■2006年2月号

今月の潮流
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今月のできごと


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バイオジャーナル

ニュース


●自治体動向
福岡市がGMナタネ汚染防止を求める意見書を採択

 12月16日、福岡市議会は「GMナタネの自生・交雑の防止に関する規制を求める意見書」を採択した。意見書は、生協組合員による自主的な調査活動によって、福岡市内の複数の箇所でGMナタネが自生しているのが判明したのを受けてふくおかネットワークが市議会に提出していた。採択された意見書は、国会、両院議長、総理大臣などに提出される。

●省庁動向
厚労、文科両省で進むヒト胚論議

 2005年12月13日、研究目的でのヒト胚の作成・利用に向けた検討を行っている厚労省の専門委員会が開かれ、科学技術文明研究所研究員神里彩子、慶應義塾大学医学部(産婦人科)講師久慈直昭の2名を招いてのヒアリングが行われた。
 神里研究員はイギリスなどの諸外国におけるヒト胚研究の規制状況を解説し、久慈講師は国内外のヒト胚を用いた研究の現状を報告した。翌12月14日には、ヒトクローン胚の作成に向けた検討を行っている文科省の作業部会が開かれ、研究材料となる未受精卵の入手方法について話し合われた。いずれの会合も、2004年7月に総合科学技術会議生命倫理専門調査会がまとめたヒト胚最終報告を受けて設置されたものである。

第一種栽培指針見直しはイネの隔離距離のみ

 2005年12月22日、カルタヘナ法で制定が義務付けられている「第一種使用規定承認組換え作物栽培実験指針」の見直し作業を進めている農水省の検討会が開かれ、改定案がまとめられた。改定案はパブリックコメントを募集した後、正式な指針として2006年度から運用開始の予定。
 大きな見直しは、イネの交雑防止のための隔離距離が現行の20mから30mに伸ばされたのみである。同じく交雑防止措置としてあがっていた田植えの時期を20日間ずらす方法は、周辺農家に協力を得ることが実質的に不可能などの理由から見送られることが決まった。また、栽培実験開始前の情報提供についても見直しはせず、当分の間は説明会を開催して様子を見ることとなった。
 イネの隔離距離は、東北農業研究センターの04年度調査で25.5m地点で交雑粒が見られ、05年4月から26mの暫定措置がとられている。30mへの見直しの合意に至るまでには、委員の間から多くの疑問の声があがった。青森県農林総合研究センターグリーンバイオセンター所長鈴木正彦は、「そんなにコロコロ変えていいのか。次の新しいデータで35mと出たらまた変えるのか」と述べた。これに対し、座長代理の玉川大学学術研究所教授日比忠明は「過去、文部省の組み換え実験指針は本当にコロコロ変えていた。科学の進歩に従って変えていくのはやむを得ない。25.5mと出たから30mで(国民の)理解も得られるだろう」と答えた。

北海道大学が交雑監視センター設置へ

 1月1日から北海道でGM作物栽培規制条例が施行されたのを受けて、北海道大学は学内に「食環境の安全管理センター(仮称)」を設置することになった。GM作物の交雑を監視し、情報開示していくことを主な目的としており、2007年の運営開始を目指す。


●生命倫理
北里大学で包括的同意を考えるシンポジウム


 2005年12月9、10日の両日、北里大学相模原キャンパスにおいて医学系大学倫理委員会連絡会議が開催された。その2日目の午前中、「既存試料・診療情報の研究利用をめぐる倫理」というタイトルで、包括的同意の是非を問うシンポジウムが開かれた。包括的同意とは、ゲノム研究などへの試料提供の際、提供者が1回同意しただけで、不特定多数の研究でその試料を使えるようにしてしまうこと。
 参加したパネリストは5名。うち4名は、京都大学や国立がんセンターなどの研究者、つまりは試料を集める側の者である。最後の1名は、先天性四肢障害児父母の会・野辺明子。問題点を指摘しつつも基本的には包括同意を容認する研究者らに対し、野辺は「単なるモノとして、私たちの体の情報が研究材料にされ、どのように使われているかわからない。それが野放しにされていることに不快感、嫌悪感を感じる」と発言し、真っ向から反対を唱えた。