■2004年11月号

今月の潮流
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今月のできごと


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バイオジャーナル

ニュース


●南米事情
ブラジル、頓挫したGM大豆栽培継続

 ブラジル政府は、9月後半になってもGM大豆の栽培が継続できない状態がつづいている。昨年9月に突如、1年間の暫定措置としてGM大豆の栽培を認める大統領令を出した。その後、今年の9月までに恒久的に栽培を認める「バイオセキュリティ法」を制定する予定だった。しかし、9月8日に採択が拒否され、制定断念に追い込まれたことから、今年も1年だけの暫定措置をとることで切り抜けようとした。しかし、その暫定措置に対しても抵抗が大きく、容易に大統領令を出せない状態がつづいている。 〔SeedQuest news 2004/9/6ほか〕

●アジア事情
タイのGMパパイヤ汚染、衝撃広がる

 タイのGMパパイヤ汚染が、波紋を広げている。グリーンピースの調査によって、コンケン県の国立園芸試験場からGMパパイヤの種子が流失し、周辺農家が栽培していたことがわかった(本誌9月号参照)。先ごろ、国民人権委員会が地元農家からサンプルを取り寄せ、Mahidol大学で分析したところ、15サンプル中の1つにGM品種が確認されるなど、国立園芸試験場の周囲60qの畑が汚染したと見られており、タイ政府も汚染事実を認めた。しかし、相変わらず汚染源は不明なままである。
 このGMパパイアはハワイで栽培されているのと同じリングスポット・ウイルス抵抗性の品種で、種子や苗が2600人を超える農民に試験場から配布されているため、県境を越えた可能性もある。
 タイからフルーツカクテルを輸入しているドイツの業者は、GMパパイヤ混入の可能性があるとして、取り引きを停止した。タイは1年間にフルーツカクテルを約1000コンテナ、約10億バーツほど輸出しており、衝撃を受けている。 〔バンコク・タイムズ 2004/9/3 ほか〕

GM綿種子販売が増大するインド

 現在インドでは29州のうち6州でBt綿の栽培が許可されている。モンサント社は、インドでのBt綿の種子の売り上げが2002年は7万2000パケット(1パケットは450g)、2003年は23万パケット、2004年は130万パケットに達した、と発表した。
 インドの気候に合わず、根腐れ病が拡大して生産量や売上が伸び悩んでいる現実があるものの、インドでBt綿の生産量が徐々に増えている実態を示した数字といえる。 〔USA Today 2004/9/8〕

●自治体動向
岩手県のGMイネ試験結果発表


 9月7日、岩手県北上市にある岩手生物工学研究センターで、低温耐性GMイネ「sub29」の試験結果報告があった。それによると、収量は対照区のササニシキと比べて
ほとんど差はなかった。また、花粉飛散に関しては、一般水田への交雑はまったくなかった、としている。地元の市民団体は、花粉の飛散を調査するには適さない方法であると、当初から問題点を指摘していた。

つくば市でGMナタネ長期試験の説明会開催

 つくば市にある独立行政法人・農業環境技術研究所は、モンサント社の除草剤耐性ナタネ「RT73系統」の野外試験を10月から始めるため、9月17日に説明会を開催した。このナタネはすでに農水省の指針で適合確認が行われており、日本での栽培が可能な品種である。
 試験は、2001年から始まった長期にわたり生態系への影響を調査するモニタリング試験の最終年に当たる。これまでの3年間は説明会が開かれておらず、周辺の農家や市民の理解を得ていなかった。今年初めておこなわれたのは、周辺の住民の理解を得るよう求めた指針が作られたからである。
●遺伝子組み換え動物
遺伝子を次世代伝播する鶏

 名古屋大学大学院工学研究科教授・飯島信司らは、鶏にレトロウイルス・ベクターを用いて遺伝子を導入し、次世代でタンパク質を高濃度に産生させたことを、9月21日から始まった日本生物工学会で発表した。GM家畜開発では、遺伝子が伝わっても次世代で発現しないサイレンシングと呼ばれる現象がよく起きるが、それを回避できる技術を開発したことで、GM家畜の大量生産が可能になるとみられている。 〔日経バイオテク 2004/9/27〕

●省庁動向
農水省、GM作物新たに2品目承認

 10月7日、生物多様性影響評価検討会総合検討会が開催され、日本モンサント社が申請したGM綿、デュポン社が申請したGMトウモロコシがそれぞれ第1種使用規定として承認された。第1種使用とは、野生生物への影響なしという評価で、野外栽培を許可したものである。今回承認された2品目はいずれも、殺虫性と除草剤耐性の両方の性質をもつものである。

文科省、人クローン胚検討の作業部会設置

 7月に総合科学技術会議生命倫理専門調査会がまとめたヒト胚最終報告を受け、文科省は人クローン胚の作成に向けた検討を開始するため、特定胚及びヒトES細胞研究専門委員会「人クローン胚研究利用作業部会」を設けた。
 ヒト胚最終報告で人クローン胚の研究目的での作成・利用が容認されたことから、現在文科省が運用している2つの指針、「特定胚指針」と「ヒトES細胞指針」を改訂しなければならなくなったためである。具体的には、人クローン胚を取り扱う研究機関の条件や、ES細胞の樹立を目的とした人クローン胚作りのための卵子の入手方法などが議論される。