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第210号 冠詞−8

=━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ English Grammar and Usage ━━━
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┛┛   英語の文法と語法    No.210    20131211   Chick Tack
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             ● 第210号 ●

………………
 Contents          冠詞−8
………………
       (1)季節名

       (2)名詞+数字(番号)

       (3)make a mess of something


………………………………………………………………………………………………
(1)季節名
…………………

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
    ・季節を表す名詞 spring, summer, winter は、〔無冠詞〕で
     使われることも多いが、the を置くこともできる。
    ・特定の時を表す場合には the が使われる。
    ・アメリカ英語で使われる fall は the を伴うのが普通。
    ・イギリス英語では autumn が使われる。
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 (a)“Of course there are no violets there now,” Anne told Marilla, 
  “but Diana says there are millions of them in spring. ....”
  (“Anne of Green Gables”by Lucy Maud Montgomery)
   http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer02.html#green
   「『もちろん今は、そこにスミレはないわ。でも春になると、いっぱいの
    スミレが咲いているとダイアナが言っているの。……』と、アンはマリ
    ラに言った」

  曜日名や月名は大文字で始めることからも、〔固有名詞〕の扱いを受けてい
  ることが分かる。これらは通常〔無冠詞〕で使われる。

  季節名は、文中では小文字で始める。しかし、同じような気持が働くのか、
  特定化されない季節名は、〔無冠詞〕で使われることが多い。ただ、アメリ
  カ英語では the が付くこともよくある。

 (b1) I like winter best.  (b2) I like the winter best.
  (“Practical English Usage 3rd Edition”Michael Swan)
    http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/books/english02.html#peu
    「私は冬が一番好き」

  上掲書には「the なし、the あり、どちらも使える。意味の違いはほとんど
  ない」との内容がある。

 (c) All these people came to Gatsby's house in the summer.
  (“The Great Gatsby”by F. Scott Fitzgerald)(1925年アメリカ文学)
   http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer04.html#gatsby
   「その夏、これらの人々がみんなギャツビーの家にやってきた」

  特定の年の「夏」を指している。the が付いている。

 (d) She was calling on Miles and Bea, early in autumn.
  (“Main Street” by Sinclair Lewis)(1920年アメリカ文学)
   http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer02.html#main
   「彼女は初秋に、マイルズとビィーを訪れていた」

  こちらも特定の「秋」を指していると思われるが、the は使われていない。
  どちらかというと early に焦点があるか。

 (e) The area is beautiful in the fall.(American English)
  (“LONGMAN Dictionary of Contemporary English 4th edition”)
   http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/books/english01.html#ldoce
   「その地域[区]は、秋には美しい」
   「秋になると、その付近は美しくなる」

  特定の年の秋ではない。the が使われている。


 (f) He sends over a selection of things at the beginning of each   
  season, spring and fall.
  (“The Great Gatsby”by F. Scott Fitzgerald)(アメリカ文学)
   http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer04.html#gatsby
   「彼は、春と秋のそれぞれの季節の初めに選んだものを一揃え、はるばる
    送ってくれる」

  over はなくても事実の内容は変わらないが、「海を越えてはるばる」のよ
  うな気持が加わっていると想像できる。イギリスから合衆国のギャツビーの
  もとに、衣服を送ってくれるという内容。

  少し前の号で、TV and radio の例を紹介したが、対になるものを並べる場
  合、〔冠詞〕は付けない傾向がある。(f)の理由はそれだけとは限らない。

 (g) The rainy season and the dry season began now to appear regular  
  to me, and....
  (“Robinson Crusoe” by Daniel Defoe)(18Cイギリス文学)
   「雨季と乾季はもう、私にとって普通のことになり始めた。そして……」

  now「いま」「もう」が割り込んでいる。began to appear... と省いて考え
  ると分かる。

  season という〔名詞〕は、季節名とは違う扱いになる。季節や時期を表す
  ために使うとき、the holiday season「クリスマスと新年, 復活祭, 感謝祭
  などの休暇期」のように the が付くことが多い。

  (g)は、漂着した土地の気候に慣れてきたという内容。


………………………………………………………………………………………………
(2)名詞+数字
………………………

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
    ・“名詞+数字(番号)”で何かの事物を指すとき、
     the は使わない場合が多い。
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 (a) (○)She is in Room 98. (×)She is in the Room 98.
   「彼女は98号室にいます」
   (小西友七・南出康世編集『ジーニアス英和辞典第4版』大修館)
     http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#gej

  同じ辞書で簡易表現として Are you 501?「(ホテルで)501号室ですか」
  も出ていた。

  例文(a)では、Room と〔大文字〕で始めているので、Room 98 で準〔固有名
  詞〕とみなしているのだろう。

  本来は Room No. 98 であったが、No. が消えていったと想像される。


 (b) (airport announcement)  Flight AB123 to Rome is now boarding
   at Gate 21.(“English Grammar in Use 3rd edition”Raymond Murphy)
    http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/books/english02.html#egu
    「(空港のアナウンスで)ローマ行きAB123便は、ただ今21番ゲートか
     らご搭乗いただけます」
    ←「ローマへの飛行機AB123は、入り口21で今(乗客を)搭乗させてい
      る最中だ」

  Flight AB123 と Gate 21 には the が付いていない。

  こちらも number が消えたのだろう。ただし AB と付いた時点で、数ではな
  くなっているか。

  AB123便は実際にはないと思うが、Air Berlin の略称は AB。

  (c) We are going to start on the 11th line from the top (bottom) of  
  page 32. 「今日は32ページの上(下)から11行目から始めます」
 (d) We left off at line 10 on page 32.
  (“More English in Class”愛知県総合教育センター「高等学校教科指導の 
  充実に関する研究会(英語)」)
  http://www.apec.aichi-c.ed.jp/shoko/kyouka/more-english/index.htm
  「(前回)32ページの10行目で終わりました」

  the 11th line と line 10 の使い分けがなされている。page 32 も the
  を置いていない。

  〔大文字〕で始まっていない例。

 (d) The train for Cambridge will depart from platform 9.
 (“Cambridge Advanced Learner's Dictionary 2nd edition”)
  http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#cald
  「ケンブリッジ行きの列車は、9番プラットホームから出発します」

  “platform+数字”は P を〔大文字〕で始める例もよくある。


  “English Grammar in Use 3rd edition”Raymond Murphy では、
   http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/books/english02.html#egu
  「〜のサイズ(の)」という表現の例で ...in size 43 というのがあった。
  「the を付けるのは間違い」と解釈できる記述があったが、辞書に当たると
  〔不定冠詞〕a を付けているものが多い。

 (e) Do you have these pants in a size 12?
  (“LONGMAN Dictionary of Contemporary English 4th edition”)
   http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/books/english01.html#ldoce
   「12号のサイズのこの型のズボンはありますか」

 (f) He wears a size 12.
 (“Macmillan English Dictionary: For Advanced Learners of American 
   English”Palgrave Macmillan)
   http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#meda
   「彼は12号(の服)を着ている」

  これは「服」などの語が、12の後ろに〔省略〕されているとも考えられる。

 (g) She's a size 12 in clothes.
  (“Oxford ADVANCED LEARNER'S Dictionary 8th edition”)
  (“Oxford ADVANCED AMERICAN Dictionary: For Learners of English”)
   http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/books/english01.html#oald
   「彼女の服は12号です」←「彼女は衣服の範囲の中では12号のサイズです」

  こちらは〔省略〕とは考えにくいが。

 (h) The test wasn't too difficult, but I couldn't answer question 8.
  (“English Grammar in Use 3rd edition”Raymond Murphy)
    http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/books/english02.html#egu
    「そのテストは難し過ぎるというほどではなかった。しかし、問8は
     答えられなかった」

  “question+数字”も the を付けないことが多い。

 (i) Answer two of questions 1, 2, 3.
  「問1・2・3の中の2問を答えなさい」
  「問1〜3の中から2問を選んで答えなさい」

  数字が〔複数〕あるときは、questions になる。


………………………………………………………………………………………………
(3)make a mess of something
…………………………………………

    〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
    ・make a mess of something「何かを台無しにする」
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 (a) The scandal made a mess of his political career.
  (Merriam-Webster's English Learner's Online Dictionary)
   http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/books/onlineeed.html#mwl
   「その不祥事は、彼の政治的な経歴のめちゃくちゃな状態を作った」
   →「そのスキャンダルで、彼の政治的経歴は台無しになった」

  mess は「乱雑」「散らかった状態」「窮地」という意味の〔名詞〕。〔不
  可算名詞〕として扱われることもあるが、〔不定冠詞〕a が付くことも多い。
  「散らかっている一場面」が頭に浮かぶからだろうか。

  “make a mess of something”「何かを台無しにする」では、a がつく。

 (b) I feel I've made a real mess of my marriage.
  (“LONGMAN Dictionary of Contemporary English 4th edition”)
   http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/books/english01.html#ldoce
   「私は結婚生活を本当にめちゃくちゃにしたと感じている」
   「私の結婚は全くの失敗だ(った)と感じている」

  mess の前に〔形容詞〕が割り込んでくることもある。


 (c) You'd better keep your promise, or it'll
                 (☆)destroy your reputation.
                 (◎)ruin your reputation.
                 (○)spoil your reputation.
                 (○)mess up your reputation.
                 (×)make a mess of your reputation.
    「約束を守ったほうがいいですよ。さもないとあなたの評判はめちゃめ
     ちゃになりますよ」
    ■上に行くほど「めちゃめちゃにする」度合いが高い。
     make a mess は辞典に出ているが使われていない。
   (市橋敬三著『話すためのアメリカ口語表現辞典』研究社)
    http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html#dcasee

  見なかったことにしたかったが、見てしまったので紹介しておく。

  他にも出ていたが主なものだけ。make a mess of の表現自体が使われない
  のか、〔主語〕が人ではなく行為だから使われないのか。その辺りの事情は
  不明。

  選択肢4にあるように、mess は〔動詞〕としても働く。


  mess は「不衛生な人」や「きちんとしていない人」を指す場合もある。

 (d) After more than eight hours on a plane, I am a mess when I reach  
  my destination. 
  「飛行機に8時間以上も乗っていると、目的地に着いたとき、私はひどいあ
   りさまになっている」
  (“Journeys and destinations”by Samantha Loong)
   http://st.japantimes.co.jp/essay/?p=ey20131115
  ←「飛行機に8時間を超えて乗ったあと、私の目的地に着いたとき、私はき
    ちんとしていない状態の人である」

  The Japan Times ST のサイトのエッセイから。このページは時間が経過す
  ると消滅するかもしれない。今なら音声も聴ける。

  筆者は飛行機嫌いのようだ。長時間乗ると、髪の毛はボサボサ、服装も崩れ
  て表情もさえない状態になるのだろう。


  mess はラテン語起源の言葉のようだ。「コースの食事」や「食卓上の配置」
  というのが原義で、英語に入ったときには「1回分の食事」として使われて
  いた。「軍の食事場所」としても使われ、「猫まんま」のような「ゴチャゴ
  チャに混ぜて1つの容器で出す食事」を指すようになった。特に動物用の食
  べ物をこう呼んだ。ここから「乱雑」や「きちんとしていない」という意味
  が生まれたようだ。口語だが19世紀から「(多)量」、20世紀には「排
  泄物」を指す用法も生まれた。

  Online Etymology Dictionary(http://www.etymonline.com/index.php)
  によると、make a mess of は1909年から、mess up は1933年から。
  mess の〔名詞〕は14世紀初め、〔動詞〕は14世紀遅くになってから。


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 参考文献  http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/egu/refer.html
……………… http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/books/english01.html
       http://www5d.biglobe.ne.jp/~chick/books/english02.html


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● あとがき

 オーバー・ブッキングのため、成田から伊丹(関空はまだなかった頃)に行く
 飛行機に搭乗できなかったことがあった。航空会社が用意したホテルに向かう
 バスで、外国人にたずねられた。

 「明日代わりに乗る飛行機が NH と略称が付いているが、どこの会社だ?」

 飛行機に乗り慣れていない編集人は知らなかった。たくさんある外国の航空会
 社名も数えるほどしか知らない。NH=日本航空? いや違う。JAL とかいって
 いるから違うだろう。知っている日本の航空会社はあと全日空しかない。でも、
 ANA とか言っているよな?? N が入っているから、そうかな?

 正直に言ってみた。

 「知らない。普通私たちが A・N・A、ANA と呼んでいる日本の航空会社じ
  ゃないかと推測する。私はめったに飛行機に乗らない」

 家に帰ってから調べると、全日本空輸のコードは NH であった。今回、数十年
 ぶりに調べたら、全日空になる前は日本ヘリコプター輸送(Nippon     
 Helicopter)という名前だったらしい。なるほど、NH ね。


 ただで泊めてもらったホテルで、フロントにモーニング・コールを頼む電話を
 掛けると、“Yes, Captain.”と言われた。へ(* ̄ー ̄)> 


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 ☆ブログ 丹生川郷下村通信
 http://sobey.at.webry.info/


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        (c) Matsumiya Institute of Thinking 2013
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