■2005年10月号

今月の潮流
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今月のできごと


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バイオジャーナル

ニュース


●遺伝子組み換え作物
Bt毒素の効果は110日で失せる

 インド・マハラシュトラ州にある中央綿研究所の研究チームの報告によると、Bt綿は、種子を撒いた後徐々にBt毒素の産生量が減少し、110日で害虫である蛾の幼虫への致死量を下回り、効果がなくなることがわかった。
 Bt毒素Cry1Abを用いて行われたこの実験では、害虫が最も好んで食べる部位での毒素の発現量が低いことも確認された。これに対して同研究所の別の研究者が反論し、論争が起きている。 〔The Hindu 2005/8/29 ほか〕

広がる豪州産GMナタネ混入

 オーストラリアでは、ヴィクトリア州につづいて西オーストラリア州でも、日本に輸出する非GMキャノーラに、GMキャノーラ(バイエル・クロップサイエンス社の「Topas19/2」)が混入していることがわかった。さらに南部オーストラリアでもグリーンピースが混入を突きとめた。西オーストラリア州では、農民団体「憂慮する農民ネットワーク」が汚染による損害を賠償する法律の制定を求め、農相も前向きの発言をしている。 〔APP 2005/8/8〕

遺伝子組み換え作物でアレルギー

 ポルトガル・リスボンにある国立健康研究所のリタ・バリティスタらによって、GM大豆とGMトウモロコシを用いたアレルギー反応実験が行われた。用いられたトウモロコシはBt10、Bt176(ともにシンジェンタ)、T25(バイエル・クロップサイエンス)、MON810(モンサント)、大豆は除草剤耐性大豆(モンサント)で、非GM品種も用いられた。対象はアレルギー体質の106人(うち女性58人、平均年齢12.4歳)で、タンパク質を皮下に注入した。その結果、GMでも非GMでも反応は同じだったという。しかし研究者は、規模が小さいこと、他の集団で実験しないと正確な判断は下せないとしている。〔ロイター 2005/8/31〕

●アフリカ事情
ガーナがGM作物輸入拒否

 ガーナ農業大臣は、このほどGM作物の輸入を拒否 する発言をした。アフリカではGM作物輸入を拒否し、GM作物による食料援助を受け取らない国が広がっている。この発言にはGM推進団体がかみつき、論争が起きている。 〔Ghananian Chronicle 2005/8/22〕

ケニアでGMトウモロコシ実験中止

 ケニア政府は、野外栽培中のBtトウモロコシの試験中止と廃棄を命じた。効果を高めようと、禁止殺虫剤を使用したためという。 〔SciDev.Net 2005/9/1〕

●北米事情
米国でGM作物衰退か?

 公益科学センター(Center for Science in Public Interest) のグレッグ・ジャフ所長は、米国で今年、新たなGM作物の申請はなく、開発企業もモンサント、デュポン、シンジェンタの3企業に限られており、GM作物は全般的に衰退に向かっている、とする見解を述べた。理由としては、許認可審査に時間がかかり過ぎる点をあげている。〔The Hindu Business 2005/8/22〕

米国による途上国へのGM作物販路拡大

 米国国際開発庁(USAID)は、発展途上国をターゲットにGM作物売り込みを進める。この農業バイオテクノロジー支援計画(ABSP-2)は、コーネル大学が中心となり、ミシガン州立大学、モンサント社の海外合弁企業CGIAR(国際農業研究協議グループ)などが共同で取り組み、USAIDは400億ドル(約4兆4000億円)を投じる。対象国は、アフリカ、インド、インドネシア、フィリピン、バングラデシュである。 〔The Financial Express 2005/8/29〕

●南米事情
モンサント社、南米で特許料回収できず

 今年からブラジルでは、GM作物の収穫高5%を特許料としてモンサント社に支払うことになったが、ほとんどの農家が支払わないようだ。アルゼンチンでも特許料を支払っている人はごくわずかで、自家採種が進み、同社の戦略に狂いが生じてきた。さらにブラジルでは、種子生産者の間で、同社を独占禁止法違反で訴える動きも出ている。 〔Gazeta Marcantil 2005/8/2 ほか〕

アルゼンチン政府がモンサント社に対抗?

アルゼンチン政府はこのほどシンジェンタ社の除草剤耐性トウモロコシ「GA21」を承認した。これはモンサント社による種子独占を打破するとともに、GM大豆の栽培拡大による連作障害の広がりを防ぐのが狙いとみられている。 〔ロイター 2005/8/22〕


●アジア事情
フィリピンで後代交配種承認

 フィリピン政府は初めて、殺虫性と除草剤耐性の両方の性質を合わせ持つ後代交配種のGMトウモロコシを承認した。これによって同国ではモンサント社3種、シンジェンタ社1種の計4種類のトウモロコシが承認されたことになる。フィリピンでは昨年、GMトウモロコシが5 万2000haほど栽培された。 〔Xinhua News 2005/8/4〕


●EU事情
EUが「MON863」「GT73」を承認

 欧州委員会は8月8日、モンサント社の殺虫性トウモロコシ「MON863」、8月31日には除草剤耐性ナタネ「GT73」を承認した。2001年の2001/18/EC指令発効後、モンサント社の「NK603」、シンジェンタ社の「Bt11」に次ぐものである。この「MON863」はモンサント社が動物実験の結果を隠していたことが判明(前号参照)、6月24日に開かれた環境大臣理事会で承認を得られなかったため、飼料目的の輸入のみが承認された。「GT73」も飼料、工業分野の利用に限定される。 〔AP 2005/8/8 ほか〕