広島大学大学院統合生命科学研究科教授の堀内浩幸らの研究チームはキユーピーと共同で、低アレルゲン鶏卵を開発したと発表した。実用化に向けて、これから相模原病院で臨床試験に入る。この鶏卵は、ゲノム編集技術を用いて、卵白にある主要アレルゲンのオボムコイド遺伝子を破壊した。ゲノム編集に用いたのはCRISPR-Cas9ではなく、広島大学の研究チームが開発したプラチナターレン技術である。
鶏卵にはその他に多くのアレルゲンタンパク質がある。オボアルブミン、オボトランスフェリン、オボムチン、リゾチームなどである。研究チームによると、オボムコイド以外は、加熱でアレルゲン性が低下するとしている。このオボムコイド遺伝子を破壊した鶏から誕生したヒナを交配・産卵させ、低アレルギー鶏卵を生産させる。研究では全ゲノムが解析され、問題はなかったとしている。開発経緯は、「Food and Chemical Toxicology(2023年3月12日オンライン版)に掲載された。〔広島大学 2023/4/26〕
広島大学の堀内浩幸教授らは、始原生殖細胞と呼ばれる精子や卵子の基となる細胞に、CRISPR-Cas9のDNA切断カセットを導入する取り組みも進めており、その技術を用いて雄を誕生させない鶏づくりを進めている。また産業技術総合研究所(産総研)のバイオメディカル研究部門の大石勲らは、始原生殖細胞にCRISPR-Cas9のDNA切断カセットを導入し、オボムコイドができない鶏を開発している。今回の広島大学とキユーピーの共同開発は国内特許のプラチナターレン技術を用いており、産業化に向けての本格的な動きを作り出したといえる。
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