■2007年2月号

今月の潮流
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今月のできごと


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バイオジャーナル

ニュース


●GM汚染
●米国でスーパー雑草が深刻に

 米国では除草剤耐性綿の栽培が広がるとともに、除草剤の効かないスーパー雑草が増え続け、重大な脅威になりつつある。いま問題となっているのはブタクサの一種のパーマー・アマランスで、ノースカロライナ州では100郡のうち10郡で、ジョージア州では159郡のうち4郡でこのスーパー雑草が確認されており、テネシー、サウスカロライナ、アーカンソーの各州でも広がっていると見られている。このスーパー雑草は、1日に1インチ(約3センチ)成長し、背丈が6〜10フィート(180〜300センチ)にも達するため、労働者を傷つけ機械を壊す危険性が指摘されている。 〔AP 2006/12/18〕
●ES細胞
●オーストラリアがヒトES細胞研究促進へ

 12月8日、オーストラリア議会は、ES細胞研究に制限を加えてきた、ヒトクローン胚培養禁止を解除する法案を可決した。これによって同国におけるヒトES細胞研究・開発は弾みがつくことになり、禁止措置を継続している米国ブッシュ政権への影響も必至である。〔CNN 2006/12/8〕 ●米国で人間の受精卵販売始まる

 米国テキサス州にあるアブラハム生命センターが、昨年7月に世界で初めて受精卵を販売する商売を開始していたことが判明した。同社は、提供者から集めた卵子と精子を受精させ、受精後8週間以内の胎芽を保存した受精卵バンクをつくった。購入者が受精卵を選び、代理母が出産する。その際購入者は、卵子と精子の提供者の人種・教育水準・性格、さらに子ども時代からの写真を見るなど、各種の情報を検討した上で購入することができるという。優生思想につながる、倫理的な問題をはらんでいる。 〔産経新聞 2007/1/7〕

●国内2例目のヒトES細胞作成承認

 2006年12月14日に開かれた文科省の専門委員会において、京都大学再生医科学研究所に次いで国内2例目となる国立成育医療センター研究所のヒトES細胞の樹立計画が承認された。研究素材となるヒト胚は慶應大学医学部附属病院から提供を受ける。現行指針では、不妊治療で使われなかった凍結保存されたヒト胚のみ用いることが許されている。鳴り物入りで承認された京都大学のケースと違い、審議時間は実質10分程度だった。
●ヒト胚
●ヒトクローン胚研究、提供体細胞の原則決まる

 ヒトクローン胚研究で用いる体細胞は、提供者を傷つけずに入手可能で、無償で提供を受けることができる細胞を原則とする方針が、文科省の作業部会で大筋で合意された。具体的には、治療目的の手術や生体組織検査で採取された細胞を指す。ただし、難病患者から提供を受ける場合は、目的とする体細胞が限定されるため、例外として提供者を傷つけて新たに入手する細胞であっても認めるとしている。2006年12月19日に開かれた会合では、原則をどのような形で指針に盛り込むのか、最終的な詰めの作業に入った。
●省庁動向
●第2期生命倫理専門調査会スタート

 内閣府総合科学技術会議内に設置されている生命倫理専門調査会の第2期メンバーが決まり、2006年12月19日に初顔合わせがあった。2004年7月に報告書「ヒト胚の取扱いに関する基本的考え方」がまとめられて以来、実に2年5ヵ月ぶりの開催となる。第1期では、ヒトクローン胚研究をめぐって委員の間で意見が分かれ、最終的には会長独断で強行採決が行われ、容認することが決まった。このとき慎重論を強く主張し、報告書に少数意見を添付した中心メンバーの島薗進(東京大学教授)、勝木元也(自然科学研究機構副機構長)、鷲田清一(大阪大学副学長)の3人は今回の第2期メンバーから姿を消した。

●農水省、野外栽培指針の運用状況を報告

 2006年12月21日、農水省の「第一種使用承認組換え作物の栽培実験指針検討会」が開かれ、野外栽培指針の運用状況が報告された。また、交雑に関する新たな科学的知見などに関する検討が行われた。前回の指針改訂時における最大の焦点は、イネの交雑防止の隔離距離だった。東北農業研究センターの2004年度調査で25.5メートル地点で交雑粒が見られたことから、最終的に改訂前の20メートルを30メートルにすることで決着した。今回、同じ東北農業研究センターの最新データ(2006年度調査) で交雑粒が見つかった最長距離は13.8メートルと報告され、隔離距離30メートルは現段階では妥当であるとした。
●今月のGM承認情報
●農水省、GM樹木の野外栽培を初承認

 2006年12月19日、生物多様性影響評価検討会総合検討会(環境省との共催)が開かれ、独立行政法人林木育種センター申請の高セルロース含量ギンドロ2品目を、樹木としては初めて第一種使用を承認した。第一種使用とは、カルタヘナ法に定められた野生生物への影響なしという評価で、野外栽培を許可したものである。ギンドロとは、別名「ウラジロハコヤナギ」と呼ばれ、街路樹や公園などでよく見かけるポプラの仲間。

今月のGMO承認情報
表1 GM作物野外栽培承認(第1種使用規定)一覧
生物多様性影響評価検討会総合検討会
作物 性質 申請(開発者) 名称 認可日*
ギンドロ 高セルロース含量 (独)林木育種センター trg300-1 12月19日
ギンドロ 高セルロース含量 (独)林木育種センター trg300-2 12月19日
トウモロコシ 害虫抵抗性・除草剤耐性 シンジェンタシード Bt11 12月19日
ナタネ 除草剤耐性・稔性回復性 バイエルクロップサイエンス PF3 12月19日
トウモロコシ 高リシン含有 日本モンサント LY38 12月19日
トウモロコシ 害虫抵抗性・除草剤耐性 シンジェンタシード Event176 1月12日
セイヨウナタネ 除草剤耐性 バイエルクロップサイエンス Topas19/2 1月12日
*正式にはパブリックコメントの後に認可される。