●政府動向
食品安全委員会GM専門調査会発足
10月6日、食品安全委員会の遺伝子組み換え食品等専門調査会が発足し、第1回目の会合が開かれた。座長は早川堯夫国立医薬品食品衛生研究所副所長。6月30日まで厚生労働省が担当していた遺伝子組み換え食品の安全審査が、7月1日から食品安全委員会に代わったことによりメンバーは一新されたが、15名のうち国立医薬品食品衛生研究所から5名選ばれるなど、偏りもみられる。同専門調査会は、コーデックス委員会バイオテクノロジー応用食品特別部会が作成し、今年7月の総会で了承された「GM食品安全審査の基準」をベースに、独自の安全審査の基準づくりを行う。その後に、審査が再開される。
バイオ関連予算要求、大幅増
来年度の予算要求が出そろい、バイオ関連予算は政府全体で25%増の大幅増額になった。なかでも目立つのが農水省で、87%の増額要求である。独立行政法人が持つ技術シーズ応用化支援に46億円要求している。このなかにはGM作物の農業への応用も含まれている。〔日経バイオテク
2003/9/29〕
経産省、カルタヘナ議定書国内法施行規則案まとまる
9月29日、遺伝子組換え生物管理小委員会(経産相諮問機関、産業構造審議会)が開かれ、カルタヘナ議定書国内法の具体的な手続きや技術的基準を定める施行規則案などがまとめられた。カルタヘナ議定書は、締約国が50カ国に達して9月11日に発効し、2004年2月末には第1回締約国会議の開催が決まっている。経産省でまとめられた施行規則などは、11月21日までに省令や告示といった形で公布され、2004年2月には国内法が全面施行となる。
農水省、プリオン病の動物実験指針まとまる
10月1日、動物の伝達性海綿状脳症実験指針検討会が開かれ、6月から議論してきたプリオン病の動物実験指針がまとめられた。指針案には、一般からの意見募集に寄せられた国立感染症研究所の研究者の意見等によって、若干の修正が加えられた。この指針が適用されるのは農水省所管の研究所であるため、厚労省所管の感染研には適用されないが、感染研の規定ではレベル2で行う実験が、今回の農水省指針ではレベル3と厳しくなり、規制が強化される点についての研究者の意見は採用されなかった。指針の整備によって、農水省が2003年度から5年計画で着手するビッグプロジェクト「BSE等動物プリオン病の制圧のための技術開発」は本格的に動き出すことになる。
●遺伝子治療
厚労省、遺伝子治療の環境影響を評価
10月2日、科学技術部会(厚労相諮問機関、厚生科学審議会)が開かれ、2004年2月のカルタヘナ議定書の国内法施行に向け、遺伝子治療に使われるウイルスベクターが環境に与える影響を評価する専門委員会の設置が決まった。ベクターとは遺伝子の運び屋という意味で、目的とする遺伝子を導入する際に用いられる。ウイルスではレトロウイルスやアデノウイルスが使われている。目的とする人の遺伝子をそれらのウイルスに組み込み、そのウイルスを人の細胞に感染させて遺伝子を導入する。したがって、ウイルスベクターとは遺伝子組み換え技術によって作り出された組み換え体であり、それが環境中に放出される。これまで安全性と有効性しか議論されてこなかったが、環境影響という新たな視点が遺伝子治療に加わったことになる。
●遺伝子汚染
スペインで広がるGM汚染
スペインの地球の友、グリーンピースは、同国内でBt耐性を持った昆虫が増えたため、環境に有害な強力な殺虫剤の使用量が増大していると報告した。また、遺伝子組み換えトウモロコシが85ha作付けされているナヴァラ地方で、隣接した有機農業の農地がGM花粉汚染のために有機認証が取り消されたとして、スペイン政府のGM政策を批判した。
〔Farmers Weekly Interactive 2003/8/27〕
●表示問題
カナダでGM表示制度成立
これまでGM表示のなかったカナダで、4年間の審議を経て表示制度が成立した。しかし、任意表示のため、GM食品は明らかにならず、また、GM不使用表示の食品が増えると考えられるが、5%までの混入が認められているため、事実上は遺伝子組み換え食品を拒否できない、と消費者団体や市民団体が批判している。〔ロイター
2003/9/8〕
●WTO
米国のEU提訴、調査始まる
WTO(世界貿易機関)は、米国がEUのGM政策を「事実上の米国産食品締め出し」として提訴したのを受けて、調査に入る。今後3人の裁判官による18カ月の尋問がつづく。米国は、EUの「予防原則」に基づくGM政策は、科学的根拠がないと主張している。EUは新表示規則によってモラトリアムが解除され、GM栽培や流通の認可が進むとしており、その対立点をどのように判断するかが注目される。
〔BBCニュース 2003/8/29〕
●企業動向
日本モンサント社がGM小麦申請を準備
モンサント社は現在、米国・カナダで遺伝子組み換え小麦を申請中である。両国での認可を想定して日本モンサント社は、日本で食品としての流通を認めるよう、食品安全委員会への申請を準備していることが同社のバイオ作物情報室長坂本智美によって、明らかになった。〔Soya
& Oilseed Industry News 2003/9/16〕
●プリオン
感染性スクレイピーが出現?
羊のプリオン病であるスクレイピーは人間に感染したことはない。BSE(狂牛病)の原因は、羊からの感染とみられており、感染した牛の中で人間への感染力をもったと考えられている。
ここにきて、牛から羊への感染が問題になっている。というのも、人間への感染力を持ったスクレイピーが発生する可能性があるためだ。現在英国では、牛から感染した疑いが強まったため、羊の脳のサンプルが収集され、調査が進められている。羊の場合、牛よりも危険部位が多いため、食品の安全性を確保することがより難しくなる。
〔ガーディアン・ウイークリー 2003/9/18〕
●自治体動向
神奈川県下でGM栽培中止の意見書採択
9月下旬、神奈川県で相次いで遺伝子組み換え作物栽培中止を求める意見書が採択された。採択したのは、綾瀬市と茅ヶ崎市で、内容は、1、現在行われている野外実験の即時中止、2、計画中の野外栽培の凍結、3、新規栽培計画の中止、である。このような意見書が採択されたのは、日本では初めてである。
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