■2003年8月号

今月の潮流
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今月のできごと


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バイオジャーナル

ニュース


●遺伝子組み換え作物
オーストラリア州政府がGMナタネ禁止

 オーストラリアでは、遺伝子組み換えナタネの栽培が認可され、バイエル・クロップサイエンス社が作付けを予定していた。しかし、州政府が相次いでGMナタネの作付け禁止措置をとり、5月8日、態度を明確にしていなかったビクトリア州政府がGM作物の商業栽培を1年間禁止したため、同国での今年度中のGMナタネ作付けは不可能になった。

デュポン社がGMトウモロコシ野外実験へ

 米国デュポン社が、日本国内において遺伝子組み換えトウモロコシの野外実験を開始する。対象は、同社の子会社パイオニア・ハイブレッド社とダウ・アグロサイエンス社が共同開発した、除草剤(グリホシネート)耐性と害虫(殺虫毒素Cry34AB1)耐性の性質を組み合わせたトウモロコシ。デュポン社はSTAFF(農林水産先端技術産業振興センター)と共同で農水省に実験の申請を行い、認可された。実験は、遺伝子の挿入位置が異なる4系統で行う予定である。

インドでGMジャガイモ開発進む

 タンパク質や他の栄養分を増やしたGMジャガイモが承認される見通しである、とインド政府・バイオテクノロジー部長マンジュ・シャルマが発表した。これはProtatoとよばれるジャガイモに、アマランス由来の遺伝子を導入したもので、通常のジャガイモよりタンパク質含量が20〜50%増えるという。同国バイオテクノロジー部遺伝子組み換え審査委員会の中心的人物アシス・ダッタ率いる研究チームが開発し、すでに野外実験が積み重ねられている。その後、この発表はシャルマの独断であることが判明した。ニューデリーにある科学技術・エコロジー研究財団は、シャルマが進める、このGMジャガイモを学校給食に用いる計画を批判し、豆類の方がタンパク質が多いこと、鉄分やカルシウムが通常のアマランスよりも低いことなどの問題点を指摘した。
〔The Hindu 2003/6/14ほか〕

南アフリカでGM綿が拡大

 南アフリカ共和国は、アフリカ大陸で遺伝子組み換え作物を推進している唯一の国である。90年代前半に遺伝子組み換え試験委員会が設置された。97年に初めてGM綿の生産が承認され、98年にはトウモロコシ、2001年には大豆が承認され、作付けが認められている。2001―2002年に同国で収穫された綿は、70%が遺伝子組み換え綿で占めるまでに拡大している。 〔農水省HP海外農業情報〕

GM飼料で死亡率2倍に

 GMトウモロコシを鶏に摂取させる実験で、42日間の飼育で死亡率が2倍になり、成長にばらつきがでるという結果が出た。今回の実験は、バイテク企業の依頼で、カナダ・オンタリオ州のグエルフ大学が実施した。用いた雄鶏はGM飼料投与群140羽と対照群140羽の合計280羽。用いたGMトウモロコシは、バイエル・クロップサイエンス社開発の「T25」である。 〔Daily Mail 2003/6/25〕

医薬品生産のGM作物開発へ

 国立医薬品食品衛生研究所は、医薬品を生産する遺伝子組み換え作物の開発を始める。筑波薬用植物栽培試験場内に施設を置き、来年夏にも開始する予定。GM作物開発とともに、海外で開発された医薬品生産用作物の評価方法の確立も目標にしている。
〔日経バイオテク 2003/6/23〕

●ES細胞
文科省、岐阜大ヒトES細胞計画を承認

 7月4日、特定胚及びヒトES細胞研究専門委員会(文科相諮問機関、科学技術・学術審議会)が開かれ、前回承認が見送られた岐阜大学医学部申請のヒトES細胞使用計画の再審査が行われた。オーストラリアのモナシュ大学から輸入したヒトES細胞を用い、心筋細胞を作り出す研究を行う。計画書に添付されていた学内倫理委員会の議事録に“不適切な発言”がある、との指摘が複数の委員からなされた。ヒトES細胞のもととなる余剰胚を、「本来、殺されるものを助けてあげる」との研究者の発言をめぐり審議は難航した。最終的には、問題箇所を指摘したコメントを付けて承認された。


ことば
*アマランス
 ヒユ科の一年草植物。世界では10種類、穂や葉の部分が食されている。