■2004年6月号

今月の潮流
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今月のできごと


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バイオジャーナル

ニュース


●海外事情
豪州のGMカノーラ試験、波紋広げる

 オーストラリアのニューサウス・ウェールズ州でGMカノーラの栽培試験の認可(前号参照)が、各方面に波紋を広げている。
 最大の食用油製造メーカーであるユニリーバ社がGM原料を用いない方針を打ち出し、飼料会社のマックスミス・ミリング社も、GMカノーラ拒否を言明した。多くの農家も、非GMカノーラが汚染されることを憂慮している。
懸念されるGM汚染に対して、責任や補償問題が明確でないため、保険会社も見解が定まらず困惑している。5月12日、モンサント社は栽培計画中止を発表した。 〔ABC News online 2004/4/4など〕

ニュージーランドでGM小麦申請

 アルゼンチンの大豆畑がモンサント社の除草剤耐性大豆で占められた結果、同国の環境が危機に直面している、と『ニュー・サイエンティスト』誌が報告した。現在、大豆農家はGM大豆導入以前に比べて2倍以上の除草剤を使用している。原因は除草剤の効かない「スーパー雑草」がはびこり手がつけられなくなっているためだ。除草剤の大量使用によって家畜にも健康被害が広がり、土壌微生物も減少している。モンサント社の宣伝を信じてGM大豆畑を拡大したため、他の主要農作物の生産量は大きく低下している。 〔The Guardian Weekly 2004/4/22〕


GM豚が飼料に

 スイス・シンジェンタ社申請の殺虫性トウモロコシ(Bt-11)は、4月26日欧州農相理事会では必要票数不足のため承認されなかった。この結果、審査は欧州委員会に差し戻され、そこで決定されるが、来月にも承認される見込みである。
 EUでは、4月18日から遺伝子組み換え食品・飼料の新しい表示規則がスタートした。スタートと同時にモラトリアムが解除されたため、農相理事会の不承認は想定外だった。欧州各国でGM食品に対する批判が予想以上に広がっていることを示したといえる。

生物多様性影響評価審査始まる

 北アイルランドでは、遺伝子組み換え食品が政党間の論争の的になっている。シン・フェイン党は、「北アイルランドをGM禁止区域にすべきだ」と主張しており、もっともラジカルである。民主統一党は、シン・フェイン党の主張にのることはできないとしつつも、「GMO問題はもっと研究が必要だ」と述べている。SDLP党は「GM農産物に関する情報が少なすぎる、生産者・消費者はもっと情報が与えられるべきである」と主張している。UUP党は「私たちは過激な行動は好まないが、人々の命を危険にさらしたくない」と述べている。

インドネシアでモンサント社が不正取引か?

 イングランドのウイルトシャー州議会が、GMフリー自治体宣言を可決した。これによって英国では1400万以上の人がGMフリー自治体で生活することになる。欧州委員会も、GMフリー・ゾーン(禁止区域)の設定を容認しており、この動きがEU全体に波及していくものと思われる。 〔FoE UK 2004/4/22〕

厚労省、死亡胎児の取扱いで集中審議

 フィリピン政府は、トウモロコシ、ナタネ、綿、大豆、ジャガイモの5作物17品目のGM食品の輸入を承認し、同国では本格的にGM作物が流通することになった。また、モンサント社のBtトウモロコシに次いで、パイオニア・ハイブレッド社のBtトウモロコシも商業栽培が承認された。モンサント社の除草剤耐性トウモロコシの承認も間近と見られている。昨年同国では、1万人の農家で2万haのBtトウモロコシが栽培されたが、今年は5万haに拡大すると予想されている。この政府のGM容認政策に対して、農民や市民団体の間で、生物多様性条約カルタヘナ議定書を無視するものだと、批判が強まっている。 〔The Philippine STAR 2004/4/20〕

●BSE
総合科学技術会議、ヒト胚審議で議論紛糾


 食品安全委員会は、米国からの強い要請もあり、全頭検査見直しに着手した。現在OIE(国際獣疫事務局)が、国際基準づくりを進めており、それに沿った形になるものと思われる。基本的には、現在行われている一定月齢以上の検査(例えば20カ月)と、脳、眼などの危険部位の除去が、部位ごとに月齢を変えた基準になるものと思われる。現在米国は、歩行などに異常が見られる牛以外はほとんど検査していないため、直ちに輸入解禁になるわけではないが、最終的には日米政府間の協議で決着がはかられる見込みである。