■2008年11月号

今月の潮流
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今月のできごと


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バイオジャーナル

ニュース


●アフリカ事情
●南アでGMジャガイモが農業団体に嫌われる

 南アフリカで商業栽培が行われようとしているGMジャガイモが農業団体に嫌われ、今後栽培されなくなりそうである。この殺虫性(Bt)ジャガイモは、外国で開発されたため、同国にほとんどいない害虫への抵抗性をもつことが理由の1つ。〔African Center for Biosafety 2008/9/10〕
 しかし、それだけではなさそうである。というのはその後、農家だけでなく、消費者からの反発と輸出への影響を懸念して食品業界も反対の意思を表明したからである。同国の農業団体がGM作物に反対の意思を表明したのは、初めてのことである。 〔IOL 2008/9/17〕

●南アでGM食品表示義務化可決

 9月16日、南アフリカ議会の貿易産業委員会は、GM食品表示義務化を含む消費者保護法案を可決した。当初は、農業・保健省が表示に反対していたため否決されると見られていたが、逆転可決された。〔Business Day 2008/9/17〕

●南アがGMソルガムの温室試験を認可

 南アフリカ政府は9月11日、栄養改善に寄与するとして、GMソルガムの温室試験を認可した。認可されたのは、南アフリカ科学産業研究会議が進めているプロジェクトで開発されたもので、栄養価を高めた作物だという。〔Agence France Press 2008/9/11〕

●ケニアの大臣がGM作物導入に慎重な対応を求める

 ケニアの国土大臣ジェームズ・オレンゴは、GM作物導入に慎重な対応を求めた。この発言は、導入に積極的な農業大臣ウィリアム・ルトに対抗して述べたもので、ケニアではGM作物をめぐって政府内でも見解が分かれていることが示された。〔Kenya Broadcasting Corporation 2008/9/2〕
●遺伝子組み換え動物
●異常が多い遺伝子組み換え動物

 ニュージーランドのアグリサーチ研究所は、GM動物は出産に異常が多い、と発表した。出産率が通常の動物に比べて9%以上低く、発育不全で変形した胎児、乳房のない牛、呼吸器系に異常のある動物などが生まれている。緑の党のジャネット・フィッツシモンズは、動物福祉を否定するものだ、と述べている。〔Green Party of Aotearoa New Zealand 2008/9/4〕

●国際機関
●国連事務総長がバイテク企業を批判

 国連事務総長は国連開会の際、多国籍企業が種子から生産、分配まであらゆる側面で食料を支配しており、今回の食糧危機で利益を得ていると指摘。2007年、食糧危機によってカーギルやモンサント社などは45〜60%の利益増やした、と述べた。 〔2008/9/25〕

●ES細胞
●化学物質の毒性試験にヒトES細胞使用計画

 9月25日に開かれた文科省の専門委員会において、国立環境研究所が申請していたヒトES細胞(胚性幹細胞) の使用計画が新たに承認された。計画の目的は、胎児期にダイオキシンやポリ塩化ビフェニール(PCB)、サリドマイドなどの有害な化学物質にさらされた際の影響調査と病気の予防法の開発。それらの物質をヒトES細胞に加え、その上で神経細胞などに分化させて異常を調べる。ヒトES細胞の入手先は京都大学再生医科学研究所を予定している。
 この種の研究は、これまではヒト細胞の入手が困難だったため、代替として動物実験を実施し、その結果から人体影響を推察していた。だが、受精卵から作り出し、増殖を繰り返すヒトES細胞が作成され事態は一変した。ヒトES細胞を用いれば、実験用のヒト細胞が大量に入手できるからだ。今後このような薬剤毒性試験に使う研究はますます活発化していくだろう。

●万能細胞の臨床応用に向け指針改定

 ヒト幹細胞の臨床指針の改定に向け厚労省が動き出した。10月6日に開かれた厚生科学審議会科学技術部会では、指針の見直しに関する専門委員会の設置が正式に決まった。改定の最大の焦点は、ヒトES細胞などのいわゆる万能細胞の臨床応用の取り扱いである。2年前の策定時は、まだ基礎研究段階にあるなどの理由から指針に盛り込むことは見送られたが、昨年京都大学教授・山中伸弥らによってヒトiPS細胞(人工多能性幹細胞)が作成され、国内の万能細胞を取り巻く状況がにわかに活気づいてきた。これを受け厚労省は、一気に臨床応用までの道筋をつけ、米国などに対抗しようとしているようだ。


●GMO承認情報
表1 GM作物野外栽培承認(第1種使用規定)一覧
生物多様性影響評価検討会総合検討会
作物 性質 申請(開発者) 名称 認可日*
トウモロコシ 害虫抵抗性 シンジェンタシード MIR162, OECD UI:SYN-IR162-4 2008年8月21日
ワタ 害虫抵抗性 シンジェンタシード株式会社 COT102, OECD UI:SYN-IR102-7 2008年8月21日
カーネーション 青紫色 サントリー OECD UI:FLO-40689-6 2008年10月2日

*正式にはパブリックコメントの後に認可される。