■2023年8月号

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バイオジャーナル

CRISPR-Casを用いた新たな操作「エピゲノム育種」

 

ゲノム編集魚を養殖・販売しているリージョナルフィッシュ社は6月27日、新たな会社NTTグリーン&フード社をNTTと合弁で立ち上げた。当面、九州エリアで高温耐性のヒラメの養殖を進め、10年後には20拠点で養殖を行い、ヒラメの開発ではエピゲノム育種を用いるという。

このエピゲノム育種が、魚だけでなく果樹・野菜・カキなどにも広がっている。エピゲノム育種とは、エピゲノム編集で開発した作物や魚などを育てることで、DNAを操作するのではなく、DNAやDNAに巻き付いているヒストンタンパク質の修飾を変える操作で開発している。修飾にはメチル化やアセチル化がある。例えばDNAを構成するシトシン塩基にメチル基が付いたり離れたりして、遺伝子の働きはコントロールされている。メチル基が付くと遺伝子の働きが止まり、脱メチル化が起きるとまた働き始める。それを意図的に行うのである。

エピゲノム編集は、ゲノム編集のようにDNAを直接壊さないため、現在は規制の対象になっていない。しかし、操作の方法はゲノム編集とまったく同じで、CRISPR-Casを用いる。現在、農研機構、味の素、岩手生物工学研究センターが共同で、この技術を用いて花卉、野菜、果実などの開発を進めている。農研機構はまた別途、稲を用いて「超迅速イネ開発法」の研究を進めている。〔NTT 2023/6/27ほか〕