●アジア事情
鳥インフルエンザ再流行か?
7月2日、ベトナム南部で鳥インフルエンザが再発生し、タイ、中国でも相次いで確認された。ウイルスのタイプは、H5N1型、遺伝子型Zで、強い毒性を持っている。7月8日、米国セント・ジュード小児研究病院が遺伝子を解析したところ、複数のインフルエンザ・ウイルスの遺伝子が動物内で混合して(遺伝子再集合という)毒性を強めたことがわかった。遺伝子再集合が繰り返されると人への感染能力を獲得したものも出現する可能性がある。また、すでにH5N1型、遺伝子型Zの中には、インフルエンザ治療薬に耐性をもったものもあり、野鳥がこのウイルスを保有すれば、感染の地域が拡大する可能性もある、という。 〔Nature online 2004/7/8ほか〕
タイでGMパパイヤ栽培される
タイのコンケン県にある農場で、未承認のGMパパイヤが栽培されていることが、グリーンピースの調査でわかった。この農場は、国立園芸試験所から至近距離にあり、そこから種子が流れ出た可能性が高いと見られているが、同試験場はかかわりを否定している。このパパイヤはハワイで栽培が広がっている、リングスポット・ウイルス抵抗性の品種である。
〔バンコク・ポスト 2004/7/31〕
●オセアニア事情
豪州キャンベラ特別自治区GM作物栽培禁止へ
オーストラリアのニューサウス・ウェールズ州にある首都キャンベラ特別自治区の議会は、2006年6月17日までGM作物の栽培を禁止する法案を可決した。審議の過程では、GM作物の研究・開発を禁止するか否かが焦点となり、緑の党などはそれらも禁止の対象とすべきだと主張したが、最終的には規制対象から除外された。
〔Canbera Yourguide 2004/7/2〕
●北米事情
ブッシュ政権がバイオテロ対策に巨額拠出
7月21日、米国ブッシュ大統領は、バイオテロ対策費として10年間で56億ドル(約6160億円)拠出することを定めたバイオシールド法案に署名した。この法律は、天然痘や炭素菌のワクチンや治療薬の開発、検出システムの開発など、バイオテロ対策にかかわる広範な技術開発を目的にしている。バイオテクノロジーの研究・開発への投資が進むため、バイオ関連のベンチャー企業や大学の研究者は歓迎している。
アグリビジネスに乗っ取られた米農務省
7月23日、米農務省の規制政策にかかわる主要ポストが、すべてアグリビジネスに乗っ取られたという報告書が発表された。発表したのは、家族経営の農家や市民団体などがつくっているThe Agribusiness Accountability Initiative(略称AAI)で、いまや農務省の高級官僚に市民の利益代表者はおらず、モンサント社とかかわりの深いアン・ベネマン農務長官を筆頭に、首席補佐、副補佐、議会関係補佐などすべて、アグリビジネスの利益代表者で占められている、と述べている。
●GMOフリーゾーン
米カリフォルニア州で反バイテク市民団体結成
米国カリフォルニア州では、メンドシーノ郡につづき十数の自治体(郡)でGMOフリーゾーンを目指すキャンペーンが開始された。それに対しモンサント社などのバイテク企業は、莫大な費用を投じてマスコミ対策やロビー活動を展開している。一方、この企業の動きに対抗するため、GMOフリー・メンドシーノと、カリフォルニア州だけで9万人以上の会員をもつ有機消費者協会が中心になって、バイオ・デモクラシー連合が結成された。
〔GMOフリー・メンドシーノ 2004/7/13〕
●企業動向
モンサント社が欧州のビール会社に資金提供
モンサント社は、スウェーデンのビールメーカーのケント・パーソン(Kenth Persson)が新しく発売するライト・ラガービールの開発に資金提供する。ケント社ではすでに、GMトウモロコシを用いたライトビールを発売し、スウェーデンやデンマークの市民の間で批判が出ている。この資金提供の意図は、ヨーロッパでのGM食品に対する抵抗力を殺ぐのが目的と見られている。〔CBSニュース
2004/7/8〕
●BSE
輸血で人から人へvCJD感染
変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)は牛から人間に感染して起きるが、輸血によって人から人に感染した症例を確認した、と7月22日英国保健省が発表した。今回のケースは、vCJD患者から輸血されて別の病気で亡くなった患者で、すでに昨年12月に輸血によるvCJD感染の可能性を示唆する症例が見つかっていたことから、脾臓を分析して確認された。今後、輸血規制の強化が図られる。すでに水面下で感染者が拡大している可能性もあり、BSE問題は新たな局面を迎えた。
〔ガーディアン 2004/7/23〕
●ヒト胚
ヒト胚報告書、総合科学技術会議本会議へ
7月23日、総合科学技術会議の本会議が開催され、生命倫理専門調査会が2001年8月から計32回の審議を重ねてまとめた「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方」が報告された。強行採決によって人クローン胚の作成容認を決めるなど多くの問題を孕んだヒト胚報告書も、一応はこれで最終決着となった。
しかし、調査会での議論は最後まで分かれ、それを薬師寺会長が強引にまとめたため、報告書の末尾に委員個人の意見を添付することになった。強行採決で反対に手を挙げた5名の委員は、計13頁にわたる意見書を提出し、人クローン胚の作成については「倫理的議論が深まり、また十分な科学的根拠が提示されることにより社会の理解と納得が得られるようになるまで」認めるべきではないとしている。
●生殖医療
中絶胎児の細胞利用問題、場外編
現在、中絶胎児の細胞利用に関して厚労省の専門委員会で議論されているが、ここにきて委員会外での動きが活発化している。
まずは横浜市中区の産婦人科「伊勢佐木クリニック」が中絶胎児を一般ゴミとして捨てていた問題。細胞利用とは直接には関係ないと思われがちだが、中絶胎児に対する医師の倫理観が表出しているケースであることは間違いない。また、患者団体「日本せきずい基金」の調査で、今年2月以降に脊髄損傷患者9人が中国に渡って中絶胎児の細胞移植治療を受けていたことが判明(朝日新聞2004/7/22)。安全性や効果は未確認で、費用は200万円以上かかるという。これらの問題が今後厚労省での議論にどう影響するか注目されている。
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