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第41号 have to と must の違い

 Subject: 英語の文法と語法 041
    Date: Fri, 26 Jan 2007 06:50:00 +0900 (JST)
    From: Chick Tack
      To: Readers

=━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ English Grammar and Usage ━━━
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┛┛   英 語 の 文 法 と 語 法    No.041    20060126
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             ● 第 41 号 ●

………………
 Contents  (1)have to と must −2  〜 過去と未来 〜

       (2)ill と sick

       (3)be characteristic of...

       (4)a good reason 再び
          〜 再び三木さんにメールをいただいて 〜

       (5)第40号リンクURL訂正


………………………………………………………………………………………………
(1)have to と must−2
…………………………………

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
    「……しなければならない」「……する必要がある」
     ・must...
     ・have to...; (三人称単数現在形)has to...
     ・(過去形)had to...
     ・(未来形) will have to...
    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

  (a) There was nobody to help me.  I had to do everything by myself.
    「私を手伝ってくれる人は誰もいなかった。私はすべてのことを、一人
     でやらなければいけなかった」
   (“English Grammar in Use 3rd Edition”by Raymond Murphy P63
     Unit 31 Exercises 31.1.10)
     http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#egu

   =.... (×)I must do everything by myself.

  must には〔過去形〕はない。「……しなければならなかった」という過去
 の表現は、“had to...”を使う。(×)の文では〔現在〕と取られてしまう。


  (b) Julia wears glasses.  She has had to wear glasses since she was 
   very young.
    「ジュリアは眼鏡をかけている。彼女は、かなり若い頃からずっと眼鏡
     をかけなければならなかった。今もそうだ」
   (“English Grammar in Use 3rd Edition”by Raymond Murphy P63
     Unit 31 Exercises 31.3.7)
     http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#egu

   =.... (×)She has must wear glasses since she was very young.

  〔現在完了〕の〔継続〕の使い方。must は過去分詞にはなれないので、 
 (×)文はない。

  (b)の have to を使っている方の文は、
  She has to wear glasses.「彼女は眼鏡をかけなければいけない」の現在形
 に、完了形の has を割り込ませ、文中の has (to) が過去分詞 had (to)に変
 わったもの。

   She has(←割り込み)( hasが過去分詞に→)had to wear glasses.


  (c) She must have worn glasses.「彼女は眼鏡をかけていたに違いない」

  “must have 過去分詞”とすると、「ずっと……し続けなければならない」
 ではなく、「……し(てい)たに違いない」と〔推量〕になってしまう。
  弊誌37号の(1)の後半で紹介済み。
  http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/031-040/egu037.html#1


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  (d) When you leave school, you'll have to find a job.
    「学校を退学したら、君は仕事を見つけなければならなくなるだろう」
   (“Practical English Usage 3rd Edition”by Michael Swan P337)
     http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#peu

  leave school は「卒業」ともとれるが、「退学」と解釈した。

  “will have to”で、〔未来〕の〔義務〕〔必要〕を表す。
 (×)will must と〔助動詞〕が続くことは認められない。


  (e) I have to get up early tomorrow.  I have lots to do.
    I must get up early tomorrow.  I have lots to do.
    「私は明日早く起きなければならない。やることがたくさんある」
   (“English Grammar in Use 3rd Edition”by Raymond Murphy P63
     Unit 31 Exercises 31.3.6)
     http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#egu

  tomorrow とあるので、〔未来〕のことなのだが、練習問題の解答として上
 記2例(e)が示されていた。これはもう、「早く寝なければいけない」などの
 状況が現在あって、もう未来ではなく現在のことと感じられているからではな
 いか。それとも「確定した未来」というものであろうか。


………………………………………………………………………………………………
(2)ill と sick
………………………

  (a) I'm looking after my ill mother.(一般的ではない)
    I'm looking after my sick mother.(一般的)
     「私は病気の母の世話をしている」
    (“Practical English Usage 3rd Edition”by Michael Swan
      266 ill and sick の例文)
     http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#peu

  sick→mother「病気の母親」のように、〔形容詞〕がどのような〔名詞〕な
 のかを説明しているような状況を、「限定・修飾している」という。このよう
 な形容詞の使い方を〔限定用法〕と呼んでいる。


  「病気の」という意味の ill は、〔限定用法〕には、好んで使われない。
 通常、動詞のあとに置いて使われる。〔補語〕として使われるのだ。この使い
 方を〔叙述用法〕と呼んでいる。

  (b) They have been ill with the flu.
     「彼らはインフルエンザで、ずっと臥(ふ)せっている」
 (“The American Heritage Children's Dictionary”Houghton Mifflin
   ill-1)http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/books/dicchild.html#heri

  (c) I was feeling ill that day and decided to stay at home.
      「私はその日、気分が悪かった。それで、家にいることにした」
     (“Longman Dictionary of Contemporary English”形容詞ill-1)
       http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#ldce

  (b)(c)は、〔主格補語〕の例。どちらも sick と置き換え可能。特にアメリ
 カ英語では ill はかたい表現となる。


  (d) All these diets are making you ill.
    「これらのダイエットは、すべてあなたの健康を害している」
     (“Longman Dictionary of Contemporary English”形容詞ill-1)
       http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#ldce

  (d)は、〔目的格補語〕の例。こちらもアメリカ英語では sick が普通。


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  ill が〔限定用法〕で使われる場合もある。seriously ill patient「重病
 患者」、mentally ill patient「精神病患者」などの決まり文句のような使用
 例が見られる。

  (e) Mentally ill patients have the same rights as anyone else.
     「精神病患者たちは、他の人と同じ権利を有している」
  (“Longman Dictionary of Contemporary English”ill の Extra    
    dictionary examples 中の例文)
    http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#ldce


    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
    「病気の」
      イギリス英語・叙述用法 → ill(unwellも使われる)
      イギリス英語・限定用法 → sick
      アメリカ英語・叙述用法 → sick(正式では ill も)
      アメリカ英語・限定用法 → sick
    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

  5世紀半ば以降、大陸のアングル人やサクソン人が、ブリテン島の南部・中
 部に住み着き、古い時期の英語を使っていた。8世紀の終わりごろからは、ヴ
 ァイキングと呼ばれる北欧系のゲルマン人たちがやって来た。

  現在の sick は、アングル人やサクソン人たちが使っていた言葉の系統で、
 ill は、北欧系の人たちが使っていた言葉の系列だという。
  (『講談英語の歴史』渡部昇一著 PHP新書 P85)
   http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#kodan


………………………………………………………………………………………………
(3)be characteristic of...
………………………………………

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
    ・be characteristic of...「…に特有である」
                 「…に特徴的である」
    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

  (a) Basking is highly characteristic of arctic insects.
    「日向ぼっこは、北極地方の昆虫たちのきわめて特徴的な行動である」
  (“Longman Dictionary of Contemporary English”characteristic   
    Example bank)
    http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#ldce

  「北極地方の」は、大文字で始める Arctic の方が一般的かもしれない。

  (b) Precise description is characteristic of this novelist.
    「精密な描写は、この小説家に独特のものだ」
    (『ジーニアス英和大辞典初版』大修館 characteristic 形容詞欄)


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  “It is characteristic of 人 to不定詞”“It is characteristic that 
 節”の形が可能である。

  (c) It was characteristic of him to come up with a brilliant    
   solution.
   =It was characteristic that he came up with a brilliant solution.
   「すばらしい解決案を出したのは、いかにも彼らしかった」
    (『スコットフォーズマン英和辞典』角川書店 characteristicの項)


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  characteristic は〔名詞〕の使い方もある。「特性」「特色」。

  (d) Email has characteristics of telephone and paper communication.
   「Eメールは電話と文書によるコミュニケーション両者の特徴を兼ね備え
    ている」
    (『ジーニアス英和辞典第3・4版』大修館 characteristicの名詞欄)
      http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#gej


………………………………………………………………………………………………
(4)a good reason 再び
…………………………………

  弊誌40号の(4)の記事について、再び三木さんからお便りをいただいた。
 40号の記事内容を一部削除して紹介させていただく。記事全文は下記をご訪
 問ください。
  http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/031-040/egu040.html#4


 ======三木さんからのお便り(記事の引用部分削除)===================

 >>   『ジーニアス英和辞典第4版』大修館 では、reason の項に、
 >>
 >>   We have good reason to believe [for believing] that he was
 >>  murdered.
 >>   《正式》彼が殺害されたと信じる十分な根拠がある
 >>    http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#gej
 >>
 >>   という例文があり、***a はついていない。

 > おっしゃるように、ジーニアス英和辞典第4版のreasonの項の例文には
 > 「aはついていません」。

 > ジーニアス英和辞典のreasonの項をご覧になれば、お分かりのように、
 > 上記のaが付いていない例文は、「理由」という意味のcountableの項
 > に入っていますね。
 > 「理由」という意味では、本来はcountable nounであるわけです。
 > では、なぜaが付いていないかという、説明が与えられていませんが、
 >  この件について、
 > Practical English Usage by Michael Swan (Oxford) New Editionの
 > Countable and Countable Nounsの5 mixed usesの項は、下記のように
 >  説明しています。 

 > Some countable abstract nouns can be used uncountably after
 > little, much and other determiners.  Common examples are
  > difference, point, reason, idea, change, difficulty, chance and   
 > question.

 ===================================三木さんのメール終わり===========


  私の返信は省略する。以下、その後調べ直した記事。

  ジーニアス英和辞典第4版の reason の項は、〔名詞〕の意味として、3つ
 に分けている。

  1.理由・・・物事の成立の筋道〔可算名詞(数えられる)〕
  2.理性・・・筋道立てて考える力〔不可算名詞(数えられない)〕
  3.道理・・・人として行うべき正しい筋道〔不可算名詞〕


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  私は、前号の記事で、1の欄から、

  We have good reason to believe [for believing] that he was murdered.

  を引用した。

  1は〔可算名詞〕なので、a good reason とならなければ、おかしいはずだ。
 三木さんが、この説明のために紹介しているのが、お便りの最後の部分の英文
 説明だ。つたない解釈だが、内容を読み取ってみる。

  可算の〔抽象名詞〕の中には、little, much などの〔決定詞(限定詞)〕
 の後で、〔不可算名詞〕として使うことができるものがある。よく見かけるも
 のとして、difference, point, reason, idea, change, difficulty, chance,
 question がある。

  この内容に従えば、「理由」の意味の reason は、数えられる名詞。
  a reason などと使うべきだが、reason の前に good「十分な」「たっぷりの」
 がつくと、数えられない名詞として使うことができる。したがって a が取れ
 て、good reason となる。


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  39号で紹介し、三木さんの指摘を受け、40号で訂正した例文

  (a) You have a good reason to do it.
         「あなたがそうするのも、もっともだ」

  (b) He has a good reason to say so.
         「彼がそう言うのも、もっともだ」

  は、ジーニアス英和辞典の訳語3の「道理」〔不可算名詞〕のようだ。こち
 らは、先ほどと逆である。

  reason が〔不可算名詞〕なので、good がなければ、(a)(b)はそれぞれ、

  (a)' You have reason to do it. (b)' He has reason to say so.

  と〔無冠詞〕の状態になるはずだが、ある種の〔不可算名詞〕、特に人間の
 感情や精神活動についての名詞に、修飾語などがつき、限定した意味を出すと
 きに a, an をつけることがよくある。

  こんな内容が、先ほど出てきた参考書“Practical English Usage 3rd     
 Edition”by Michael Swan の countable and uncountable nouns (2):
 advanced points 4 a/an with uncountable nouns の項に記載されていた。
   http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#peu

  (c) I need a good sleep.「私には充分な睡眠が必要だ」
    (“Practical English Usage 3rd Edition”by Michael Swan)

  『徹底例解ロイヤル英文法』旺文社の第3章冠詞第1節「冠詞の種類と用法」
 §75.不定冠詞の特別用法 3〈不定冠詞+抽象名詞・物質名詞〉(1)にも、
  「不定冠詞が不可算名詞である抽象名詞について、行為・実例などを示す。
 普通は無冠詞の語も、修飾語がつくと冠詞をつけることがある」という記述が
 あり、下記の例文などがあった。

  (d) He was inspired with a new courage.「彼は新たな勇気を得た」
   (『徹底例解ロイヤル英文法』旺文社の上記の箇所より)
   http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#royal

  三木さんのおっしゃりたかったことは、この決まりなのだと思う。これにし
 たがって、reason 単独ならば無冠詞で、good で修飾すれば、a がつき、   
 a good reason となる。

  読者の方には、何度も見当違いの例文や解説を押し付けて、申し訳ない。


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  さて、(a)(b) の例文が、ジーニアス英和辞典の1の訳語ではなく、3の訳
 語(?)にあたるという説明についてだが、LONGMAN辞書などの学習者向けの
 英英辞典等の語義にもあたりたいので、もう少し検討する時間をいただきたい。

  賢明な読者諸氏におかれては、それを待つ必要はないと思うが……。

  何となく3だな。と終わってもかまわないのですが、私の勉強のため、ある
 程度はやりたいのです。この欄を読んでいると、英語の学習が嫌になると言う
 方は、ここは飛ばして読んでください。最後に書いても遅いか。


………………………………………………………………………………………………
(5)第40号リンクURL訂正
……………………………………

  第40号の(2)の最初に出てくるリンクURLと、最後の例文(i)の出典のリ
 ンクURLに同一の間違いがありました。お詫びして訂正いたします。

  どちらも
  “Longman Dictionary of Common Errors”by N D Turton & J B Heaton
  の書籍紹介へのリンクを記した箇所です。


  誤:http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#ldce

  正:http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#dce


  ご迷惑をおかけしました。


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 参考文献  http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html
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● あとがき

  本文中にもたびたび登場していますが、大修館の『ジーニアス英和辞典』に
 第4版が出ました。昨年の12月のことです。

  今までで最大の改訂だということです。発音表記等も変更されています。

  事情が許せば、ご入手なされることを推薦いたします。電子辞書は便利です
 が、紙の辞書もいいもんですよ。
  http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#gej

  お便りをいただく三木さんも、ジーニアスの辞書群の編集に係わっていらっ
 しゃいます。


・・・‥‥……──────────────────────……‥‥・・・
        (c) Matsumiya Institute of Thinking 2007
・・・‥‥……──────────────────────……‥‥・・・

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