●自治体動向
岩手県、GM稲の実用化せずと明言
10月27日、岩手県の各市町村や生協などに、岩手県農林水産部長名で「.岩手県生物工学研究センターにおける遺伝子組換え研究について」という見解が送られてきた。遺伝子組み換え研究一般に関する県の考え方では、遺伝子組み換え食品の開発は行わない、としている。岩手県生物工学研究センターにおける遺伝子組み換え稲の隔離圃場での試験に関する見解では、この稲を食品として実用化しない、試験圃場と一般の水田とは120m離れ
ているので花粉飛散による交雑は起きない、としている。
北海道瀬棚町がGM稲試験栽培に反対決議
9月30日、北海道瀬棚町議会は、遺伝子組み換え稲の試験栽培に反対する意見書を採択し、衆議院議長に提出した。意見書は、北海道農業研究センターで今回実施されたGM稲の試験栽培は独善的であるとし、同センターでのGM稲試験栽培の即刻中止と、国民の理解を得られるまで一般圃場での試験を実施しないことを求めている。
GMメロンに関する島根県の見解
島根県は、遺伝子組み換えメロン研究についての姿勢を明らかにした。
スケジュールについては、島根県農林水産部が2002年3月に発表した「農林水産試験研究構想」で、2005年度までに隔離圃場での安全性確認と、食品としての安全性確認開始までを達成目標としている。
研究については、「メロンは自家受精が主で花粉は遠くへは飛ばない」と述べながら、同時に「受粉に蜂を使う。蜂はハウスを出入りする。数キロ飛ぶ」とし、蜂を媒介とした花粉の拡散による遺伝子汚染の可能性を否定していない。虫媒花の場合、花粉の広がりは予測できない。
次に、仮に他家受粉したとしても、種を食べるわけではなく果実を食べるので「果実は当代で遺伝子は植えた苗のものなので遺伝子汚染はない」と述べている。遺伝子汚染とは、花粉による組み換え遺伝子の拡散を意味する概念であり、ここでの使い方が間違っていることはさておき、果実に問題がないような指摘も問題である。確かに果実は「苗」由来であるが、生井兵治筑波大学名誉教授によれば、メタキセニア現象─花粉親の遺伝子の影響が直接的に種皮や果実に及ぶこと─があるという。果実中には組み換え遺伝子そのものはないが、組み換え遺伝子の影響はあり得るのである。
●政府動向
食品安全委員会に2つのGM食品を諮問
10月30日、厚労省食品安全部新開発食品保健対策室は、食品安全委員会に、2つの遺伝子組み換え食品、5つの遺伝子組み換え食品添加物の安全性審査を求めた。食品は、モンサント社の殺虫性トウモロコシMON810と同MON863を掛け合わせた後代交配種と、バイエル・クロップサイエンス社の除草剤耐性綿LL
Cotton25の2種類である。食品安全委員会の遺伝子組み換え食品専門調査会は、現在、安全性審査の基準づくりを進めており、とくに後代交配種に対してどのような審査が行われるかが注目される。
●クローン
ヒト胚の取扱いで議論紛糾
ヒト胚の取扱いに関する内閣府総合科学技術会議生命倫理専門調査会での議論が、いよいよ大詰めを迎えている。人クローン規制法の施行から3年以内に結論を出さなければならないため、タイムリミットは2004年6月である。10月28日に開かれた会合で中間報告書をまとめようとしたが、委員の間で意見が割れて収拾がつかなくなり、次回会合に持ち越すことになった。
報告書案では、ヒト胚を「人の生命の萌芽」という中間的存在に定義付けし、その取扱いについては現状を追認する形になっている。ヒトクローン胚の作成については、モラトリアムの継続もしくは解禁という両論併記となっている。
これに対して、考察が浅く、まだ議論が尽くされていないと反発する委員が多数おり、とくに東京大学大学院教授の島薗進は徹底抗戦する構えを見せた。島薗は、「『人体の道具化と産業化』にはまったく触れず、研究の医学的有用性のみを強調している」として、報告書案を作る段階でも、会長の井村裕夫から依頼されていた宗教的観点の記載を拒否している。
国連でヒトクローン禁止条約を検討
現在、国連ではヒトクローン個体産生禁止条約が検討されているが、各国の意見が大きく2つに割れ、調整が難航している。全面禁止派のコスタリカ提出決議案(50カ国以上が共同提案)と、個体産生は禁止だが治療用クローニングについてはそれぞれの国で考えるという、部分禁止派のベルギー提出決議案(20カ国以上が共同提案)とが激しく対立している。外務省の国際科学協力室によれば、日本は部分禁止派を支持しているという。条約を検討するアドホック委員会の設置が決議されたのが2001年12月なので、足かけ2年にわたって議論は続いている。結局、11月6日に、イランが提案した2年後の総会まで結論を延期するという動議が1票差で採択された。
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