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第121号 動詞を名詞として働かせたい


=━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ English Grammar and Usage ━━━
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┛┛   英語の文法と語法    No.121    20090410  Chick Tack
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             ● 第121号 ●

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 Contents      動詞を名詞として働かせたい
………………
       (1)to不定詞と動名詞

       (2)動詞(句)を主語にしたい

       (3)動詞(句)を補語にしたい

       (4)動詞(句)を他動詞の目的語にしたい

       (5)動詞(句)を前置詞の目的語にしたい


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(1)to不定詞と動名詞
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  英語の主語・目的語は、基本的に名詞が担う役割である。名詞は、前置詞の
  目的語としても働く。補語については、形容詞もその役割を果たすが、名詞
  が担当する場合もある。

  〔動詞〕または〔動詞に導かれる句(以後、動詞句)〕を、主語・目的語と
  して使うためには、その部分が「名詞になっているよ」ということを伝える
  とわかりやすい。

  動詞・動詞句を〔名詞〕として働かせるには、使いたい動詞を変形させてや
  ればよい。2つの変形がある。〔to不定詞〕と〔動名詞〕である。

  例えば、go ならば、to go と to不定詞にするか、going と動名詞にしてや
  るのである。

  名詞句として働いていると思われる〔to不定詞〕と〔動名詞〕(に導かれる
  句)の役割をみてみる。


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(2)動詞(句)を主語にしたい
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    ・to不定詞(に導かれる句)を主語とする時、
            It〜(for―)to.... の構文がよく使われる
    ・動名詞(に導かれる句)を主語とする時、決まった表現の
           他は形式主語 it を使うのは一般的ではない
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 (a) To turn back now would be a mistake.
   「今戻ることは間違いでしょう」
  (『ケンブリッジ現代英語文法入門』Rodney Huddleston, Geoffrey K.  
    Pullum著 高橋邦年監訳)
    http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#sieg

  to turn back now「今戻ること」が〔主語〕(の句)になっている。強(し)
  いて言えば、to は「こと」に当たる。ただし to不定詞には、名詞として働
  く他に、形容詞や副詞としても働くので、いつも to が「こと」を表すわけ
  ではない。

 (b) It would be a mistake to turn back now.
   (日本語訳も引用先も(a)と同じ)

  〔to不定詞〕を〔主語〕とする場合、(a)のような並べ方よりも、(b)のよう
  な並べ方の方がよく使われる。

  it は〔形式主語〕と呼ばれるもので、形式上主語の位置に置かれる。特に
  日本語に当たる訳語はない。本当の主語(真主語と呼ばれることも)は、文
  の最後に回される。“It〜to...”の構文と呼ばれるものだ。

  解釈の一方法として、「それは間違いでしょう。それとは今戻ることだよ」
  と指導する人もいる。


 (c) Smoking is bad for you.
  (“Practical English Usage 3rd Edition”Michael Swan, 295.1)
    http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#peu
    「たばこを吸うことは、あなたにとって悪い」
    「たばこを吸うと、あなたに害が及ぶ」

  動名詞 smoking が「たばこを吸うこと」という意味の〔主語〕になってい 
  る。

 (d) Smoking cigarettes is bad for you.
  (“Practical English Usage 3rd Edition”Michael Swan, 295.2)
    http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#peu
    「たばこを吸うことは、あなたのために悪い」
    「たばこを吸うと、あなたに害が及ぶ」

  〔動名詞〕や〔to不定詞〕(に導かれる句)は、三人称単数扱いである。
  cigarettes という複数形の後なのに is が使われていることに注目してほ
  しい。この主語を作る句の中心が cigarettes ではなく smoking であるこ
  とがわかる。

  〔to不定詞〕と違い、〔動名詞〕が、形式主語 it を要求することは少ない。

 (e) It's useless trying to talk to you when you've had a drink.
  (“LONGMAN Dictionary of Contemporary English 4th edition”)
   http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/books/english01.html#ldoce
   「あなたがお酒を飲んで酔っ払っているときに、あなたに話しかけること
    を試みることは無益です」
   「あなたがお酒を飲んでいる時に、あなたと話しをしようとしても無駄ね」

  補語の部分が、no use, useless, no good, foolish, nuisance, annoying
  irritating などの否定的な内容のものか、exciting, dull, wonderful
  easy, fun などの強い感情的表現を含むものに限られるので、決まり文句以
  外はあまり用いない方が良い(『改訂版英文法総覧』32.1.4)、とある。
   http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#betterguide

  no use -ing と no good -ing は、もっと後で取り上げるつもりだ。


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(3)動詞(句)を補語にしたい
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    ・to不定詞・・・動詞的で未来指向
    ・動名詞・・・名詞的で繰り返し行われることや過去の動作
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 (a) Our plan is to climb the mountain tomorrow morning.
   「私たちの計画は、明朝その山に登ることです」
  (桐原書店『総合英語 Forest 4thEdition』石黒昭博監修, 7.2.1.2)
   http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#forest

  be動詞 is の〔補語〕として to climb the mountain tomorrow morning
  が働いている。主語である our plan の内容を示している。

  「こと」と訳してある通り、この to不定詞に導かれる句は〔名詞句〕とし
  て仕事をしている。

 (b) His favorite is climbing hills.「彼が大好きなのは山登りです」
   (安井稔著『英文法総覧(改訂版)』開拓社, 19.1.2)
    http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#betterguide

  こちらは〔動名詞〕に導かれる句が〔名詞句〕となっている。「丘を登るこ
  と」が名詞句の部分の逐語訳。


  to不定詞と動名詞には、意味の違いがあるのか。

  多くの参考書が指摘しているのは、to不定詞は〔動詞的〕で、動名詞は〔名
  詞的〕な性格が強い、ということ。

  これについて、大修館『英語感覚が身につく実践的指導 コアとチャンクの
  活用法』(田中茂範他著)は、よく知られたことわざを使い説明している。
      http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#cc

 (c) To see is to believe.「見てごらん、信じることになるから」
 (d) Seeing is believing.「見ること、すなわち信じること」
   (上記『コアとチャンク』)

  (c)は、「見て」→「信じる」と、手続き的な感覚があり、動作をして次の
  動作と〔動詞的〕。(d)は現実の動作をはなれ、概念化がなされている。


  また、複数の参考書を読むと、to不定詞は〔未来指向的〕で、動名詞は〔繰
  り返し行われること〕や〔過去〕の行動について使われる傾向があるという。

  そう考えて(a)(b)を見ると、納得できる。

  どのような場合でも、上記の使い分けがきっちりとなされているわけではな
  いが、考える材料として紹介した。編集人自身、著者の意図を十分理解して
  いるとは言い難いので。


  話の流れに乗らなかったので最後になったが、(c)(d)どちらの英文も「百聞
  (ひゃくぶん)は一見(いっけん)に如(し)かず」と訳されていることが
  多い。


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 (e) She was to be here at 8.30 but she didn't arrive.
  (“Oxford ADVANCED LEARNER'S Dictionary 7th edition”to)
   http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/books/english01.html#oald
   「彼女は8時半に、ここに来ることになっていた。でも来なかった」

  be動詞の後ろに to不定詞が続き、〔予定〕〔義務〕〔命令〕〔可能〕〔運
  命〕〔意図〕を表すことがある。この to不定詞も〔補語〕であるが、名詞
  になっているというよりは〔形容詞〕の性格が勝っている。

  この意味を表す to不定詞の意味上の主語は、be動詞(ここでは was)の主 
  語と一致する。

  〔予定〕〔義務〕……のそれぞれの意味を表す例文を、後日紹介したい。


 (f) She is studying in her room.「彼女は自分の部屋で勉強中です」

  be動詞の後ろに“動詞ing”形が続いているが、〔進行形〕と呼ばれるもの
  で、やはり〔形容詞〕的な働きをしている。もちろん「彼女は自分の部屋で
  勉強をすることです」とは訳せない。

  進行形については、創刊号からのシリーズがあるので、そちらをご覧くださ
  い。http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/001-010/egu001.html#1


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(4)動詞(句)を目的語にしたい
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 (a) Liz wants to see the circus.
  (“Macmillan English Dictionary: For Advanced Learners of American 
    English”Palgrave Macmillan)
   「リズは、そのサーカスを観ることを欲している」
   →「リズはそのサーカスを観たがっている」

  「何を」欲しいのか。「何を」「何が」の部分に動詞(句)を持ってきたい。
  その場合に〔to不定詞〕を選ぶことがある。

  Liz wants a pen. という英文を見てほしい。 a pen という〔名詞(句)〕
  は、wants の〔目的語〕として機能している。その a pen の代わりに to 
  see the circus を置いているのが(a)である。to see the circus は〔名詞
  句〕と呼べる。

  (a)の意味では wants seeing the circus と動名詞を使うことはできない。


 (b) Have you finished reading that magazine?
  (“Cambridge Advanced Learner's Dictionary 2nd edition”)
   「あなたは、その雑誌を読み終えましたか」
   「その雑誌、もう読み終わった?」

  〔動名詞〕に導かれる句 reading that magazine が finish の〔目的語〕
  になっている例。

  finished to read と to不定詞が目的語になることはない。


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  to不定詞と動名詞は、〔動詞〕としての性格も保持していて、それ自身が持
  っている〔目的語〕や〔補語〕、修飾してくれる〔副詞〕などを従えること
  ができる。

  (a)では、to see the circus が wants の目的語として働いているが、the
  circus は (to) see の目的語である。

  (b)は、reading that magazine が have finished の目的語になっている。
  そして、that magazine は read(ing) の目的語となっている。


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  to不定詞と動名詞の両方を目的語とできる他動詞と、to不定詞のみ、動名詞
  のみを目的語とする他動詞がある。それについては、次回以降何回かに分け
  て調べてみたい。


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(5)動詞(句)を前置詞の目的語にしたい
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    ・前置詞の目的語は〔to不定詞〕ではなく〔動名詞〕
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 (a) I'm not very good at making decisions.(21c)
  (“CAMBRIDGE GRAMMAR OF ENGLISH”Ronald Carter & Michael McCarthy)
   http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#cge
   「私は決断を下すのが、あまり得意ではない」

  前置詞 at の目的語として、〔動名詞〕に導かれる句 making decisions が
  置かれている。


  〔前置詞の目的語〕は〔動名詞〕の役割である。〔to不定詞〕は使えない。
  動名詞のみが前置詞の目的語になるのは、動名詞がto不定詞よりも〔名詞的〕
  だからとする参考書がある。そうかも知れない。

  しかし、to不定詞を使うと at to make などと、前置詞のようなものが2つ
  続くので使いにくい、という事情もあるのではないかと思う。


 (b) You cannot arrest a man just for looking suspicious.
   「様子が怪しいというだけで人を逮捕することはできない」
   (江川泰一郎著『英文法解説(改訂三版)』金子書房§237-2a)
    http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#newguide

  for の目的語として looking suspicious が使われている。

  The man looks suspicious. で「その男は疑わしく見える」という意味に 
  なる。suspicious は looks の補語。


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 参考文献  http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html
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● あとがき

 歩いて行ける範囲の桜を、何か所か見てきました。

 桜並木の下を歩くのは気分がいいものです。しかし、緑の木々の中に白い雲の
 ように、桜の花の群れが浮かんでいる丘を、遠くから眺めるのも趣があります。


・・・‥‥……──────────────────────……‥‥・・・
        (c) Matsumiya Institute of Thinking 2009
・・・‥‥……──────────────────────……‥‥・・・
      

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