったという。調理すると効果が落ちるため、トマトやバナナで開発中だという。日本でも東京理科大学でB型肝炎ワクチン生産稲の開発が進んでいる。
〔バイオ21 2003/5/28〕


●臓器移植
臓器移植法改正へ


 6月3日、自民党内に臓器移植法の改正案のたたき台をつくるワーキンググループが立ち上がった。1997年10月に施行された臓器移植法には、施行後3年を目途に見直しを行うことが明記されている。現行法では、脳死による臓器提供は15歳以上に限られ、本人の生前の書面による意思表示と家族の承諾が必要である。ワーキンググループでは、15歳以下の提供を認め、さらには書面による意思表示がなくても、本人が生前拒否しておらず、家族の承諾があれば臓器を摘出できるようにする方向で検討を進めるという。 〔河野太郎メールマガジン 2003/6/3〕

農水省、プリオン病の実験指針作成へ

 6月3日、異常プリオン・タンパク質の取り扱いなどの安全基準を定めるために招集された、「動物の伝達性海綿状脳症実験指針検討会」の第1回会合が開かれた。対象は、マウスなどの小動物や牛などの大型動物である。すでに農水省は2002年10月、農業技術研究機構動物衛生研究所にプリオン病研究センターを設置し、さらに同研究所敷地内に、牛のBSE感染実験などを行うための隔離飼育施設の整備も進めている。実験指針検討会は、6月下旬に第2回会合を開き、7月には指針案をまとめる予定だという。

農水省、イネゲノム解析に5年計画、450億円

 2003年度からスタートする産官学のビッグプロジェクトには、文科省の再生医療や30万人遺伝子バンク計画だけではなく、農水省の「イネゲノム機能解析研究」がある。独立行政法人の農業生物資源研究所と農業技術研究機構が中心となり、参加する研究機関は、名古屋大学、明治大学、理化学研究所、国立遺伝学研究所など。産業界からは、三菱化学、日立製作所、日本電気、JTなどが参加を予定している。プロジェクトリーダーは農業生物資源研究所理事・中島皐介が務め、予算は5年計画で計450億円にのぼる(2003年度概算要求額は103億円)。
 2002年12月、イネゲノムの重要部分(PHASE2)の解読が終了した。日本は約6割の塩基配列を読みとり、国際コンソーシアムのなかでもトップだった。現在、イネゲノムに関する日本の特許出願は50件で、うち36件が遺伝子機能特許である。イネゲノム機能解析研究では、2004年度末までに100件、2008年度末までに200件の遺伝子機能特許の取得が目標として掲げられている。また農水省の試算によれば、この研究の成果が生み出す市場規模は、高機能性品種が4000億円、特定疾患対応品種が2000億円、健康食品素材が1000億円に達するという。あくまでも絵に描いたモチではあるが、これによって「知的財産権を握り、我が国の競争力を高め」ようというのが、農水省の狙いである。国際競争力の強化という旗印の下に、生命の特許化はエスカレートの一途をたどっている。