■2005年12月号

今月の潮流
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今月のできごと


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バイオジャーナル

ニュース


●遺伝子組み換え作物
GM作物の長期汚染の実態明らかに

 いったん栽培されたGM作物は長期間にわたって汚染を引き起こす、という研究結果を英国王立協会が発表した。この研究は、イングランドとスコットランドで過去1回だけGMナタネを栽培し、その後通常のナタネを作付けした5カ所を調査したところ、栽培9年後に1uあたり2個体のGMナタネが、15年後には1個体のGMナタネが見つかった。この混入率では、EUで食品表示が義務付けられている混入率0.9%を超えてしまうことになり、やはり、GM作物との共存は不可能であることが示された。 〔Independent 2005/10/9〕

GMスギ花粉症イネの実験報告

 10月31日、農業生物資源研究所、東大医科学研究所、島根大学は、マウスを用いた実験でGMスギ花粉症イネがアレルギー症状を緩和したとする実験結果を発表した。報告によると、マウスにスギ花粉症イネを食べさせた後にスギ花粉を吸入させた実験で、対照群に比べてアレルギーを引き起こすIgE抗体が減少、ヒスタミンの量も減少、くしゃみの回数も減少したという。なお実験に用いたマウスは花粉症にかかっているわけではない。
 今後は、サルに対する実験を行った後、人間への実験に移行し、効果や毒性を評価することになっている。

インドでGMマスタードとイネの承認間近

 10月18日、南アフリカ・ヨハネスブルクで開かれたバイオテクノロジー会議の席上、インド・バイオテク・コンソーシアムの経営者サハンドラ・ネールは、インドで1年以内にGMマスタードが承認されそうだ、と述べた。GMイネに関しては、野外での栽培試験が必要なため、2年はかかるであろうと述べている。このコンソーシアムは、研究機関、企業、政府をつなぎバイテクを推進する目的のためにつくられた。 〔Daily Times[Pakistan] 2005/10/20〕


●遺伝子組み換え食品
新GM食品添加物が申請される

 三栄源FFIが、ゲル化剤として初めて、GM食品添加物、多糖類ジェランガム「ジェランガムK3B646」を厚労省に申請した。この製品は米国CP Kelko社が開発したも ので、三栄源FFIはこれまでも同社のジェランガム・シリーズを販売してきた。ジェランガムは、微生物由来の多糖類で、ゲル化剤として用いられる。〔日経バイオテク 2005/10/24〕


●遺伝子汚染
北海道でGMトウモロコシ種子汚染

 北海道長沼町の農家がトウモロコシ収穫後の雑草処理にラウンドアップを撒いたところ、枯れなかった株が2本あった。そのうちの1本を検査依頼したところ、GM トウモロコシであることがわかった。米国では種子汚染が深刻化しており、米国産種子を用いる限り日本でもGMトウモロコシが混入してくることが裏づけられる形となった。 〔日本農業新聞 2005/10/19〕


●WTO
米国によるEU提訴の裁定、WTO閣僚会議後に

 WTOへの米国によるEU提訴の裁定の日程が延期された。米ブッシュ政権は、カナダやアルゼンチンなど他のGM作物栽培国とともに、EUのGM作物に関する政策は貿易障壁にあたるとしてはWTOに提訴していた。当初、紛争処理委員会の裁定は10月10日に予定されていたが、来年1月に延期されることになった。スケジュールが合わないためと説明しているが、12月に香港で開かれるWTO閣僚会議の際に、NGOの攻撃の材料にならないように配慮したものと思われる。〔アメリカ大豆協会 週報2005/10/10〕


●モンサント
モンサント社が欧州で南米産大豆を検査

 モンサント社は、オランダとデンマークの港で、アルゼンチンから輸入された大豆が自社のGM大豆かどうか、サンプルを採種し、検査した。検査はアルゼンチンの農家が特許料を支払わないため、輸入業者からの徴収や、訴訟を起こすことを目的にしている。アルゼンチンの大豆はほぼ100%同社のGM大豆であり、そのほとんどが自家採種されている。なおアルゼンチン政府によると、デンマークではすでに訴訟が起きているという。
 またブラジルでは、2005年3月28日に公布されたバイオ安全法によって、GM大豆の栽培や流通が許可されたが、これはあくまで正規に購入したGM種子に対してである。リオグランデ・ド・スール州では、今年、旱魃で大豆生産がダメージを受けたため、大統領は同州に対してアルゼンチンから不正に流入しているGM種子を用いることを許可した。これによってアルゼンチンにつづいてブラジルでもモンサント社との摩擦が強まる。〔ALIC「畜産の情報海外編」 2005/10月号〕


●オセアニア事情
オーストラリアでGM混入容認規則スタート

 オーストラリア連邦政府と州政府は、4つの州で起きたGMナタネ混入問題を受けて、GM混入を一定程度容認する新しい規則をつくった。それによると収穫物に関しては0.9%まで許容し、種子に関しては当面0.5%だが2008年以降は0.1%許容することになった。なお損害賠償責任に関しては見送られた。 〔Mail Times 2005/10/28〕


●欧州事情
英国、GM作物と環境に関する報告書

 10月12日、英国の調査会社PG Economics社は、過去9年間のGM作物栽培が、どれだけ社会経済・環境へ影響を及ぼしたかを評価した報告を発表した。それによると約100億kgの炭素量と、約6%の農薬散布量を削減したという評価である。しかし、調査はモンサント社のデータに基づき、モンサント社から費用が出たものである。 〔AgProfessional 2005/10/11〕

ベルギー企業が豪州研究機関とGM小麦開発へ

 ベルギーのクロップ・デザイン社は、高収量のイネやトウモロコシなどを開発してきたが、このたび、オーストラリアの政府系研究機関と共同でGM小麦の開発に向けた契約を進めている。同社の持つ高収量GM技術を生かすのが狙いのようだが、モンサント社のGM小麦が世界的に反発を受けただけに、農家・消費者の反応が注目される。 〔日経バイオテク 2005/10/24〕

EU裁判所がGM作物栽培規制法認めず

 EUの司法機関である欧州司法裁判所 (ルクセンブルク)は、10月5日、オーストリア・オーバーエスターライヒ州で制定されたGM作物栽培規制法が、EUの規制に違反しているという判断を下した。同州は、山岳部が多いなど自然条件が厳しいことから有機農業を推進し、GM作物は有機農業と共存できないという判断で厳しい規制法を制定していた。 〔共同通信 2005/10/6〕