■2007年11月号

今月の潮流
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今月のできごと


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バイオジャーナル

ニュース


●アジア事情
●インド・パンジャブ地方で綿が大幅収穫減

 綿の一大生産地であるインド北部にあるパンジャブ地方では、害虫の影響で綿の収穫が大幅に減少しそうである。同地方では増収を期待して殺虫効果があるというBt綿を導入し、GM作物栽培面積も57万haから64.8万haに増えた。しかし、コナカイガラムシが異常発生して、その期待は大きく裏切られ、多量の殺虫剤を撒かなければならないなど経済的損失も莫大なものになっている。 〔The Financial Express 2007/9/19など〕
 また、Bt綿を栽培した後に小麦を作付けすると収量が落ちるという苦情も寄せられている。Bt綿が土の栄養を奪うことと、Bt毒素が土壌の生態系に影響したからだと考えられる。 〔Infochange 2007/9/6〕


●インドでBtナス開発進む

 米国コーネル大学の研究者が、インド・サスグル管理コンサルタンツと共同で、Btナスの開発を進めている。同国ではBt綿が栽培されているものの、食用GM作物は栽培されてこなかった。2009年には、このナスを市場に出す予定である。 〔Cornell University 2007/9/19〕

●中国でフィターゼ増量トウモロコシ開発される

 中国農業科学アカデミーは9月10日、新たな飼料用トウモロコシを開発し、すでに試験栽培に入った、と発表した。このGMトウモロコシは、酵素フィターゼを高レベルで含むため、家畜の消化を助け、栄養の吸収を促進するという。いまや一大GM作物開発国となった中国では、このような新たなGM作物が続々登場しつつある。 〔SciDev.Net 2007/9/13〕

●台湾でGM樹木の栽培試験行われる

 台湾で、台湾森林研究所と米国ノースカロライナ大学の研究チームが共同でGM樹木の試験栽培を進めている。リグニンを減らし、セルロースを増やしたGMユーカリである。二酸化炭素の吸収をアップするとしている が、将来的にはバイオ燃料としても有効である。日本の日立市でも林木育種センターで同じセルロース増加ポプラが試験栽培されている。 〔The China Post 2007/9/14〕
●豪州事情
●オーストラリア農民の52%がGM作物に否定的

 圧倒的多数の農民はバイオ燃料用作物を作りたがっているものの、過半数の農民がGM作物に否定的見解を持っていることが、地方紙の調査で示された。調査結果によると、オーストラリアではGM作物を作るべきではないと思っている農民が52%に達し、導入を望む農民は27.6%にとどまり、わからないと答えた農民が20.4%だった。 〔North Queensland Register 2007/10/4〕
●北米事情
●米国で、禁止GMアルファルファの栽培発覚

 全米で栽培が禁止されているGMアルファルファが、ミシガン州などで栽培されていたことが判明した。今年5月に、カリフォルニア州連邦地裁で栽培禁止命令が出たが、それより前に22万エーカーで栽培されていたと、米農務省が明らかにした。地裁は周囲の畑などを汚染しないよう適切な対策を求めているが、農家の間で汚染を懸念する声は強まっている。 〔AP 2007/8/26〕


●米農務省がGMイネ違法流通調査を終了

 10月5日、昨年起きた米国産GMイネ違法流通事件について、米国農務省(USDA)の調査がまとまった。違法流通していたのは独バイエル・クロップサイエンス社のLLライス601で、安全性が確認されていない状態で世界中を流通した。USDAによると、原因は不明で、同社の責任は問わないことになった。 〔ロイター 2007/10/5〕

●バドワイザーのビールがGMイネ汚染

 米国農務省がLLライス601汚染事件の調査結果をまとめた直後に、環境保護団体グリーンピースは、バドワイザー社の製品がGMイネに汚染されていると発表した。同団体が、アーカンソー州にある同社の工場から入手した4つの原料を分析したところ、そのうち3つからLLライス601が検出された。 〔Beverage daily.com 2007/10/9〕
●企業動向
●ビル・ゲイツ財団が旱魃耐性作物の開発費拠出

 アフリカでのGM作物開発を支援しているビル・ゲイツが創設したビル&ミリンダ・ゲイツ財団は、アフリカで旱魃耐性作物を開発するため500万ドルの拠出を決めた。この資金は、アフリカで開発を進めているCimmytに提供され、施設づくりに充てられると、同財団は説明している。 〔The Standard,Kenya 2007/9/9〕

●モンサント社、反トラスト法違反容疑で調査

 9月13日、米国アイオワ州の司法長官トム・ミラーは、モンサント社が反トラスト法に違反しているかどうか、調査を開始したことを明らかにした。種子を排他的に独占しているか否かを調査するもので、同社は種子に関する情報を同長官に提供したことを、市場に伝えた。〔LegalNewsline.com 2007/9/13〕
●ターミネーター技術
●雑草制御のためのターミネーター技術?

 農業バイオテクノロジー国際会議で、インド農業研究会議(ICAR)会長マングラ・ライは、雑草のコントロールのために、次世代を作らせないターミネーター技術の研究を進めるべきだ、と発言した。この技術は、GM作物の特許保護を目的に開発が進められてきたが、種子を殺す技術であるため、非倫理的だとして国際的な非難を浴びて、現在は開発が中止されている。〔The Financial Express 2007/9/17〕
●ヒト胚
●ヒトクローン胚研究、3倍体受精卵利用の要件を議論

 9月13日、ヒトクローン胚研究の容認に向けて検討を進めている文科省の作業部会が開かれ、3倍体受精卵の研究利用について審議が行われた。これまでに、不妊治療などの体外受精で使用されなかった3倍体のみを対象とし、廃棄が決まったものだけ提供を受ける、との基本原則が決まっている。この日はさらに突っ込んだ議論となり、凍結されたものと凍結されていないもの双方を、インフォームド・コンセントが得られれば使えるということで合意がなされた。2004年7月にまとめられた総合科学技術会議のヒト胚最終報告で「生命の萌芽」と定義された人の受精卵を、例外的に使用することへの説明が不十分との意見が複数の委員から出された。これに対して主査の理化学研究所研究顧問・豊島久真男は、「通常、(3 倍体受精卵は)発生を継続する可能性が極めて低いとともに、子宮に戻すと母体にも悪い影響を与えるということを加えればわかりやすい」と述べ議論を収束させた。