■2005年1月号

今月の潮流
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今月のできごと


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バイオジャーナル

ニュース


●自治体動向
北海道で新たにGM大豆栽培の動き

 北海道において遺伝子組み換え大豆栽培の可能性が強まっている。前号で報告したように、栽培を宣言し、その後断念した長沼町西南農場・宮井能雅以外にも栽培の可能性のある農家が数軒存在していたが、そのうちの1 軒が明らかになった。
 12月初め、日本モンサント社の十勝での説明会に合わせるように、ジャガイモを80ha栽培している同地区の農家が、連作障害予防のためGM大豆を栽培する計画を明らかにした。米国のモンサント本社から直接種子を購入し、今春5〜10haに蒔き、農協を通さず直接販売する予定であると発表した。
 北海道では11月中旬に「食の安全・安心条例(仮称)」「遺伝子組換え作物の栽培等に関する条例(仮称)」の素案を発表した。条例は早くとも2005年秋施行のため、それまでは規制力の弱い指針によってGM作物栽培規制が行われるため、その間隙をぬった作付けとなりかねない事態となっている。まだ他にも数軒の農家がGM大豆栽培を予定している(十勝の農家は、12月8日、作付けを断念した)。 〔北海道新聞2004/12/6など〕


●中国情勢
中国でGMイネ承認の可能性強まる

 中国バイオセーフティ委員会が遺伝子組み換えイネを承認する可能性が強まった。中国政府が認可するのも確実と見られている。中国でGMイネを開発した科学者は、日本や韓国でGM食品に対する抵抗感が強いことにふれ、「コメに関しては両国への輸出量が少ないため、問題ないと判断している」と述べている。
 中国でGMイネが認可されれば、モンサント社はGM イネを中国に売り込むであろうし、インド政府のGMイネ認可やスイス・シンジェンタ社のアジア全体へのGM イネの売り込みにも拍車がかかるであろう。
〔Economist 2004/11/18〕


●NGO
国際自然保護連合がGMモラトリアムを採択

 世界最大の環境保護団体である国際自然保護連合 (IUCN)主催、第3回世界自然保護会議が11月17〜25日、タイの首都バンコクで開かれた。会議では、主要テーマの1つにGM作物問題が取り上げられ、激しい討論の末、GM作物のモラトリアムを求める決議が採択された。政府代表は賛成84、反対48、棄権12。NGOは賛成290、反対22、棄権59 であった。〔Environmental News Service 2004/11/22〕


●EU事情
イタリアがGM作物栽培解禁

 イタリア政府は11月始め、遺伝子組み換え作物の栽培を解禁し、同時に自治体が禁止することを容認する方針を打ち出した。Gianni Alemanno農業大臣は、閣議決定されたこの方針によって、GM作物と他の作物との共存が可能になるだろうと述べた。しかし政府は、国民の大半がGM食品に反対していることから、農業生産者や消費者が選ぶ権利の維持と従来の農業を守る必要性を強調する見解を発表した。
 一方イタリアではGMOフリーゾーンが拡大している。すでに20州のうち13州の27県、約1500の町村がGMOフリーゾーンを宣言している。 〔Science AFP 2004/11/11〕

バイエル社、英国で商業栽培断念

 バイエル・クロップサイエンス社は、11月中旬、英国での試験栽培を断念すると発表した。英国ではGM作物を商業栽培する見込みが立たないため、春蒔き、秋蒔き2種類のナタネ種子販売申請を取り下げた。背景には、英国王立協会発表の野生生物への影響評価で、GMナタネが従来のナタネに比べて悪い影響があったことから認可が得難いことに加え、市民団体による反対運動の高まりがある。英国は、ヨーロッパの中でももっともGMOフリーゾーンが広がっており、GM作物栽培を著しく困難にしている。 〔Independent on Sunday 2004/11/21〕

バイエル社、豪州に続きインドからも撤退

 2004年9月30日、グリーンピース・インドがバイエル・クロップサイエンス・インド本社に抗議行動を行った際提出した質問に対し、同社は、インドにおけるGM作物の開発や販売を断念し、在来品種の改良に専念すると回答した。オーストラリアでのGMナタネ撤退につづくものである。 〔グリーンピース・インド 2004/11/15〕


●北米事情
ニワトリコレラで野鳥が大量死

 米国ユタ州にあるグレートソールト湖で、ニワトリコレラによって約3万羽のハジロカイツブリの死亡が確認された。ニワトリコレラは1940年代に鶏を介して野鳥に広がっていた。11月22日、米地質調査所全米野生生物健康センターの研究者は、冬季に南に向かう渡り鳥によって感染が拡大する可能性がある、と警告を発した。拡大すれば、米国の鶏肉産業に大きなダメージが起きることが予測される。 〔日経バイオテク 2004/11/22〕

米国が試験栽培中のGM作物の汚染容認へ

 11月19日、米FDA(食品医薬品局)は、開発中のGM作物による食品や飼料への汚染、混入を容認する指針の草案を発表した。これは野外で試験栽培中のGM作物が一般栽培作物を汚染し、収穫時・流通時の混入や市販している種子への混入が増えていることによる。
 草案では、申請前に安全性に関する情報をFDAに提供することを求めている。だが、その安全性の自主評価は簡便なもので、これまで起きたスターリンク事件や医薬品生産作物など、未承認作物の混入問題を合法化することになりかねず、環境保護団体や消費者団体は汚染や混入を容認するものであると批判している。〔FoEインターナショナル 2004/11/23〕

ずさんな米国のGM食品安全審査

 米国カリフォルニア州サンディエゴにあるソーク生物学研究所の研究員らが、『バイオテクノロジー&遺伝子工学レビュー』誌に、米国におけるGM食品の安全審査に欠陥があるという論文を掲載した。「遺伝子組み換え食品の安全性評価と規制」と題された論文の執筆者は、同研究所のデービッド・シューベルトと米国地球の友と協力関係にある研究者ウイリアムズ・フリーズ。政府のGM食品安全審査は、GM作物開発企業が提出したデータに依存しており、しかもデータは公表されていない。モンサント社の殺虫性トウモロコシ「MON810」などは、企業の評価もずさんで安全性に疑問がある、としている。 〔Environmental Media Service 2004/11/16〕

米国の市議会が反GMOを決議

 11月17日、米カリフォルニア州アルカタ市議会は、反遺伝子組み換え作物法を可決成立した。米国の市議会がこの種の決議を行ったのは初めてのことである。11月2 日の住民投票で同州のマリン郡がGMOフリーゾーンを採択したが、GEフリー・サンフランシスコなどGMOフリーゾーンを目指す草の根の運動も広がっており、今後もこの種の決議やGMOフリーゾーンは拡大していくだろう。 〔GM Watch 2004/11/22〕