■2004年8月号

今月の潮流
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今月のできごと


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バイオジャーナル

ニュース


●遺伝子組み換え食品
英国最大手スーパーが牛乳の非GM化へ

 英国最大手スーパーマーケット・チェーンのセインズベリーが、GM飼料を用いた牛乳の販売を停止し、非GM飼料牛乳への転換を行うことを明らかにした。グリーンピースが同スーパーを対象にしたキャンペーンで消費者にボイコットを勧めていた。セインズベリーとグリーンピースの会合に先立って発表された。 〔タイムズ 2004/6/1〕

●表示
ロシアが新GM表示制度施行

 プーチン大統領は、GM作物に関してモラトリアムを提言した科学者グループの答申を受けて、新しいGM表示制度を施行した。この表示制度は、欧州の基準に基づいており、混入率は0.9%までしか認めない。ロシアの代表的なウェブサイト・ニュースは、「米国は自国をフランケンシュタイン農場に変えてしまった」と酷評している。しかし、グリーンピース・ロシアは、米国からの輸入食品に対して、この表示制度が適用されないことを批判している。 〔CNS News 2004/6/7〕


●条約
「食料農業植物遺伝資源に関する条約」が発効


 FAO(国連食糧農業機関)で採択されていた「食料農業植物遺伝資源に関する条約(ITPGR)」が6月29日発効した。この条約は、野生生物は含まず作物に限定し、生物の多様性を守り、遺伝子資源を活用し、利益の還元を目的につくられた。農業者の自家採種・保存の権利を強く打ち出しているため、米国政府・日本政府ともに、GM種子の権利などが損なわれるとして、署名を拒否してきた。日本政府は批准を行う方針へ変更しつつあるが、米国は拒否の意向である。 〔Crop choice news 2004/6/28〕


●企業動向
GM作物開発企業、英国から撤退

 6月29日、スイス・シンジェンタ社は、英バークシャー州にある研究所を閉鎖し、米ノースカロライナ州に移転することを明らかにした。すでにモンサント、デュポン、バイエル・クロップサイエンスの各社が英国から撤退しており、GM作物の開発企業はすべて英国から姿を消した。移転に際して地球の友のピート・ライリーは、「米国に撤退するだけではなく、持続可能な農業に提供する作物開発に転換すべきである」とコメントした。〔Financial Times 2004/6/30〕

●遺伝子組み換え樹木
フィンランドでGM 樹木が伐採される

 6月23日フィンランド政府は、東フィンランドにある試験場で、生態系への影響を調査するために栽培されていたGM樹木が引き抜かれたり、伐採されていたと述べた。誰が、どのような目的で行ったかは不明であるが、市民の間でGM樹木が周辺の環境に及ぼす影響に懸念が広がっていた。 〔ロイター 2004/6/24〕

●BSE
日米企業がBSE耐性牛の開発へ

 日本のキリンビールと米国のヘマテック社は共同で、ミルクから薬剤成分を取り出す「動物工場用」の牛を開発してきたが、同時に牛乳の安全性を高めるためのBSE耐性品種の開発も進めており、このたび、BSEに抵抗性のある遺伝子をもった細胞が開発された。この細胞を応用すれば、BSEにかからない牛の開発が可能だが、専門家は、プリオンによる汚染は除去できるかもしれないが、消費者がGM牛乳や牛肉を食べるとは思われない、と指摘している。 〔ニューサイエンティスト 2004/6/4〕

●生殖医療
日産婦学会、小委員会で着床前診断初の承認

 6月18日、日本産科婦人科学会倫理委員会の下に設置された「着床前診断に関する審査小委員会」が、申請が出されていた2 件の着床前診断のうち1件を承認し、委員会に答申した。着床前診断とは、体外受精胚から取り出した細胞の遺伝子を診断し、遺伝性疾患などがないものだけを選んで子宮に戻す生殖技術である。
 日本産科婦人科学会は1998年10月に会告を公表し、「重篤な遺伝性疾患」を調べる場合に限って着床前診断を認めるとする見解を示した。ただし、「生命の選別」につながるなどの反対意見が多く、これまで一度も承認はなかった。今回承認されたのは、慶應大学のデュシェンヌ型筋ジストロフィーを調べるもので、却下されたのは名古屋市立大学の筋強直性ジストロフィーを調べるもの。同じ筋ジストロフィーだが症状の現れ方や程度に差があり、小委員会は前者のみ「重篤な遺伝性疾患」に該当すると判断した。現在、その答申をめぐって倫理委員会で議論が続けられている。