■2009年10月号

今月の潮流
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今月のできごと


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バイオジャーナル

ニュース


●国際機関
●国連人権委員会が食品への特許を批判

 国連人権専門委員会が食品への特許に疑問を呈した。これは同委員会のシンクタンクで働いている専門家グループが提起したもので、委員会副議長のジーン・ジーグラーは、特許がもたらす食べる権利への侵害は、2000年から2008年にかけての最も深刻な人権侵害の1つである、と述べた。 〔Intellectual Property Watch 2009/8/7〕
●企業動向
●モンサント社の鉱山で家畜死亡

 2009年8月号でモンサント社所有鉱山の環境汚染を報告したが、米国の土地管理局は、同社のブラックフット・ブリッジ鉱山に関する環境影響調査の草案をまとめ、パブリック・コメントのため公開した。その中で最近、同鉱山の影響と見られる家畜の死亡が報告されている。それによると、レーン・クリーク鉱の近くで18頭の牛がセレニウム中毒で死亡していたという。鉱山ではラウンドアップ(有機燐系除草剤)の原料として用いる燐酸塩を採掘している。 〔Capital Press 2009/8/27〕


●中国とドイツ企業がGMイネ開発で提携

 独バイエル・クロップサイエンス社と中国の国立イネ研究所(CNRRI)が、GMイネの共同開発協定に調印した。すでにバイエル社は、中国農業科学アカデミー(CAAS)との間で協定を結んでおり、CNRRIはCAASの系列研究所にあたり、GMイネに特化した形で開発を進めていくという。 〔Bayer Crop Science 2009/8/14〕
●GMOフリー
●西オーストラリア州でGMOフリー広がる

 西オーストラリア州オーガスタ・マーガレット川地区(shire)議会が、満場一致でGMOフリーを宣言した。地区長のスティーブン・ハリソンは、州によるGMO導入決定を懸念した結果である、と述べた。〔Australian Broadcasting 2009/8/14〕
 また西オーストラリア州で最も人気のあるワインを作っているCullen Wines社やブドウ栽培農家なども、GMOフリー運動を支持すると表明した。その理由に、同州がもつグリーンでクリーンなイメージが失われることをあげている。 〔Augasta-Margaret River Mail 2009/8/12〕
●クローン
●韓国で臓器移植用クローンGMブタ誕生

 韓国で、心臓などを人間に移植するための臓器移植用GMブタの体細胞クローンが誕生したと、地方開発庁が発表した。政府の支援を受け、科学者が取り組んでいたもの。これにより移植用GMブタの量産が可能になる。〔The Korea Times 2009/8/11〕
●省庁動向
●農水省がクローン家畜流通自粛を要請

 8月26日、農水省は旧農水省研究所(現在は独立行政法人)や都道府県知事、国立大学法人などに対して、体細胞クローン家畜の市場での流通自粛を要請した。食品安全委員会では安全と結論づけたが、消費者の理解が得られていないことに加えて、まだ試験段階であるのが、その理由である。しかし、すでに流通している米国産クローン牛肉については、自粛の対象外である。

●文科省作業部会でマウスの生殖細胞作製の現状を報告

 8月17日、ヒトiPS細胞(人工多能性幹細胞)などの、いわゆる万能細胞からの生殖細胞作製の是非を検討している文科省の作業部会が開かれ、京都大学大学院医学研究科教授・斎藤通紀のヒアリングが行われた。今年2月、生殖細胞の作製のみを容認するとの基本方針で報告書をまとめ、現在は作製する際の条件などを議論している。
 生殖系列の細胞の分化や増殖機能を専門とする斎藤は、マウス細胞による生殖細胞の作製研究の現状を報告した。着床後の胚からエピブラスト(原始外胚葉)と呼ばれる細胞塊を取り出して培養し、精子や卵子の元になる始原生殖細胞に近い細胞を作る。それを雄のマウスの精巣に移植し、精子を作らせることに成功したという。つまり、万能細胞からエピブラストを作り出せさえすれば、精子の作製も理論的には可能になる。斎藤は、「人の遺伝を司る細胞の生物学的な解明」のためにも、ヒトiPS細胞などからの生殖細胞作製は認めるべきとの意見を述べた。