あだち充19.41
“青葉ちゃん”の奇っ怪な行動(笑)に就いての2、3の補足
   ――あるいは、解けてしまった魔法の言葉――


      ――あだち充「クロス・ゲーム」第二部 第4話(第14回)Vol.2――
        (「週刊少年サンデー」'05年43号、18頁)

 心は第二次性徴を迎えていない……という回答への疑問に就いて、2、3の補足。

 “青葉”は小学校の中学年の頃には男子に混じって野球をやっていた(第1巻)。そして、中学校では、(男子の)野球部に入っている。(多分、女子は一人きりだろう。)
 当然、中学校の部活の野球部であれば、女の子扱いはされないだろう。いや、本人が、女の子扱いされる事を拒んでいるだろう。(“青葉”の性格からして。)

 だからといって、着替えも男子と一緒の訳は無いだろう。

 もしそんな事になっているなら(笑)、“(青葉ちゃんと交際する予定になっている=本人談)千田”くんのアタックも、もっと過激な物になっている事だろう(笑)。
 それはさておき、“千田”のアタックを、嫌がるとか以前の問題として、ナチュラルに拒んでいるおっ茶目ッ!“青葉ちゃん”だが、確かに、“青葉”には、まだ《異性への関心(恋より前の段階)》――いや、更に言うなら《性差への意識》(あるいは、《自分の女としての肉体への自覚》)すら芽生えて居ないかに見える。(いや、「第二部 第4話」ではそう語られている。)
 しかし、それでは、「第二部 第1話」のラストのあの「“コウ”が座っていた席の隣の席に飛び移る」行為は、何だったのだろう? “コウ”を嫌いだから? ――それでは理由にならない。何故なら、それが理由なら、「第二部 第3話」で「着替えの為に差し出された“コウ”のティーシャツ(orトレーナー)を「でかくない?」と訊いただけで身につける」行為と矛盾しているからだ。
 第二次性徴を迎えた女の子が、ある男の子の座っていた席に過敏に反応するというのは、理解できる。けれど、そうであるなら、(洗濯してあるとはいえ)その同じ男の子の服を、何の躊躇いも見せずに身に着けるだろうか?
 ましてや、そう考えれば尚の事、あのおっ茶目ッ!“青葉ちゃん”が“コウ”の前でとった奇っ怪な行動(笑)には、疑問しか感じられない。
 普通、(嫌いであろうとなかろうと)男の子の前で下着姿になって平気だろうか? ――中学二年生の女の子が。先の「中学校の部活の着替え」を持ち出すまでも無く、“青葉”の感覚(あるいは感性)とは関わりのない処で、否応無く、その問題(男の子の前で下着姿を晒すという事の意味=自宅で下着姿でウロツクのとは別問題)は、中学二年生ともなれば、“青葉”の心にインプットされている筈である。

 あの場面にシデカシタ事に気付いていなかった――以外の回答があるのだろうか?

 女の子は(いや、女の子に限った訳でも無いが)、よく、ペットの犬なんかを、一緒に風呂に入って洗ってやったりする。――何かね、“コウ”は、ペット以下の存在?(笑)。(←勿論、この設問は《冗談》だが。)
 さてさて、釈然としないままではあるが……。取り敢えず、おっ茶目ッ!“青葉ちゃん”奇っ怪な行動(笑)に就いては、暫く保留しておくしかあるまい。


 まあ、それにね――。意識もしていない相手(“千田”とか(笑))には、ナチュラルに拒んでいるおっ茶目ッ!“青葉ちゃん”が、殊更“コウ”を「大っ嫌い!」と叫ぶのは、誰が考えたって「大っ好き!」の同義語でしょう。
 そして、図らずも、今回の一件で、おっ茶目ッ!“青葉ちゃん”は、「第二部 青葉の季節(仮題)」の《ヒロイン》でしか無い事が確定したように思う。
 さて、《真のヒロイン》は、いつ、現われるのだろう。“コウ”が何やらワケありの「高等部野球部」に入部してからの事だろうが……。

 それでは、再び、もしかしたら、来週、また。

(2005.09.22)
テキスト:「週刊少年サンデー」'05年43号;2005.09.21発行;本体219円


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