And to this they all agreed.
By Heracles, I said, there never was such a paragon, if he has only one other slight addition.
What is that? said Critias.
If he has a noble soul; and being of your house, Critias, he may be expected to have this.
And to this they all agreed.
これは倒置が起こっている。
And they all agreed to this. が普通の語順。
this は、前13回の「カルミデスは顔だけではなく、裸体も完璧であること」か。they all は、「彼を知るすべての男性」。
“agree to 同意[賛成]事項”、“agree with 人[誰々]”。
この他、on, about なども使われる。
「そして、このことは、皆が賛成しました」
By Heracles, I said, there never was such a paragon, if he has only one other slight addition.
by God で「神に誓って」「神かけて」という誓いの言葉になる。ヘラクレスは、半分は人間だというが、ギリシア神話中の一番の英雄。だから、「ヘラクレスに誓って」とする。プラトンの他作品にも、他の別の人物に誓う表現が見受けられるので、多分大丈夫。
I said は除外。
there never was such a paragon, if he has only one other slight addition. は、困ってしまった。
主節は〔過去形〕、if節は〔現在形〕。〔仮定法〕にこんな形はない。現在の事実に反する〔仮定法過去〕ならば、if節は〔過去形〕で、主節には〔過去形助動詞〕が使われるはず。
このif節は、〔現在形〕なので、事実と反する〔仮定法〕ではないはず。事実に反することを〔却下条件〕という。これに対して、「可能性が五分五分(ごぶごぶ)」の条件を〔開放条件〕という。用語はどうでもよい。仮定法ではないif節を使った主節とif節は次のようになるのが基本。
(1) If 現在形, 現在形.(現在の不確実なこと)
(2) If 現在形, 未来形.(未来の不確実なこと)
(3) If 過去形,過去形.(過去の一時点の不確実なこと)
(4) If 現在形,命令法.(現在・未来の不確実なこと)
これにも当てはまらない。困った困った。
古い参考書も大いに役立つ。1970年初版(私の持ってるのは81刷1995を買いなおした)の美誠社『総解英文法』P373§112(3)に「過去時制は、ふつう ever, never を伴って、現在までの経験を表す」という紹介がある。〔過去時制〕で、〔現在完了〕の〔経験〕を表すことができるのだ。この項目は、文英堂『シグマ新高校英語』1983年初訂版(私のは1984年第2版)のP72にもある。
うん、うん。〔現在完了〕なら〔現在形〕と考えてもいいので、上の(1)型。これでいいだろう。
「ヘラクレスに誓って言うが、こんな理想的な者は、今まで一人としていなかった。もし彼に、もう1つちょっとした要素が付加されていれば」
What is that? said Critias.
「それは何です? とクリチアスが言った」
If he has a noble soul; and being of your house, Critias, he may be expected to have this.
If he has a noble soul は、条件を表す〔副詞節〕だが、これの〔主節〕は、先に出てきた there never was such a paragon であろう。だからここでは、〔主節〕は省略されていると考える。もし、後ろの and being ... が〔主節〕だとしたら、意味がおかしくなる。
and being of your house, Critias, he may be expected to have this の部分は、まず、呼びかけの Critias を除外して考える。
being of your house の部分は、〔分詞構文〕ではないかと考える。主語は書かれていないので、文の主語 he と一致するはず。of your house の、house は「クリチアスの家」のことだ。he is of your house の英文ができる。he は「カルミデス」。「カルミデスはあなたの家のです」。日本語がおかしい。この of は〔出身〕〔性質〕など、いろいろ候補はあるが、〔所属〕でどうだろう。そして、house は、「家」よりも「家系」「一族」がふさわしい。
he may be expected to have this は、〔受動態〕になっている。〔能動態〕は、they may expect him to have this 「周りの者は、彼がこれを持っていると思っているかもしれない」
this は、a noble soul
内容から、being of your house の〔分詞構文〕は、〔理由〕がいい。
「もし、彼が崇高な魂を持っていればの話だ。クリチアス、彼は君の家系の者なので、その崇高な魂を持っている、と思われているかもしれない」
クリチアスとカルミデスは、代々アテネの執政官(アルコン)を出してきた名門の家系に生まれた。そのことを考えれば、上記の訳は妥当であろう。noble soul については、〔哲学〕の面から考えて、別のふさわしい訳があるかも知れない。このことは、心に留めながら進んでいくことにする。
カイレポン:このことは、みんなの一致した意見なんだ。
ソクラテス:ヘラクレスに誓って言うが、こんな理想的な者はいなかった。もし、もう1つちょっとした要素が加わっていればの話だが。
クリチアス:それは何です?
ソクラテス:崇高な魂(精神)だよ。クリチアス、彼は、君の一族だから、その崇高な魂を持つっていると、周りから思われているかも知れないが……。