■2004年8月号

今月の潮流
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バイオジャーナル

ニュース


●欧州事情
ドイツでGM作物栽培規制法案可決

 ドイツ連邦議会下院において連立与党(社民党・緑の党)は、きわめて厳しいGM作物栽培規制法案を可決成立させた。この法律では、GM作物の栽培区域が制限され、登録しなければならない。GM作物を栽培する農民は、非GM作物栽培地との間に距離を置き、花粉の飛散防止が求められる。また、遺伝子汚染を起こした場合、GM作付け農家は損害賠償責任を負うことになる。野党は、この法律は事実上ドイツでGM作物を栽培困難にさせるものだ、と批判している。 〔Deutsche Welle 2004/6/18〕

欧州委員会、相次ぐGM拒否

 6月10日、欧州委員会の諮問をうけたEU規制委員会において、モンサント社の除草剤耐性ナタネ「GT73」の輸入に関する申請は承認されなかった。欧州委員会は次に閣僚協議会に諮問するが、ここで承認を得られなければ欧州委員会に差し戻される。
 6月28日、同様に欧州委員会の諮問をうけたEU環境担当閣僚会議において、モンサント社の除草剤耐性トウモロコシ「NK603」の食品用途での申請に関しても承認はされなかった。この結果、欧州委員会に差し戻された。
 5月のGMトウモロコシの承認も輸入販売に限られており、域内での栽培はできない。このような一連のEUのGM作物への対応を米国は、「貿易障壁」だと強く批判している。 〔Forbes 2004/6/28など〕

●遺伝子組み換え花卉
遺伝子組み換え青いバラ

 6月30日サントリーは、豪フロリジーン社と共同でパンジーの遺伝子(フラボノイド3’5’水酸化酵素遺伝子)を導入した、青いバラを開発した、と発表した。同社はすでにペチュニアの遺伝子を導入した青いカーネーションを開発・販売しているが、同遺伝子では青いバラはできなかった。現在は閉鎖系実験の段階にあり、2007〜8年の販売を目指し、環境へのリスク評価が始まる。


●遺伝子組み換え作物
GM小麦開発の現状

 6月21日、モンサント社は各国に出していた除草剤耐性小麦の申請を、米国を除くすべての国で取り下げた。これによって事実上、同社によるGM小麦の開発は挫折したといえる。しかし、GM小麦の開発が止まったわけではない。現在もなお、表1 に示すようにGM小麦の開発は行われている。この中で一番手に名乗りを上げているのが、シンジェンタ・シード社のフザリウム菌病抵抗性小麦である。また米ノースダコタ州では、農務省の関連研究所であるARS(Agricultural Research Service)研究所による貯蔵タンパク質改変小麦が実験を開始している。


表1 現在開発中の主なGM 小麦
開発者 性質
シンジェンタ・シード社(スイス) フザリウム菌病抵抗性小麦
バイオジェンマ社(仏) デンプン代謝改変小麦
モンタナ大学(米) 製パン特性改変小麦
同上 高収量小麦
マックエアー大学(豪) 高温ストレス抵抗性小麦
アイダホ大学(米) 大麦黄化萎縮ウイルス抵抗性小麦
ゲルテンシード・リサーチ社(米) タンパク質組成改変小麦
カンサス大学(米) 乾燥耐性小麦
ベントリア・バイオサイエンス社(米) 消化性向上小麦
ARS研究所(米) 貯蔵タンパク質改変小麦
BASFカナダ社(独) 除草剤耐性小麦
モンサント社(米) 除草剤耐性小麦


●アフリカ事情
米国、西アフリカでGM綿販売攻勢

 米国政府の主導の下、アフリカのブルギナ・ファソで、GM作物の作付けを拡大するための会議が開かれた。ブルギナ・ファソ政府は、昨年からBt綿の栽培実験を開始している。会議には西アフリカ経済共同体(ECOWAS)加盟国15カ国が参加した。
 インドでは、現地の気候を無視してBt綿を栽培したため、大きな被害を受けたが、西アフリカでも雨の少ない乾燥した気候にこの綿が耐えられるか懸念されており、まだ実験段階にある。ブルギナ・ファソ政府農相は、年200万トンの生産を目標に掲げているが、この売り上げは国民所得の60%にのぼり、綿花の国際価格を下落させる危険性もある。そのためBt綿売り込みは、米国政府にとって危険な賭けという見方もある。〔AFP 2004/6/20 ほか〕


●南米事情
アルゼンチンがGMトウモロコシ承認か

 アルゼンチン農業大臣のミゲル・カンポスは、GMトウモロコシの承認に踏み切ることを明らかにした。アルゼンチンは米国に次ぐ世界第2位のトウモロコシ輸出国であり、大豆畑では100%モンサント社のGM種子が用いられている国である。承認されれば、GM品種の拡大が加速する可能性がある。 〔Ag Professional 2004/6/25〕