Having such ancestors you ought to be first in all things, and, sweet son of Glaucon, your outward form is no dishonour to any of them. If to beauty you add temperance, and if in other respects you are what Critias declares you to be, then, dear Charmides, blessed art thou, in being the son of thy mother. And here lies the point; for if, as he declares, you have this gift of temperance already, and are temperate enough, in that case you have no need of any charms, whether of Zamolxis or of Abaris the Hyperborean, and I may as well let you have the cure of the head at once; but if you have not yet acquired this quality, I must use the charm before I give you the medicine. Please, therefore, to inform me whether you admit the truth of what Critias has been saying;--have you or have you not this quality of temperance?
Having such ancestors you ought to be first in all things, and, sweet son of Glaucon, your outward form is no dishonour to any of them.
Having such ansestors は〔分詞構文〕であろう。〔理由〕。
any of them の them は何だろう。「同年輩の若者」と考えて、「同年輩の若者の誰と比べても」が to any of them としたいと思った。dishono(u)r を『ジーニアス英和辞典第三番版』で調べると、"a dishonor to one's school"「学校のつら汚し」と例があった。この to は、自分が所属するものに対してなのかもしれない、と考えた。そうすると、them は、父方、母方の家系ではないか。ここでは具体的に such ancestors を指しているとみると納得できる。
「そんな祖先を持っているのだから、君はあらゆることで一番になるべきなのだ。そして、グラウコンの美しい息子よ、君の外見は、祖先の誰に対しても恥ずべきものでは全くない」
If to beauty you add temperance, and if in other respects you are what Critias declares you to be, then, dear Charmides, blessed art thou, in being the son of thy mother.
If to beauty you add temperance は、If you add temperance to beauty と考えても良い。
in other respects の respect は「点」「箇所」であろう。
what は〔先行詞〕を含む〔関係代名詞〕。
“declare+O+to be...”「Oは…であると断言する」。to be は省略されて、“declare+O+C”となることもある。Cは、…の部分と同じ、形容詞・名詞がくるとされる。“declare+(that)+S+V...”の形も可能。この場合、先ほどのOがSになり、Cは…の部分となる。
what Critias declares you to be で、「クリチアスが、君はこうであるといっているもの」
呼びかけの dear Charmides 以後に、主語があるはず。主語になれそうなのは、thou しかない。thou[ザウ]は、you(主格) の古い形。thy[ザイ]は所有格(=your)。「なんじ」「そち」「そなた」と訳す人が多い。
art[アート]は、are の古い形。you are の代わりに、thou art と使っているのだろう。blessed art thou は、明らかに〔倒置〕。thou art blessed=you are blessed「なんじは祝福を受ける」。
「もし、美に加えて節制を加え、そして、君が他の点でもクリチアスが言っているような人物であれば、そのときは、親愛なるカルミデスよ、汝(なんじ)は、汝の母親の息子であるとして、祝福されるであろう」
And here lies the point; for if, as he declares, you have this gift of temperance already, and are temperate enough, in that case you have no need of any charms, whether of Zamolxis or of Abaris the Hyperborean, and I may as well let you have the cure of the head at once;
here lies the point は、〔倒置〕。the point lies here。lies の原形は、lie〔自動詞〕「横たわる」「ある」「いる」「〜の状態である」変化形は、lie lay lain lying。「嘘をつく」の方は、lie lied lied laying。〔他動詞〕の「横たえる」「置く」は、lay laid laid laying。of Zamolxis は、前方の charms にかかる。同様に of Abaris もそう。第25回に出てきたが、whether A or B は「AであろうとBであろうと」。Abaris と the Hyperborean は〔同格〕か。Hyperborean は、ギリシャ神話の中の「ヒュペルボレオス人」なのか、それとも単に、「北国人」と訳すべきなのか。アバリスについて、現在知識がない。
(後日の調査)ある説では、北風の神ボレアースが支配する極北の果てにある伝説の国が、ヒュペルボレオス。ギリシア人たちは、はるかなる北の山脈の向こうには、ヒュペルボレオス人たちが暮らしていると想像していた。また、南の果てには、アイティオピア(エチオピア)人たちが暮らし、西の果てにはエリュシオンの野が広がり、神に愛されし人々が、永遠の幸福を得て暮らしている、という言い伝えを信じていた。
アバリスは、フランスの作曲家ラモーの歌劇(オペラ)に同名の登場人物がいる。Les Boréades(レ・ボレアード;北風の神々)という題名で、舞台はバクトリアーヌ国となっている。その国の女王は、北風の神の息子二人のうちから婿をとらなければならなくなる。女王に献身的な愛の心を寄せるアバリスは、自分に資格がないため、彼女の愛にこたえるにはためらいがあった。逆に彼女は、女王の座を棄ててもアバリスを愛すると宣言する。北風の神々たちは怒り、彼女をさらってしまう。アバリスは彼女の救出に向かう。……。
“may as well 原形不定詞”は、「〜したほうがよい」。本当は、as...as... の構文の、後ろの as が省略されたもののようだ。「私はすぐに頭痛の治療法を君に持たせなくてもよいが、持たせても同じくらいよいかもしれない」
「そして、ここに重要な点がある。というのは、クリチアスが言ったように、もし君がすでに節制の贈り物を持っていて、充分に節制の徳が備わっているというならば、その場合は、ザモルシスのまじないだろうが、北国人のアバリスのまじないだろうが、そんなものは全く必要がない。そして、私はすぐにでも頭痛の治療法を君に授けたほうがよい」
but if you have not yet acquired this quality, I must use the charm before I give you the medicine.
「しかし、もし君がこの性質をまだ獲得していないのならば、私は君に薬を与える前に、そのまじないを使わなければいけない」
Please, therefore, to inform me whether you admit the truth of what Critias has been saying;--have you or have you not this quality of temperance?
to inform。どうして〔to不定詞〕なのだろう。〔命令文〕なら〔原形〕でいいじゃないか。me〔間接目的語〕、whether...〔直接目的語〕を従えているから、inform は〔他動詞〕である。
“be pleased to”という表現がある。「〜してうれしい」「〜してよろこぶ」。これは〔受動態〕から出来上がったはずだ。ならば、能動態もあったはず。〔受動態〕の直訳は「〜して喜ばされた」。〔能動態〕ならば、「〜して喜ばせる」くらいか。
ということで、「to以後をして、喜ばせろ」となるのではないか。
whether you admit the truth of what Critias has been saying は〔間接疑問〕。
Do you admit the truth of the things that Critias has been saying? の意味。
have you...? は、完了形ではない。Do you have...? のこと。これが書かれた当時、イギリスでは、have you...? と、普通に書かれていたのであろう。
「それゆえ、クリチアスがずっと言い続けていることが真実だと、君は認めるかどうかを知らせて、私を喜ばせなさい。君はこの節制の性質を持っているのか、それとも持っていないのか」
ソクラテス:
そんな祖先を持っているのだから、君はあらゆることで一番でなくてはいけない。グラウコンの美しい息子よ。君の外見は、君の祖先の誰が見ても恥ずかしいものではない。
もし君が美に節制という美徳を加えれば、そしてもし、他の点でもクリチアスが言うような美徳を持っているならば、愛するカルミデスよ、さすがに汝の母親の息子であると賞賛されるであろう。
ここに大事な点がある。クリチアスが言うように君にすでに節制の徳が与えられており、十分に節制の徳が備わっているならば、ザモルシスのまじないだろうが、北国人のアバリスのまじないだろうが、そんなものは全く必要ない。
すぐにでも、頭痛の治療を施してもいいくらいだ。
しかし、君がこの節制の徳ををまだ獲得していなければ、薬を与える前にまじないを使わなければいけない。
だから、クリチアスが言い続けていることが本当かどうか私に教えてくれ。節制の徳を、君は持っているのか、持っていないのか。