■2006年1月号

今月の潮流
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今月のできごと


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バイオジャーナル

ニュース


●クローン
相変わらず異常の多い体細胞クローン牛

 11月28日、農水省が9月末現在でのクローン動物の状況を発表した。それによると体細胞クローン牛は474頭誕生しているが、死産が72頭、出生後直後の死亡が80頭、病死等が102頭を占め、現在生存中の牛は104頭にすぎず、異常が常態化している現状が明らかになった。
 受精卵クローン牛は、これまで700頭が誕生し、現在までに295頭が食肉となって出荷されたことが確認されている。不明も63頭いることから300頭を超える牛が食卓に登場したと見られる。
 なお、体細胞クローン豚はすでに152頭も誕生しているが、その詳細は報告されていない。

表1 家畜クローンの現状
受精卵クローン牛 出生頭数 700
死産 73
生後直死 31
病死等 100
その他の死・廃用 90
売却 364
食肉 295
飼育中 6
不明 63
研究機関で育成中 42
受胎中 7
体細胞クローン牛 出生頭数 474
死産 72
生後直死 80
病死等 102
その他の死・廃用 116
研究機関で育成中 104
受胎中 29
体細胞クローン豚 出生頭数 152
体細胞クローン山羊 出生頭数 9


鹿児島大学でクローン・ミニブタ誕生

 鹿児島大学農学部教授吉田光敏らは、11月24日にクローン・ミニブタを誕生させたと発表した。人間への臓器移植を目的に開発したもので、10月末に5kgで生まれた。ブタを移植用臓器として用いるためには、拒絶反応を克服する必要があり、今後は、GMミニブタ開発に向かうことになる。 〔西日本新聞 2005/11/25〕
 しかし、動物の臓器利用は、動物ゲノムに潜む固有のウイルスが人間に感染する可能性があり、臨床試験の凍結など世界的には撤退傾向にある。

●自治体動向
新潟で規制条例の基準づくり始まる

 新潟県では、GM作物栽培規制条例案がまとまったのを受けて、交雑防止の隔離距離などを決める検討会(座長・福山利範新潟大学教授)が始まった。検討会には、北海道とは異なり消費者や農業生産者は入っておらず、専門家だけで構成されている。11月22日に開かれた初会合では、交雑防止の隔離距離について農水省の指針に準じる形で調整することが確認され、北海道が国の基準よりも厳しくしたのとは異なる姿勢を示した。また、規制対象作物の種類も限定することになりそうで、規制の実効性が乏しいものになりそうだ。 〔毎日新聞 2005/11/23〕


●省庁動向
農水省、第一種栽培指針見直しの議論開始


 カルタヘナ法で制定が義務付けられた、2004年2月に運用を開始した「第一種使用承認組み換え作物の栽培実験指針」が、わずか1年10ヵ月で見直されることとなった。見直しの最大の焦点は、イネの交雑防止のための隔離距離である。現指針では20mとなっているが、東北農業研究センター(東北農研)の04 年度調査で25.5m地点で交雑粒が見られたため、05年4月から26mの暫定措置がとられた。独自の指針を設けている地方自治体では、北海道などが条例の細則でイネの隔離距離を300mとしている。さらに、栽培実験開始前の情報提供についても、現指針で定めている計画書の公表と説明会の開催を見直すという。
 12月2日、指針見直しに向けた最初の検討会が開かれたが、委員の多くがとまどいを隠せないようだった。イネの隔離距離の見直しについて、東京農業大学客員教授中村靖彦は「指針策定当時、(農水省は)国際的に見ても非常に厳しい基準を設けているが、消費者の安全・安心のためには研究者が譲歩しなければ、と言っていた。それがわずか1年半でひっくり返るとは」と発言し、それに対して農水省は「(東北農研のデータは)台風という特異的な条件があったのではないかと、現在風向や風速のデータを分析中」(東條技術安全課長)と回答した。


●ES細胞
文科省、ヒトES細胞からの生殖細胞作成検討


 ヒトES細胞から卵子や精子を作ることの是非が、文科省の専門委員会で検討されることとなった。生殖細胞を用いて個体を生み出せば社会秩序を乱しかねないことから、現指針では作成は禁止されている。それを解禁しようと動き出した背景に、人クローン胚研究がある。現在、人クローン胚の作成・利用に向けた検討が進められているが、議論の中心は研究材料となる未受精卵の入手についてである。手術等によって摘出された卵巣からの採取や不妊治療で利用されなかったものを用いる、ボランティアから提供を受ける、などの入手方法が挙がっている。しかし、いずれの方法も現実的に非常に難しく、入手できたとしてもごく少数だろう。そこで浮上してきたのが全能性を持つヒトES細胞からの作成だ。11月30日、ヒトES細胞研究指針の見直しに向けて議論している専門委員会が開かれ、生殖細胞作成の是非を新たな検討課題として加えることで合意した。



今月のGMO承認情報
表2 GM作物野外栽培承認(第1 種使用規定)一覧
生物多様性影響評価検討会総合検討会
作物  性質 申請(開発者) 名称 認可日*
トウモロコシ 除草剤耐性 日本モンサント DLL25 11月25日
綿 害虫抵抗性除草剤耐性 ダウ・ケミカル日本 281×3006 11月25日
*正式にはパブリックコメントの後に認可される。