I think, I said, that I had better begin by asking you a question; for if temperance abides in you, you must have an opinion about her; she must give some intimation of her nature and qualities, which may enable you to form a notion of her. Is not that true?
Yes, he said, that I think is true.
You know your native language, I said, and therefore you must be able to tell what you feel about this.
Certainly, he said.
I think, I said, that I had better begin by asking you a question;
前からある程度のまとまりごとに区切って前から意味を取っていくスラッシュリーディング風に。
「私は考える/私は言った/私は始めた方がよいということ/あなたに質問を訊ねることによって」
I said は、無視する。
「君に質問することから始めたい、と私は思う」
for if temperance abides in you, you must have an opinion about her;
「というのは/もし節制が宿っているなら/あなたの中に/あなたは意見を持っているに違いない/彼女についての」
abide が「いる」「住む」という意味で使うのは、古い。=stay, live。
her とは誰だろう。ここでは temperance の他には考えられない。次の文で temperance であることがいっそうはっきりする。
このように she や her が、普通ならば it, its となるべき場合に用いられるときがある。男性が自分の乗っている車や船・列車などの乗り物を指すときや、愛用の機械や飼っている動物を指すときに使う。これを利用すると、その人物が she, her に愛着を抱いていることが伝わる。
また、nature, peace, fortune なども、she で受けることが多いという。この temperance もこの類であろう。
「というのは、もし節制の徳が君の中に宿っているなら、君は節制についての意見を持っているに違いない」
she must give some intimation of her nature and qualities, which may enable you to form a notion of her. Is not that true?
「彼女は暗示を与えるに違いない/彼女の本性や性質の/そのことが可能にするかもしれない/あなたが彼女の概念を形成することを。それは本当ではないですか」
intimation は「暗示」「ほのめかし」「通告」。後ろに of... または、that節 が来るというから、このof...、that節は、〔同格〕なのかも知れない。でも、そんなことは考えずに、of... を「…の〜」と訳しておけばすっきりする。
which... は〔継続用法〕がふさわしい。
“S+enable+O+to不定詞”で、「SはOがto不定詞することを可能にする」「SによってOはto不定詞できる」。これもセンター試験の4択などで出題される。
「彼女は、自分の本性や性質についての暗示を与えるに違いない。そのことによって、君は彼女の概念を形作ることができるかもしれない。それは本当ではないですか」
Yes, he said, that I think is true.
he said は無視。Yes も除外して考えると、that I think is true.
この that は、said の目的語を作る〔接続詞〕の that ではないはず。接続詞ならば、次の I think is true で完成文ができるはずだ。どうみても何か足りない。that を、is の前に置くとばっちり。I think that is true. これは、I think that that is true. の1個目の that の省略。
I think that is true. の that が前に行って〔倒置〕となったと考えるより、that is true の that と is の間に I think が〔割り込んだ〕と考える方が分かりやすい。話し言葉では、I think は、〔文末〕に来ることもある。
「はい、それは本当だと思います」
You know your native language, I said, and therefore you must be able to tell what you feel about this.
「君は知っている/母国語を。そして、それゆえに/君は言えるに違いない/何を感じているかを/これについて」
must be able to は「できなければならない」の方がふさわしいのだろうか。「できるに違いない」の方がしっくりくるような……。
feel what で「何を感じる(か)」。
this は、your native language だと思った。その後で、temperance の可能性はないのか、という疑問が浮かんだ。きっともう少し会話が進んだら、「同じように節制についても分かるはずだ」ときてくれるものと楽観していたが、何もなしに「さあ、節制について言ってくれ」ときた。temperance の可能性が棄てきれない。というよりその可能性が高まってしまった。
「母国語を知っているから母国語について語れる」のではなく「母国語を知っているから、その手段を使って節制を語ることができる」という意味なのか。そういえば、ギリシャ語を話さない民族との交流もあったし、バルバロイ(聞き苦しい言葉を話す人)という表現も世界史で習った。アテネにいるものすべてが、アッティカ地方(アテネのある地域)の言語を話すということはないのかもしれない。んー、迷ったが、後者にする。
「君は母国語を知っているのだから、節制について何を感じるか言うことができるはずだ」
Certainly, he said.
「確かに」
ソクラテス:
それでは君に質問をすることから始めた方がいいだろう。というのは、もし節制が君の体内に宿っていれば、君は節制について意見を持っているに違いない。
節制の徳自身が、その性質や特性について何かしら示唆を与えるはずだ。そうすれば、君は節制について意見を述べられるだろう。そうは思わないかい。
カルミデス:
はい、そうだと思います。
ソクラテス:
君は母国語を知っているから、節制について、どう思うか言えるに違いないからね。
カルミデス:
ええ、確かに。