■2022年1月号

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バイオジャーナル

急速に市場化が進む日本のゲノム編集食品

 

 2021年、新型コロナ感染症の影響が続くなか、日本ではゲノム編集食品の市場化が相次いだ。まず、高GABAトマトが先陣を切った。開発者の筑波大学の江面浩教授が立ち上げたベンチャー企業サナテックシード社は、5月に苗の一般への無償配布を始めた。並行して提携農家での栽培を行ない、9月15日からサナテックシード社の親会社にあたるパイオニアエコサイエンス社が、トマトの販売を開始した。さらにパイオニアエコサイエンス社は10月11日に苗の一般販売を、さらに年内にトマトピューレの販売も開始した。 それに続いたのが魚である。9月17日に肉厚のマダイ、10月29日に成長を早めたフグの届け出を厚労省が受理し、12月6日から販売が開始された。これらを開発し販売しているのがリージョナルフィッシュ社で、京都大学の木下政人准教授と近畿大学の家戸敬太郎教授が立ち上げたベンチャー企業である。NTTドコモは、10月11日、リージョナルフィッシュ社、奥村組、岩谷産業と組んで、最適なバナエイエビの養殖方法を探る実証実験を開始すると発表した。

作物では、稲、ジャガイモ、小麦の栽培試験が進んでいる。稲とジャガイモは、筑波研究学園都市にある農研機構(国立研究開発法人 農業・食品産業技術総合研究機構)の圃場で栽培している。農研機構が開発した収量増を目的にした「シンク能改変稲」は、5年計画で栽培試験を進め、今年がその5年目にあたり、いずれ何らかの形で成果が発表されると思われる。ジャガイモは、理化学研究所が開発した芽にできる有害物質のソラニンなどのアルカロイドを少なくした品種で、今年に入り春と秋の2度作付けされた。小麦は、岡山大学開発の種子休眠性遺伝子を操作して種子の休眠期間を長くした、種子が雨などにぬれても発芽し難くした品種で、11月から倉敷市にある大学の圃場で栽培試験が始まった。研究チームは、同様に発芽し難くした大麦も開発している。

その他、国立大学法人東海国立大学機構の名古屋大学が、糖度の高いトマトを開発した。また高GABAトマトを開発した江面教授が日持ちメロンを開発している。世界的に見ても、日本はゲノム編集開発の先陣を切っているといえる。