■2006年11月号

今月の潮流
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今月のできごと


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バイオジャーナル

ニュース


●欧州事情
EU農相理事会、GMナタネ承認せず

 9月18日、EU農相理事会が開かれ、バイエル・クロップサイエンス社のGMナタネの食品利用は、可否いずれも有効数に達しなかったため承認が見送られた。品種はいずれも除草剤耐性キャノーラで、Ms8、Rf3、Ms8×Rf3の3種類である。このような場合、最終的な決定は欧州委員会に委ねられるが、これまで同様承認されることは確実である。2003年のモラトリアム解除以来、すべての承認されたGM作物が、同じ経過をたどっている。〔GM Watch 2006/9/19〕
●アジア事情
コスト高のGM綿がインド農民自殺増加の要因

 インドでは、モンサント・マヒコ社によるGM綿の販売が進んだ結果、毎年高価な種子を買うことを強いられた農民に、多額の借金を背負い自殺に追い込まれる人が増え、社会問題化している。インドとスイスのNGOの合同研究チームが行った調査によると、有機農家と遺伝子組み換え作物栽培農家との比較では、有機農家の方がコストが約40%低く押さえられ、収量も4〜6%多いことがわかった。また、GM綿の収量が安定しないのに対して、有機綿の収量は平均化していることも判明した。〔Times of India 2006/9/30〕

インド最高裁がGM作物の承認停止を求める

 インド最高裁(サバーワル裁判長)は、遺伝子工学承認委員会(GEAC)に対して、新たな命令が出るまで試験栽培も含めてGM作物を承認しないように求める判決を出した。これは4人の市民が起こした裁判に対する判断で、GEACに対して、すべての関係者からの聴取と、GEACに独立した専門家を加えることを求めた。 〔The Hindu 2006/9/23〕
●アフリカ事情
アフリカのGM作物栽培の今後を決める野外試験

 農業研究審議会(Agricultural Research Council)が進める、アフリカ大陸で最初の野外試験に南アフリカの環境保護グループが反対し、このGMキャッサバの実験がアフリカのGM作物開発の今後を決める焦点となっている。実験が予定されているGMキャッサバは、ウイルス抵抗性の品種で、モンサント社等が資金を提供している植物科学センター(Plant Science Centre)で開発された。アフリカの食料支配をもくろむバイテク企業が、食料にとどまらず、バイオエタノール生産用として開発を進めている、と環境保護団体は指摘している。〔South Africa Cape Times 2006/9/25〕
●遺伝子組み換え食品
GM食品表示の対象にテンサイ追加

 厚労省薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会は、9月26日、GM食品表示の対象食品にテンサイを追加した。これによって表示対象食品は、従来のトウモロコシ、ナタネ、大豆、綿実、ジャガイモ、アルファルファに、テンサイを加えた7作物となった。しかし、テンサイから最も多く作られる砂糖および糖蜜由来食品は表示対象外となった。現在、厚労省が食品として認可しているテンサイは、モンサント社の除草剤耐性テンサイ(H77系統、H7-1系統)である。
●WTO
WTO最終決定、EUのGMO政策貿易協定違反

 EUのGM食品モラトリアム政策が貿易協定に違反すると米国等が提訴したのを受け、審理していたWTO紛争処理小委員会が最終報告書を出した。この報告書は1000ページを超える膨大なものになった。すでに2月7日に中間報告が通知されており、その内容が最終報告書で覆されることはなかった。EU はすでに遺伝子組み換え作物のモラトリアム政策を解除しており、影響はほとんどないというのが大方の見方で、異議申し立ても行われない見込みである。 〔AFP 2006/9/29〕
●自治体動向
市町村初、今治市がGM作物栽培規制条例案可決

 9月27日、愛媛県今治市定例市議会は、GM作物栽培規制を盛り込んだ「今治市食と農のまちづくり条例」案を全会一致で可決成立させた。県レベルでは、北海道と新潟県がGM作物栽培規制条例を施行しているが、市町村レベルでは初めてである。条例はGM作物の栽培を「原則禁止」を意味する市長の許可制とし、違反した場合には罰則が適用される。
●省庁動向
農水省のGMナタネ自生調査、今年度中に発表

 10月4日、議員会館内で開かれた会議の中で、農水省は今年度からGMナタネの自生調査を開始したことを明らかにした。調査は、ナタネが着く輸入12港すべてで、積み出し地点から半径5q以内、最大で45地点で調査を行った。1次検査は終了し、2次検査の結果は今年度中に発表する予定と述べた。

疫学研究指針見直しの検討始まる

 疫学研究指針見直しのための専門委員会が文科・厚労両省の合同で立ち上げられ、10月11日に最初の会合が開かれた。同指針には2002年施行後から5年を目途に見直すことが規定されており、2007年6月がその5年後にあたる。疫学とは、特定の地域などの多数集団を対象として、病気などの原因や発生条件を統計的に明らかにする学問である。指針改定のポイントとして事務局から、指針の適用範囲の明確化や機関内倫理審査の簡略化などが示され、次回以降検討される。
●コーデックス
コーデックス特別部会で栄養強化食品の安全性評価指針も議題に

 今年11月27日より幕張で開催されるコーデックス委員会バイオテクノロジー応用食品特別部会では、GM動物食品と並んで、特定の栄養素などを強化した食品の安全性評価指針が検討される。カナダを中心としたワーキンググループが、栄養強化食品等の安全性評価指針案をまとめ、10月1日を締切りにコメントを求めた。採択されると、従来のGM植物食品の指針に加えられる。
●バイオ業界事情
大阪でバイオエタノール・プラント操業へ

 日本で初めての本格的なバイオエタノール・プラントが、来年1月より堺市で操業を開始する。フロリダ大学が開発したGM大腸菌を用い、建築廃材からエタノールを製造する。大成建設、大栄環境、丸紅、サッポロビール、東京ボード工業の5社が出資し、バイオエタノール・ジャパン関西が事業主体となる。1400キロリットルの規模で始め、4000キロリットルまで拡大する予定である。 〔日経バイオテク 2006/9/25〕

今月のGMO承認情報
表1 GM作物野外栽培承認(第1種使用規定)一覧
生物多様性影響評価検討会総合検討会
作物 性質 申請(開発者) 名称 認可日*
トウモロコシ 害虫抵抗性 シンジェンタ・ジャパン MIR604,OECD UI:SYN-IR604-5 10月5日
トウモロコシ 害虫抵抗性×除草剤耐性 日本モンサント DBT418,OECD UI:DKB-89614-9 10月5日
綿 除草剤耐性×害虫抵抗性 バイエル・クロップサイエンス LLCotton25×15985,OECD UI:ACSGH001-3×MON-15985-7 10月5日
*正式にはパブリックコメントの後に認可される。