■2005年8月号

今月の潮流
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バイオジャーナル

ニュース


●欧州事情
EU環境相理事会GMOモラトリアム解除否決

 6月24日、ルクセンブルグで開かれたEU各国の環境大臣理事会で、米国によるWTO提訴に対処するため欧州委員会が提案した、8系統のGM作物モラトリアム解除が否決された。
 欧州委員会はこれらの作物を認可しているが、5カ国が独自の判断でモラトリアム状態を維持しており、それが米国との係争で不利にはたらくと考え提案していた。

表2 モラトリアム解除が否決されたGM作物8系統
作物 系統
オーストリア  トウモロコシ T25、MON810、Bt176
ドイツ トウモロコシ Bt176
ルクセンブルグ トウモロコシ Bt176
フランス ナタネ Topas19/2、MS1 × RF1
ギリシャ ナタネ Topas19/2

●クローン
GM体細胞クローンのヤギとブタが誕生

 独立行政法人・農業生物資源研究所は、組み換えた体細胞から、クローン技術を用いてヤギとブタを誕生させた。いずれも体細胞に遺伝子を導入し、その体細胞を除核した卵子に入れ、培養後に代理母を用いて出産させた。
 ヤギは生理活性効果を高めるタンパク質をつくり出す遺伝子を導入し、乳からそのタンパク質を取り出して、医薬品として用いることを目指している。

 ブタは4匹誕生したが、3匹は心臓など臓器移植に用いることを目的にしている。人間に動物の臓器を移植した際、超急性拒絶反応を引き起こす原因である「補体」とよばれるタンパク質の働きを抑制する「補体制御因子」をつくり出す遺伝子を導入した。
 これらの研究は、独立行政法人・畜産草地研究所の協力のもとで進められている。ブタに関しては、名古屋大学医学部とプライムテック社との共同開発である。このGMクローン動物を親に用いて、次世代をつくる試験にも取りかかっている。

 通常、受精卵に遺伝子を直接導入する組み換えの方法に比べて、成功率が高いというのが、この方法が用いられた理由のようである。しかし、体細胞クローン技術を用いて誕生した動物はすべて遺伝子に異常をもち、正常に誕生するケースが少ない現実がある。今回誕生したヤギやブタも遺伝子が正常だという報告はない。


●企業動向
他家受粉率を抑えたトウモロコシ


 米国ネブラスカ州のホーゲマイヤー・ハイブリッド社は、ハイブリッド技術を用いて、他家受粉率を抑えたトウモロコシを開発した。GMトウモロコシの栽培が拡大し、非GMトウモロコシの信頼性が低下しているため、遺伝子汚染の影響を受けない系統を開発するのが狙いである。「ピュラ・メイズ」と命名されたこの系統は、2007 年から本格的な販売を目指していく。〔Science AFP 2005/7/03〕


●ヒト胚
人クローン胚指針、既存指針改定で合意


 6月22日、クローン技術を用いて体外で人工的に作り出したヒト胚(人クローン胚)の作成のための検討を行っている文科省の作業部会が開かれ、総合科学技術会議生命倫理専門調査会が2004年7月にまとめた「ヒト胚最終報告」に則り、現在同省が運用しているヒトES細胞指針と特定胚指針を改定することで合意した。ヒト胚最終報告では、難病治療目的の研究と限定しているものの、人クローン胚の作成を認める方針を打ち出している。
 これを受けて文科省は特定胚・ヒトES細胞専門委員会の下に作業部会を設置し、研究者などからのヒアリングを行ってきた。今後は、ヒトES細胞指針と特定胚指針の改定を前提とした具体的議論に入る。