■2006年6月号

今月の潮流
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今月のできごと


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バイオジャーナル

ニュース


●北米事情
環境保護団体が米国内務省を提訴

 4月5日、米国デラウェア州の州都ドーバーの郊外にある野生生物保護区域で、複数の環境保護団体がGM作物作付け停止を求めて、同州ウィルミントン地裁に内務省を提訴した。内務省魚類野生動物庁が、全米に約500ある禁猟区の1つである、この区域でのGM作物作付けを容認したからである。原告は「この野生生物保護区域は、化学会社やアグリビジネスのためにあるのではなく、野生生物のためにあるべきだ」と、訴えの理由を述べている。 〔ロイター 2006/4/5〕

●欧州事情
揺れるEUのGM作物政策

 4月12日、欧州委員会はGM作物に関する法律の改定を提案した。GM作物に関して各国の抵抗が大きいため、安全性評価の透明性を高め、一貫性をより強化する内容になっている。また欧州食品安全庁は4月11日、いくつかの加盟国が承認を拒んでいるGM作物に関して、リスクはない、とする評価を発表した。
 しかし4月18日、環境保護団体グリーンピースと地球の友は、GM作物輸入停止措置をめぐって米国がEUを提訴し、裁定が行われていたWTO紛争処理委員会に欧州委員会が提出した文書を公開した。これは情報公開請求で明らかになった。文書にはGM作物・食品が人の健康や環境に及ぼす影響に関して不確実な点が多く、研究も行われていないとする主張が述べられていた。両環境保護団体は、これらの主張にもかかわらず欧州委員会が相次いでGM作物を承認したことを批判し、安全性が確認されるまで利用・販売の停止を求めた。〔FoE Europe 2006/4/18ほか〕

ポーランドでGM種子禁止法案を可決

 ポーランド国会は、GM種子の国内登録を不可能にする法案を可決した。事実上GM種子の販売を禁止する内容だ、と同国農業委員会委員長は述べている。これに対して同国EU担当庁は、この法律はEU指令に違反している、と述べた。 〔GM Watch 2006/4/28〕

イタリア裁判所が共存法違憲判決

 イタリアの憲法裁判所は、議会が昨年1 月に可決成立させた共存(有機・慣行・GMの3つの農業の共存)に関する基本法は違憲だとする判断を下した。この共存法は事実上、GM作物の栽培を難しくする内容であるが、栽培を可能にする側面もあるため、GMOフリーゾーン運動を推進するマルケ州が提訴していた。裁判所は判断理由を、地方政府の領域を侵すため違憲としている。〔GM Watch 2006/5/3〕
●クローン
ヒトクローン胚、卵子無償提供条件検討

 ヒトクローン胚研究に必要な卵子(未受精卵)の入手方法について、ボランティアからの無償提供を将来的には認める方針を文科省の作業部会が打ち出した。2004年7月に総合科学技術会議生命倫理専門調査会がまとめたヒト胚最終報告書では、「人間の道具化・手段化」などの理由から、ボランティアからの無償提供は原則禁止としている。この報告書を受けて文科省で議論が続けられているが、4月14日に開かれた作業部会では、あくまでも原則禁止で、どういうケースならば許されるか例外の条件を検討することで合意がなされた。慶應義塾大学医学部教授吉村泰典は、「私は当然ボランティアは認めるべきだと思う。理想は無償だが、実費としてお金を払うようなことも考えるべき。そうしないと研究は進まない」と、さらに一歩踏み込んだ発言をした。北里大学医学部専任講師齋藤有紀子は、「問題となるのは、なぜあなたは提供しないのかと言われる人たちが出てくること。そういう人たちを保護する制度を作らなければ」と、安易に例外を認めることの危険性を指摘した。

中国でBSE抵抗性クローン牛誕生か?

 4月25日、中国山東省にある菜陽農学院で、BSE抵抗性クローン牛が誕生した。体重は55kgだった。遺伝子組み換え技術で抵抗性をもたらす遺伝子を導入し、体細胞クローン技術で誕生させた。その遺伝子が正常に働き、BSEに対して抵抗性を示すかどうかは、まだ不明である。 〔Chaina View 2006/4/28〕
●ES細胞
ヒトES細胞からの生殖細胞作成容認

 4月20日に開かれた文科省の専門委員会で、ヒトES細胞からの精子や卵子の作成を認める方針が打ち出された。現行の指針では、ヒトES細胞から作った生殖細胞を用いて個体を作成すれば、社会秩序を乱しかねないとの理由から作成は禁止されている。解禁しようと動き出した背景には、ヒトクローン胚研究に用いる卵子(未受精卵)不足がある。個体作成の禁止は従来通りのまま、今後、生殖細胞の作成のみを認めるのか、もしくは作った生殖細胞を受精させるところまでを認めるかなどを議論していく。東京大学医科学研究所教授中内啓光は、「本当に卵子、精子ができたのかを調べるには受精させてみるしかない。(ヒトES細胞から作った生殖細胞の)受精を認めざるを得ない」と発言した。京都大学大学院教授位田隆一は、「子どもを作らなければ受精させてもいいという話ではない。研究目的で胚を作ってもいいかどうかという話」と慎重論を述べた。


今月のGMO承認情報
表2 GM作物野外栽培承認(第1種使用規定)一覧
生物多様性影響評価検討会総合検討会
作物 性質 申請(開発者) 名称 認可日*
トウモロコシ 害虫抵抗性×除草剤耐性 シンジェンタジャパン Bt10 4月20日
大豆 害虫抵抗性×除草剤耐性 シンジェンタジャパン潟fュポン DP-356043-5,OECD UI:DP-356043-5 4月20日
*正式にはパブリックコメントの後に認可される。