■2004年1月号

今月の潮流
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今月のできごと


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バイオジャーナル

ニュース


●海外事情
EUのGM食品モラトリアム継続

 EU規制委員会は、欧州委員会が提案していた食品目的でのGMスイートコーン(Bt11)の輸入認可を否決した。これまで英国政府が強く輸入を求めていたが、今回認められなかったことで、4年間つづいていたGM食品認可の停止(モラトリアム)が事実上継続されることになる。EUの新GM表示規則は2004年4月に、EU加盟国全体で発効する。NGOの「地球の友」は、このような提案が発効前になされたことを批判する声明を発表した。〔Citizens Intelligence Watch 2003/11/10〕

アフリカへGM作物売り込み

 米国政府とモンサント社は、アフリカ・バイオ協会を通して、アフリカ諸国への遺伝子組み換え作物の売り込みを画策している。この協会は、モンサント社などバイテク企業から資金を得て活動しているGM作物推進団体で、かつてモンサント社に在籍したケニアの植物学者フローレンス・ワンブグなどが、旗振り役を担っている。米国政府は同協会に1億ドル、USAID(米国国際開発庁)は1500万ドルの支援を発表している。
 これに対してドイツ政府は、GM規制強化のためにアフリカ各国政府に230万ドルの支援を決めた。欧米間で繰り広げられるGM食糧紛争の舞台が、アフリカに移ったかのような様相を呈している。 〔Nature 2003/11/20〕

英ナショナル・トラストがGMフリー宣言

 英国のナショナル・トラストは年次総会で、トラストの土地におけるGM作物栽培禁止を圧倒的多数で可決した。GM作物支持はわずか15%だった(保留26%)。英国ナショナル・トラストは、60万エーカー以上の土地を保有し、その80%以上で農業を営んでいる。
 英国で最も農作物を作り、扱っている生活協同組合もまた、アンケート調査に基づきGM作物を扱わないことを決めた。GM食品反対の人は55%、GM作物商業栽培を認めるべきではないという人が78%を占め、生協としてGM作物の栽培を行わず、家畜にGM由来の飼料を使わず、生協ブランドの食品にはGM作物を扱わず、生協の金融機関はGM企業に融資しないことを決めた。〔Immediate Release 2003/11/15ほか〕

ヴァチカンでGMOの是非をめぐる論議

 11月10〜11日に、ヴァチカンにあるローマ教皇庁の正義と平和評議会で、「GMO、脅威か希望か」と題するシンポジウムが開催された。67人が参加したこのシンポジウムの議論は、GMOに対するヴァチカンとしての公式見解の基本となるはずだった。
 しかし、このシンポジウム参加者の人選は、ヴァチカンきってのGMO推進派である同評議会委員長のレナート・ラファエレ・マルティーノ大司教が取り仕切り、討議も推進派に有利に展開された。そのためザンビアで活動するイエズス会の修道士など、ここでの議論に基づいて結論を出すことに批判的な人たちも少なくない。〔AP 2003/11/17〕

英国で増えるGMフリー自治体

 英国で遺伝子組み換え作物を拒否する、GMフリーを宣言する自治体が増えている。先月報告したブライトン、ホーブの両市議会につづいて、11月3日にはオックスフォードシャー州議会がGMフリーを採択した。賛成40、反対9の圧倒的多数で可決したもので、GM作物の栽培が禁止され、学校や福祉施設での食事からGM食品が排除される。 〔地球の友 2003/11/3〕

●安全性論争
「実質的同等性」が否定される

 10月16、17日に開かれた第6回自然系調査研究機関連絡会議(石川県)の調査研究活動事例発表会において注目すべき発表があった。国立環境研究所主任研究員・玉置雅紀によれば、分子レベルでは遺伝子組み換え体は実質的同等ではない可能性を示唆する研究成果を得たという。
 遺伝子組み換え植物の安全性は、現状では、それらが従来からあった類似の植物と成分、形態、生態的特徴などと比べて、導入された外来遺伝子の直接産物以外はまったく同じであるという「実質的同等性」の概念をもってまず評価されるが、この概念の分子レベルでの検証実験は現在まで行われてこなかった。このたび、2種類のGM植物で、約4000種類の遺伝子の転写、翻訳過程を調べたところ、いずれも導入した遺伝子によって遺伝子発現の攪乱が観察されたという。GM食品推進の前提となる安全性評価を根本から揺るがしかねない重大な結果で、さらなる検証が待たれる。


●遺伝子組み換え作物
ニュージーランドでGM玉ねぎの野外実験へ


 ニュージーランドで、除草剤耐性玉ねぎの野外実験が申請されている。「Crop & Food Research」という研究所が環境危機監理局(Enviromental Risk Management Authority)に申請を出した。2003年7月に実験の内容が公表されて以来、1900件の意見が寄せられ、それに基づいて公聴会が開かれたが、発言者は推進派に偏り反対意見はほとんど無視された、とGMフリー・ニュージーランドの会長クレア・ブリークリーは批判している。〔NewZealand News 2003/11/4〕

ブラジルGM大豆解禁その後

 9月25日にブラジルで遺伝子組み換え作物栽培禁止令が解除された。政府は、GM大豆の栽培を登録制にして、登録しなかった場合は罰金を科した上に、予想価格の10%を徴収することにした。登録期限の10月末の時点で、登録者は11,199件(内リオ・グランデ・ド・スール州が10,790件)で、農業相が予想した5〜10万件を大きく下回り、登録期限を12月9日まで延長することになった。
 他方モンサント社は、GM大豆栽培農家から特許料を徴収すると発表した。これまでもリオ・グランデ・ド・スール州では、アルゼンチンから種子が入り込み、GM大豆栽培が行われてきたが、非合法の形だったため徴収できなかった。合法化に伴い、登録した農家には低額の特許料を課し、違法栽培農家は摘発し検査料を加算した高額の特許料を同社は徴収する予定である。〔Agriculture online news 2003/11/5〕

GM小麦がトウモロコシ農家の脅威に

 米国では、トウモロコシ農家の間で、遺伝子組み換え小麦導入に対する懸念が強まっている、と米トウモロコシ生産者基金会長のダン・マクガイアは語った。アジアやヨーロッパの小麦輸入業者や製粉業者が、GM小麦を買わないことがあらかじめ予想されている。もしも余剰小麦が増えつづけ、価格がトウモロコシ並みに下落した場合、そもそも家禽類の飼料には小麦の方が適しているため、トウモロコシに取って代わられる可能性が強まるからだ。〔CropChoice News 2003/11/2〕


カナダでGM作物憂慮の秘密文書公開

 遺伝子組み換え作物に関する、カナダ政府高級官僚が内閣に提出した秘密文書が情報公開により明るみに出た。カナダがGM作物を継続的に生産・輸出しつづけたために、食糧生産・消費・輸出全体が危機に陥っている、という内容で、生産者は市場を失い、消費者は選択できないことで問題が山積している、と指摘している。これは情報公開法で明らかになったものだが、提言に関する項目は公開されなかった。
 カナダの生産者がいま最も懸念しているのは、GM小麦の導入で、日本やヨーロッパの不買が広がり大きな市場を失う可能性だ。現在、GM小麦をストップできる仕組みを政府がもっていないことに対して、不安を募らせている。 〔The Guardian 2003/11/13〕