■2004年3月号

今月の潮流
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今月のできごと


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バイオジャーナル

ニュース


●モンサント
インドで小麦の特許権取得

 モンサント社は、インドでよく食されているチャパティの原料、ナッパ・ハル小麦の特許権を取得した。もともとはユニリバー社が遺伝子配列を特定し取得したもので、モンサント社が同社を買収したことから、特許権はモンサント社のものになった。ナッパ・ハル小麦は、インドの農民が何世代にもわたって交雑を繰り返してつくり上げた品種であり、特許権をタテにして同社が利益を上げようとしていることに、インド国内で批判が強まっている。 〔ガーディアン 2004/1/31〕

ブラジル州政府が特許料支払いに合意

 ブラジルで最もGM大豆が栽培されているリオ・グランデ・ド・スール州政府は、モンサント社に対してGM大豆を正式に購入し、特許権使用料を支払うことで合意した。これまで同州では、アルゼンチンからの闇ルートで流れた種子で栽培していた。これからは徴収を代行した農協や輸出業者らが、同社に支払うことになる。同州では3月に収穫期を迎えるが、全大豆生産量の9割がGM品種と見られている。 〔アグリカルチャー・オンライン・ニュース 2004/1/28〕

アルゼンチンでの種子販売中止

 1月19日、モンサント社は、アルゼンチンにおけるGM大豆種子の販売を一時中止すると発表した。経済破綻したアルゼンチンは世界最大の債務国であるため、種子代が回収できない状況に業を煮やしたものと思われる。同国では、すでに全大豆畑が同社の大豆となっており、栽培面積も拡大している。販売中止の理由には、大豆種子の半分が自家採種され闇ルートで流れたものであることも関係している。 〔ロイター 2004/1/18〕

カナダがGM小麦の共同開発を中止

 カナダ農業省は、1997年以来モンサント社と共同開発してきた、GM小麦からの撤退を明らかにした。カナダの生産者・消費者の間で広がっている、GM小麦への懸念や反対の意向に配慮したものである。カナダ小麦局もまた、昨年来、モンサント社に対して小麦の承認申請を取り下げるように求めているが、モンサント社は強気の姿勢を崩していない。

シュマイザー裁判、最高裁法廷開かれる

 1月20日、モンサント社から特許権侵害で訴えられているカナダの農民、パーシー・シュマイザーの最高裁での公判が開かれた。シュマイザー側は、農民が種子を保存する権利を主張し、モンサント社側は、ナタネ畑の種子の95〜98%がGM品種であるという従来の主張を繰り返した。モンサント社の主張は、マニトバ大学の分析ですでに否定されており、同社の戦術が行き詰まったことを示している。審理はこの1回だけで、数か月後に判決が出る。

●海外動向
ドイツ政府、GM作物にゴーサイン

 ドイツの政府与党である社会民主党と緑の党が、GM作物・食品の栽培と販売を認める法案に合意し、2月の閣議で承認されることになった。この法案は、EUのGM表示規則や栽培指針に則した食品の表示と栽培の際の条件に基づいていると思われ、事実上、ドイツでのGM作物の栽培や流通は難しくなるだろう。名を取った社民党と、実を取った緑の党の妥協の産物といえる。

ベルギー政府、GMナタネの栽培を拒否

 ベルギー政府は2月2日、独バイエル・クロップサイエンス社申請のGMナタネ栽培を拒否した。英国王立協会が発表した、生物多様性への影響評価実験で野生生物に悪影響が出たことを専門家が考慮したためである。このベルギー政府の決定はEU全体の審査に反映されるため、実質的に同社のナタネはEUでの栽培が不可能になった。

米農務省、GM作物栽培規制見直しへ

 1月22日、米農務省は、GM作物の国際間の移動、州間の移動、環境放出に関する規制の見直しに着手したことを明らかにした。この見直しによって規制が強化されるか否かは不透明で、アン・ベネマン農務長官は「科学技術の進歩に合わせたもの」とコメントしている。
 バイテク産業界は変更によって消費者の理解が得られやすくなるとの思惑から歓迎を表明し、市民団体も規制強化につながることを期待するコメントを発表している。 〔ワシントンポストほか 2004/1/23〕


●鳥インフルエンザ
ウイルスの感染源は?

 1月15日、農水省は食糧・農業・農村政策審議会、消費・安全分科会家畜衛生部会の家禽疾病小委員会を開き、山口県で発生した高病原性鳥インフルエンザについて検討した。鶏から分離された血清亜型H5・N1はもともと自然界に広く存在する、渡り鳥の可能性は低い、病気が発生した養鶏場に雛を出荷した農場では発生していないことから、感染源は特定できないとした。鳥インフルエンザで鶏が大量死する半年前に米国で産卵率が低下した例を踏まえ、過去のデータの調査を行うことが決まった。