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5月3日〜

5月1日〜5月2日

西安

5月1日 曇り

今日はやっと西安から抜け出せる。荷物をホテルに預けて、街に出た。ウィンドウショッピングと食事。昨日買ったマラドーナのTシャツを、サッカー好きの友達にも買っていこうと思ったが、あいにく売切れだった。サッカーワールドカップのTシャツで我慢してもらおう。それを1着。ベルトも買った。

昨日見つけることができなかったシャブシャブの店「清雅斉」を見つける。しかし、結婚式の披露宴で貸し切りらしく、食事できずじまい。とことん嫌われたものだ。

羊肉の餃子店に入る。ここ西安は、回教(イスラム教)徒が多いので、羊肉店が多い。前回、餃子を食べたときに、やや物足りなかったので、今回は、2人で3元(120円)分頼んだ。とても食べ切れなかった。水餃子であった。羊の肉は、思ったほどクセがなく、食べやすかった。

今日は、街に人があふれている。「五一」という休日なのだ。労働者の日、メーデーだ。忘れてはいけない、ここは社会主義の国、共産党が統治する国なのだ。

ホテルに荷物を取りに戻る。少々時間があるので、本館の方のロビーで休んでいると、無線を持ったSPのような人がいる。従業員もネクタイを締めなおし、玄関の外に出て並んでいる。PRESSと書かれたバスが止まっていたり、テレビカメラを抱えた白人がいた。どこかの国の要人が来ているのかと思ったが、結局、どこかの国の報道取材班が、大勢で来ていて、帰るところだった。並んだホテル従業員が拍手で送り出していた。

ソファでウトウトしてから、バスでCAAC(中国民航)のオフィスまで。混んだバスを2つ見送ったら、空いていた。CAACのオフィスから、CAACのバスで空港まで。しっかりとバス代は取られた。空港はそれほど立派ではなかった。日本人のツアー客たちが、ホテルへ向かうバスが到着するのを待っていた。

私は今日、初めて空を飛んだ。海外も初めてで、中国には船で入ったので、飛行機に乗ったことがなかったのだ。“Y7”という名のプロペラ機だ。30人も乗れば満席の小さい飛行機で、音もうるさかった。急に下がったりして、ジェットコースターに乗っている気分。2時間弱であったが、ちゃんとジュースもお菓子も出た。

D07 地球の歩き方 西安・敦煌・ウルムチ シルクロードと中国西北部 2009~2010

成都

成都(Chengdu)到着は、夜になった。大通りは、街灯がきれいに並んでおり、驚くことに、車はヘッドライトを点けずに、車幅灯だけで走っている。対向車を認識すると、パッシングをする。バッテリーの消耗を気にしているのだろうか。事故が多いとも聞いていないので、これでいいんだろう。

成都は、四川料理で知られている四川盆地にある。四川は「天府の国」と呼ばれる豊かな地方で、お米もたくさんとれる。古くから錦織りも盛んで、成都は、「錦城(Jincheng)」「錦官城(Jinguancheng)」と呼ばれることもある。また、後蜀の王が、成都城内に芙蓉の花を植えさせたことにより、「芙城(Fucheng)」「芙蓉城(Furongcheng)」という別名もある。そんな成都も、大きなビルの建設ラッシュのようだ。

錦江賓館(Jinjiang binguan)は立派なホテルだ。道路から数十段の階段を上り、ロービーに入るのだが、階段のところで、日本語で「泊まるのか」とたずねられた。「そうだ」と答えると、「わかりました。ついて来てください」と言われた。ロビーは豪華過ぎて、気後れがした。外国人観光客でいっぱいである。フロントには行かず、客室の方へ連れて行かれた。結局ホテル内に事務所を構えるCITS(中国国際旅行社)で宿泊手続きをさせられた。2泊分で1人132元(約5300円)。結構な値段である。直接フロントで交渉した方が、安かったか。

ロビーに溢れかえる宿泊客を見ると、成都を脱出する切符が手に入るのか、少々不安になる。


春の宵(よい) 英雄眠る 芙蓉城(ふようじょう)

5月2日 曇り

「四川省は山だらけだ」と地図を見て思っていたが、その省都の成都からは、遠くに、低くかすんだ山が見えるだけだ。中国の広さは、並大抵ではない。

街に出る。女性のスカート姿が格段に目につく。上海などは、3日いて5人も見ていない。どちらが流行の先を走っているのだろうか。観光ガイドブックに、「成都の人々はキップが良くて、喧嘩っ早い」と書かれていたが、そういわれると、「しゃきしゃき」というか「きびきび」というか、元気が良さそう。歩道で本を売る人や、服をつるして並べている人たちが、大声を張り上げている。私たちも地図を買った。

成都の市街地は、展覧館という建物や体育場を中心に、東西南北に広がっている。私たちのホテルは、そのやや南にある。火車北站(これが通常成都火車駅といわれている)は、市街地の北のはずれにある。もちろん、そこまで切符を買いに行く覚悟はあったが、ホテルから歩いていける場所に、火車售票処(4月25日のところで書いた「火車票預售処」と同じ)がある。西安では断られたが、ダメモトで行ってみる。昆明(Kunming)行きの硬座の切符が、あっさり買えて、拍子抜けした。しかも、ローカルプライス(中国人民価格)で。丸一日乗車で、21.7元(約800円)である。

西安のときのように、満席ばかりで、何日か足止めされることは覚悟していた。まさか、明日の列車の切符が買えるなんて、思ってもいなかった。急きょ、ほぼ半日で市内観光をすることに決め、バスに乗り込んだ。

市街の南西、中心部からもそう遠くないところに、武候祠(Wuhouci)がある。三国時代に成都を都とした蜀(Shu)の劉備玄徳(LiuBei Xuande)と、その軍師諸葛亮孔明(ZhugeLiang Kongming)が祭られている。

中学生のとき、伯父が吉川英治の『三国志演義』文庫本、全8冊を買ってくれた。登場人物の多さにびっくりした。とてもじゃないが把握しきれなかった。はじめは、そんなに面白いと思わずに、我慢して読んでいた。途中から、劉備や関羽・張飛の活躍を心待ちにするようになっていた。他の登場人物たちの話しも並行してすすめられるので、じらされるのだ。しかし、この物語、「脾肉を嘆」じたり「白眉」が登場したり、「三顧の礼」で「水魚の交わり」があったり、「泣いて馬謖(ばしょく)を斬っ」たり、おしまいには、「死せる孔明、生ける仲達をはしら」せるのだ。途中「関羽のばか!」「愚か者の張飛め!」と心の中で叫んでいた。劉備の時には、あきれてしまった。愛すべき敗者たちであった。「絶望は愚か者の結論である」とラジオの人生相談で言っていたが、あの状況で、孔明は、絶望しなかったのだろうか。最後まで努力し続ける姿に、いい知れぬ感動が走った。最後の1冊は、涙なしでは読めなかった。

『三国志演義』を読んでない人は、上の段落の内容は、チンプンカンプンだと思うが、私が、武候祠に思い入れがあることは、感じてもらえたと思う。そんな思い入れがあるにもかかわらず、特に感想はないのだ。強いてあげると、玄徳の墓は、小さな丘になっていた。今まで見てきたきちんとした墓とは違い、草木が雑然と茂っていて、さみしかった。

成都市は甲府市と姉妹都市なのだそうだ。確かに・・・、言われてみれば・・・。

杜甫草堂(DuFucaotang)は、武候祠のやや北西、成都市街の西のはずれにある。唐の時代の詩人杜甫(Du Fu)が、安史の乱を逃れて移り住んだところである。かなり立派で、竹林に趣が感じられる。広いのだが、あとの時代になって拡張工事を数度やったからだそうだ。漢文の授業で出てきた「国敗れて山河あり、城春にして草木深し、・・・」という、おなじみの漢詩のしおりも売られていた。この敷地内にも、写真屋と本屋・みやげ物屋・お菓子屋があった。

杜甫草堂入り口看板 杜甫草堂の入り口
看板を指差す人は、隣で写真をとっていた人のモデル

門前のバスが止まる通りの両側には、屋台が並び、トカゲの干したのやら薬草とおぼしきものなどをつるしている。そういえば、このようにして売られていた動物の骨に、文字のようなものが刻まれていたのを、偶然見つけたことが、殷王朝の遺跡発見につながったのだった。確か、そんな話しだったと思う。

バスを2路線乗り継いで、王建墓(WangJianmu)へ。杜甫草堂のやや北東、成都の中心より少し北西の市街地にある。王建(Wang Jian)は、五代十国の時代に、成都を都として前蜀(Qianshu)をつくった王だ。この人も人望が厚かったということだ。

15mほどの高さに形を整えて盛られた墓で、長さ25mほどの墓室におりて行ける。立派な墓だ。それより、この墓を中心にして庭園となっているのだが、この庭内の木陰の椅子に座り、本とノートを広げ、熱心に勉強している若者の姿が目についた。1人や2人ではない。中国の一般家庭の家は狭く、勉強する場を求めてきているようなのだ。10億以上の国民が、みんなやる気を出したら、日本の経済力も危うくなるのでは・・・。共に栄えることができれば、一番いいのだが・・・。眠れる獅子でいてくれた方が・・・。

行き帰りに使った公共汽車(バス)は、他の都市に比べ空いていて、たまたま行き帰りとも、同じ車掌さんに当たったのだが、このお姉さんは、親切で好感が持てた。

明日は午後から丸1日かかって、昆明へ行かなければならない。硬座なので、眠れるかどうか。今晩は、ゆっくり休んでおこう。

倦 夜 Juan Ye杜 甫 Du Fu
竹涼侵臥内Zhu liang qin wo nei.
野月満庭隅Ye yue man ting yu.
重露成涓滴Zhong lu cheng juan di.
稀星乍有無Xi xing zha you wu.
暗飛蛍自照An fei ying zi zhao.
水宿鳥相呼Shui su niao xiang hu.
万事干戈裏Wan shi gan ge li.
空悲清夜徂Kong bei qing ye cu.
竹林の涼しい風が寝室の中まで入ってきた。
野原の上空に浮かんでいる月は、庭をくまなく照らしている。
葉の上の露がいくつかまとまって、しずくとなり地面に落ちる。
星はまばらに、またたいている。
暗闇を飛ぶ蛍は、自分で自分を照らしている。
水辺に宿る鳥は、互いに呼び合って鳴いている。
これら自然の営みは、戦乱のさなかでも変わらず行われている。
この清らかな夜が、無駄に過ぎていくのが、どうしようもなく悲しい。

成都の補足

三国志演義の書籍(本)

私が中学のとき、すでに三国志演義のコミック本が出版され始めていて、友達も何巻か持っていた。チラッと見せてもらったが、絵で見てしまうと、頭で描いていたものがそちらに修正されてしまう。中学生ながら、これはいけないと思って、借りて読んだりはしなかった。読解力は、こうしてついていくもんだと思う。安易に、絵に頼るのは想像力を減退させる。

というわけで、やはり吉川英治先生の『三国志演義』をどうぞ。日記中にも述べたが、1巻目は我慢が必要。

最近では、宮城谷昌光先生が『三国志』を書き始めている。2004年の12月の段階で、3巻まで出ている。

気分爽快『反三国志』

『三国志演義』は、やっぱり最期は悲しい。「滅びの美学」がきれいに描かれている。これはこれでいいんだが、スカッと気分爽快。劉備ファンや孔明ファンも大満足。そんなエンディングもあっていい。

実はそんな本があるのだ。周大荒先生著・渡辺精一先生訳の『反三国志』。『三国志演義』を読んで悲しい思いをした方は、『反三国志』を読んで溜飲(りゅういん)を下(さ)げてくれ。ちょっとでき過ぎの感があるが、ストレスが吹き飛ぶ爽快感が得られる。もちろん、『三国志演義』を読んでないとダメ。

文庫本は『上・下』2巻で千五百円くらい。でも、ハードカバーの1巻物をすすめる。値段は二千七百円を越えるが、家で読むなら読みやすい。中古本の紹介もあるので、クリックして、アマゾンを訪問してみてください。

D01 地球の歩き方 中国 2012〜2013

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