■2007年3月号

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バイオジャーナル

ニュース


●ISAAA 報告
●2006年GM作物栽培面積発表

 1月18日、GM作物推進団体ISAAA(国際アグリバイオ事業団)から、2006年のGM作物栽培面積が発表された。それによると世界では1億200万ha栽培され、栽培にかかわった農家も1030万戸に上る。その90%は小規模農家で、中国680万、インド230万、フィリピン10万など、そのほとんどがアジアの農民となっている。

表1遺伝子組み換え作物の作付け面積推移(ha)

1996年 170万ha
1997年 1100万ha
1998年 2780万ha
1999年 3900万ha
2000年 4300万ha
2001年 5260万ha
2002年 5870万ha
2003年 6770万ha
2004年 8100万ha
2005年 9000万ha
2006年 10200万ha
*参考:日本の国土面積、3780万ヘクタール



表2 国別作付け面積(2006年)
(万ha/全作付け面積に対する%)

国名 万ha(%) 栽培作物
米国 5460 (53.5) 大豆、トウモロコシ、綿、ナタネ、カボチャ、パパイヤ、アルファルファ
アルゼンチン 1800 (17.6) 大豆、トウモロコシ、綿
ブラジル 1150 (11.3) 大豆、綿
カナダ 610 (6.0) ナタネ、トウモロコシ、大豆
インド 380 (3.7) 綿
中国 350 (3.4) 綿
パラグアイ 200 (2.0) 大豆
南アフリカ 140 (1.4) トウモロコシ、大豆、綿
ウルグアイ 40 (0.4) 大豆、トウモロコシ
フィリピン 20 (0.2) トウモロコシ
オーストラリア 20 (0.2) 綿
ルーマニア 10 (0.1) 大豆
メキシコ 10 (0.1) 綿、大豆
スペイン 10 (0.1) トウモロコシ
コロンビア 綿
フランス トウモロコシ
イラン
ホンジュラス トウモロコシ
チェコ トウモロコシ
ポルトガル トウモロコシ
ドイツ トウモロコシ
スロバキア トウモロコシ
10,200  
*−は10万ha 未満


表3 作物別作付け面積(2006年)
(万ha/全作付面積に対する%)
大豆 5860 (57.5)
トウモロコシ 2520 (24.7)
綿 1340 (13.1)
ナタネ 480 ( 4.7)
その他 わずか
10,200

表4 性質別作付け面積(2006年)
(万ha/全作付面積に対する%)
除草剤耐性 6990 (68.5)
殺虫性 1900 (18.6)
除草剤耐性+殺虫性 1310 (12.8)
その他 わずか
10,200


●GMアルファルファ米国で栽培始まる

 今回のISAAA報告で、米国で初めてモンサント社の除草剤耐性アルファルファが8万ha栽培されたことが明らかになった。米国内のアルファルファ栽培面積の約5%に当たるとされるが、今後栽培面積が広がっていくと、日本の飼料への影響が避けられなくなってくる。

●インドでBt綿の栽培面積拡大

 前年に比べて栽培面積に際立った伸びを示したのがインドで、380万haにBt綿が作付けされた。もっとも広かったのがデカン高原の西部にあるマハラシュトラ州(184万ha)で、次いでアンドラ・プラーデシュ州(83万ha)、グジャラート州(47万ha)、マッディア・プラーデシュ州(31万ha)とつづく。230万戸の農家が平均1.65haにBt綿を栽培したことになる。高価なBt綿の種子を買うことを強いられる状況になった結果、農家の経済状態は逼迫し、自殺者が増えるなど社会問題となっている。

●環境保護団体によるGMO現状報告書

 このISAAA報告の発表に合わせて、環境保護団体グリーンピースとFoEが相次いで報告書を発表した。グリーンピースは、「GM作物への世界の状況と、10年間の根強い反対」と題した報告書を発表し、GM作物は多国籍企業の評価に反して、決して成功したとはいえず、世界の多くの農民・消費者から拒絶されつづけている、と指摘した。  FoEは「GM作物で誰が利益を受けたのか?」と題した報告書を発表し、GM作物の栽培面積は広がっているものの、消費者は受け入れておらず、ほとんどが先進国の家畜飼料として利用されているのみであり、バイテク企業が喧伝してきた食料問題や飢餓の解決には役立っていない、と指摘した。

●ISAAAデータは正確なのか

 ISAAAの統計データには、各国政府が発表した数字は反映されておらず、あくまで同団体による推定であり、正確さにかけることは否めない。  欧州の市民団体GENE ETHICS(遺伝子倫理)は、ISAAAの発表に疑義を唱えている。それによると、イランで5万haにGMイネが作付けされたことになっているが、それがうまく育ったとは思えない。またルーマニアで10万haにGM大豆が作付けされたとなっているが、今年より同国では作付けが禁止され、GMO非栽培国に移行している。つまり、この報告自体がバイテク企業による広報活動である、としている。〔GENE ETHICS 2007/1/20〕
●クローン
●異常が多いクローン牛の現状

 1月19日、農水省は「家畜クローン研究の現状について」を発表した。  クローン牛には、受精卵クローンと体細胞クローンがあり、そのうち米国で食用への承認間近になっている体細胞クローンのデータを見ると、相変わらず異常が多い。出生した511頭のうち、状態が不明の試験屠殺116頭を除く395頭の約7割にあたる274頭が、死産・生後直死・病 死等である。  受精卵クローンでは、出生した707頭のうち306頭が食肉になっている。また、不明が63頭にも達しており、管理のずさんさもうかがえる。その他、体細胞クローン豚が165頭、体細胞クローン山羊が9頭生まれているが、詳細はふれられていない(表5参照)。

表5 家畜クローン研究の現状(体細胞クローン牛)
(単位:頭、2006年9月現在)
出生頭数 511
 研究機関等で育成・試験中 102
 死産 77
 生後直死 85
 病死等 112
 事故死 8
 廃用 11
 試験屠殺 116
受胎中の体細胞クローン 25


●クローン食品が有機食品? 米国で論争

 米国では、クローン技術で誕生した牛から作られる肉や牛乳などを、有機生産された飼料や牧草で育てるなどの基準を満たせば有機食品として認証される、という見解をバイテク企業などが述べたことから、消費者団体の反発が強まり、論争になっている。これはFDA(食品医薬品局)が、体細胞クローン技術を、同じバイテク技術でありながら、GM技術と切り離した扱いにしたことが原因と見られる。 〔ワシントン・ポスト 2007/2/6〕