■2008年10月号

今月の潮流
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今月のできごと


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バイオジャーナル

ニュース


●北米事情
●カリフォルニア州議会がGMO規制農民保護法を可決

 カリフォルニア州議会がモンサント社の訴訟から農民を守る法律を、両院で可決させた。同州でGM作物を規制する初めての法律である。後は知事がこの法律に署名するかどうかが焦点になっている。〔Genetic Engineering Policy Alliance 2008/8/31〕

●米国稲作農家がバイエル社を訴える

 カリフォルニア州の稲作農家が、8月7日、バイエル社とその子会社をジェファーソン郡巡回裁判所に訴えた。訴えを起こしたのは、同郡に住む2軒の農家で、未承認イネ「LLライス」が混入し、経済的損失を受けたというのがその理由。 〔Pine Bluff Commercial 2008/8/8〕

●全米穀物協会がGM作物売り込みで日韓に攻勢

 全米穀物協会は韓国の市民の間でGM作物拒否が広がっていることから、バイオテクノロジーのテキストの書き変えを計画している。まずは子どもたちを教えることになる教師を教育して、バイオテクノロジーに対する姿勢を変えさせるのが狙いのようだ。
 また日本に対しては、毎年のように新聞やテレビなどのジャーナリストを招待して、バイテク企業や生産農家などに会わせることでGM作物の持つ悪いイメージの払拭を図ってきたが、今年も招待して日本の世論の変更を目論んだ。 〔Grainnet 2008/8/14 ほか〕
●GMOフリー
●スペイン・カタルーニャでGMOフリー手続き開始

 8月20日、スペイン・カタルーニャ地方の市民が、GMOフリーを求めて10万を超える署名を地方議会に提出した。署名はカタルーニャ統計研究所(IDESCAT)でチェックされた後、10月までには議会の手続きが終了、法案になり議会にかけられる予定である。〔Som lo que Sembrem 2008/8/20〕
●企業動向
●日本製紙がGMイネの温室試験を継続

 徳島県にある日本製紙小松島工場は、これまでは農水省のアグリバイオ実用化・産業化研究事業として、2007年1月に完成した温室を用いて、花粉症緩和米の試験栽培を2回行ってきた。同研究事業は今年3月で終了したが、8月に3回目の栽培を開始した。今回は、これまで共同開発者となってきた農業生物資源研とは関係なく、同社独自の周年栽培システムを確立するものだとしている。小松島工場はこの9月に閉鎖されるため、温室だけが残る形となる。温室の有効利用を図って、今後は各研究機関からの委託栽培に取り組みたいとしている。

●キッコーマンが醤油の原料に非GM大豆を継続

 8月20日、キッコーマンが2009年に発売する醤油の原料に、非GM大豆使用を継続すると発表した。すでにビール会社が、原料のコーンスターチについて非GM大豆使用を継続することを明らかにしているが、日本の消費者がGM 原料を受け入れていないことを反映した動きと見られる。 〔ロイター 2008/8/21〕
●技術動向
●GMアイスクリーム

 欧州食品安全庁(EFSA)のアレルギーとGMOに関するパネルが、氷核タンパク質の食品への使用についての見解を発表した。氷核タンパク質は生物が寒さに対応するため氷の結晶化温度を下げるために合成するものである。そのタンパク質をアイスクリームに加えると滑らかな舌触りになる。氷核タンパク質製造のためにGM技術が用いられていることから、食品メーカーがEFSAに安全性評価を求めていた。同パネルは、氷核タンパク質が0.01%以下なら安全と結論づけた。 〔EFSA 2008/8/8〕
●省庁動向
●文科省作業部会でエピジェネティクス研究者が報告

 8月26日、ヒトiPS(人工多能性幹)細胞などからの生殖細胞作成の是非を検討している文科省の作業部会が開かれ、滋賀医科大学教授・鳥居隆三と東京医科歯科大学教授・石野史敏からのヒアリングが行われた。鳥居はサルES(胚性幹)細胞の現状を報告し、一方の石野は、マウスのエピジェネティクスの研究状況を発表した。エピジェネティクスとは、先天的に親から子へと受け継がれる遺伝子が、遺伝子そのものの変化を伴わずに、後天的なはたらき(発現)によって各細胞を形作っていく仕組みのこと。
 現在、体細胞クローンマウスの成功率はわずか5%である。その5%にも肥満や短命など多くの問題があり、石野らの研究によれば各臓器の遺伝子発現にも異常が見られる。さらに、顕微受精を行ったマウスの受精卵でも遺伝子発現に異常があるという。これらの事実を踏まえて石野は、「私たちが調べているのはマウスで、人は人で調べてみないとわからないが、何かが起きているということだけは言える」と述べ、再生医療におけるエピジェネティクスの重要性を訴えた。