安田しん二レコーディング日記
私、安田しん二のスタジオ、FAB ROCKS REC. HOUSEでの奮戦記です。
FAB ROCKS REC. HOUSEはNon DIGITALにこだわった、
ANALOG専門のレコーディング・スタジオです。

2003年10月1日水曜日
 今日からまたまた新曲の録音です(録る前にリハとかしてたら、夕方になってしまってました)。この曲は、やっぱりドンカマなどのクリック無しで録ります。リット(リタルダンド、テンポを遅くする事)なども多く、クリックなんかは無い方が断然雰囲気が出るはずです。普通、バンド演奏でツララ〜っと、一発録りしてしまうと楽なのですが、FAB ROCKS REC. HOUSEには人間が私と相棒のよすおさんの2人しかいません。
 先ず、この曲がどういう構成か説明します。最初、インディアン・フルートとアコースティック・ギター(フォーク・ギター)の2本で、数小節、キーはGmです。これはこれで、一曲と言う計算。その曲にかぶるようにして、次の曲が始まります。キーはGになります。始まりは、ガット・ギターのアルペジオから、そしてドラムスなどが一斉に出て来ます。そしてまたドラムレスのガットのアルペジオ、バンド、最後にまたドラムレスのガットのアルペジオと言う具合です。私はこのパートを順番に録音していく方法で行こうと決めました。ですから、私とよすおさんがこのベーシックで弾く楽器を全てセッティングをしておく必要があります。ですから、ドラムやペースなどの音決めも済まして置いたほうが良いのですがそれは後回しにして、先ずは、よすおさんがフォーク・ギター、私がインディアン・フルートと言う組み合わせで、Gmの曲を録りました。これは私がMTRを回しながら、2人でコンソールの前で録りました。私はテープの確認とかもあるのでヘッドフォンをして、よすおさんはヘッドフォン無しです。途中、フォーク・ギターを何回か取り換えてみました。最初はよすおさんのギルドの12弦、次によすおさんのギブソンJ−160Eで弾いてたのですが、結局、私のマーチン000−28を使う事にしました。先ずは本番テイク1でOKが出たので、今日はここで終るはずだったのですが、次のガット・ギターのアルペジオまで演る事にしました。先程のフォーク・ギターとインディアン・フルートはもう出てこないので(そのはず……今のところ)、一応これでセッティング解除しました。
 使うガット・ギターはヤマハの小さいヤツ、子供用の練習ギターです(ある楽器屋さんの閉店セールで9800円で買いました)。ですが、これが中々良い感じの音なんです。勿論、弦は何度か買えてみましたよ(オーガスチンの黒ラベルだったっけな?)。最初についてた弦はダメでした(太い方の弦を弾くと、音が飽和してしまう感じがしました)。
 さて私がアルペジオを演るつもりでいましたので、家でかなり練習して来ました。しかし、途中で間違えたりノリがよれたりしたら最初っから演り直しなので、結構大変でした………が、ま、なんとか無事終了。もしも練習して来ないでブッツケで演ったらかなり苦労したはずです。
 続きはドラムとベースですが、それは明日にします。ですが、このガット・ギターのセッティングはそのままにしておかなくてはいけません。

2003年10月2日木曜日
 今日は昨日から録り始めた新曲のドラムスとベースからレコーディングします。先ず、ドラムスとベースの音を作るのですが、いつも通り、ドラムスを私が叩いてチューニング、そしてマイクの位置を決め、それから一度よすおさんに叩いて貰い、私がテープへの入力レベル(アナログはここはポイントです)、コンプ等の調整をします。今度は私が叩いたものを試し録りし、それを聴いて再度コンプの調整、マイクの位置、時にはマイクを選び直しますが、何と言っても一番気を使うのはチューニングです。ドラムそのものが思った様な音をしてなければ良い音は録れません。マイクのセッティングはレコーディング毎に違います。でも最近はドラムの音決めに掛る時間は10〜20分程度です。昔は半日、この様なアナログ・レコーディング初心者の頃は丸一日掛けても思った様な音になりませんでしたが……。因みに今回は、スネア・ドラムをいつも使う物ではないやつ、ラディックのパイオニア(1966年製)と言うのにしてみました。
 ドラムスの音が決ったら、ベースを試し録りで録ったドラムスに合わせて弾いてもらいます。いつもそうしながら音を作って行きますが、使用ベースもこれまでよく使ってた、リッケン4001やヘフナー500−1とかではなく、フェンダー・プレシジョン・ベースを使いました。プレベもなかなか良いモンですね。
 ドラムスとベースの音が決ったので、いよいよ録音開始。くどい様ですが、ここのスタジオには私とよすおさんの2人しかいませんので、MTRのロケーターをドラム・セットの横に持ってきて、私かよすおさんのどちらかが録音ボタンを押します。前日録ったフォーク・ギター&インディアン・フルート〜ガット・ギターのアルペジオを聴いてその続きを録ります。勿論ドラムスとベースは一緒に演奏します。ドラムスとベースが入る所はノリが良いので、テンポが微妙に早くなって来ますが、それは狙い通りです。もしも完全にテンポが一定にしたい場合は、ドンカマなどのクリックを使いますが、あえてここはそれらを使わずに演奏しました。
 ドラムス&ベースの後はまたガット・ギターのアルペジオ、そしてドラムス&ベース、最後にまたまたガット・ギターを録って、これでベーシックは完了です。あとはオーヴァー・ダビングですが、2回目のガット・ギターの所に、ボリビアの楽器、ロンロコを入れてみましたら、とても雰囲気が良かったので、チャランゴ、ボンボ、チャフチャスと録ってみました。始めはガット・ギター1本にケーナと歌だけで済ませるつもりだったのですが、ま、これも「レコーディングはドキュメンタリーだぁ!」っちゅう事で……。それにしても、最初にイメージしてたものよりも良くなると嬉しいですね(あたりまえですが…)。
 しかし、なんだかやっぱり今日は疲れたなぁ〜。一日に色々な楽器を演奏すると体力も精神力も消耗しますね。
 私とよすおさんのレコーディングでの気分転換は、「飯を食べに行く」、「温泉に入る」、「ウォーキングする」、「酒を飲む」、「昼寝する」などです。勿論レコーディング中に酒を飲む事は滅多に有りませんが、レコーディングの後は必ず酒を飲んで、テレビでニュースを観るかCDを聴くかして寝ます。男2人だけの淋しい晩酌ですが、不思議といつもそれなりに盛り上がるんですよね、これが……。

2003年10月3日金曜日
 今日は一旦東京へ帰らなくてはならないので、レコーディングは午前中であげなくてはなりません。
 先ず、前回のクールで録ったハワイアンっぽいナンバー、「約束しましょう」です。タイトルもこれに決めました。
 この曲は、前回のレコーディングで全て録り終わったつもりだったのですが、後半にクラップ、それと最後にバンジョレレを入れて、ちょっとデキシーな雰囲気も出したいと思ったわけです。ハワイとデキシーではちょっと雰囲気違いますが、この融合が巧く行きました。クラップは私のオーバーダブで、なんども手を叩き、手の平は真っ赤っか。それから、シェーカーを入れたのですが、私が思うに悪くはないのですが、このシェーカーよりももうちょっと良いのが有るかもしれません。やっぱりハワイアンなパーカッションかなぁ?
 しかし、一応この「約束しましょう」のレコーディングはこれで完了。

 さて昨日の曲の続きです。ドラムス&ベースのところにハードなギターを入れました。ギターはギブソンES−330、アンプはマーシャルのブルースブレイカーですが、ギターがシングル・コイル・ピック・アップのせいか、あまり重い音になりません。でもせっかくだから、これはこれでOK。やっぱりケツが有るといい加減になってしまいますね…。ギターは次回、もっとヘビィな音で入れてみます。

2003年10月21日火曜日
 夜、食事前にチャランゴを弾いてましたら、1曲出来てしまいました。私は、よすおさんが夕食の支度をしてる間中ずうっと、「こんな感じの曲って良いヨナ」と言いながら、チャランゴをマリアッチ風のコード進行で弾いてました。延々続けてると、コード進行も徐々に変り、メロディーもオリジナルティーのあるものに変って行きました。「んん?こんなのって良いじゃん!」と言い、私はよすおさんにガット・ギターを持ってもらい、すぐに台所でセッションが始まりました。セッションしながら、曲の構成などを練って行きます。セッションは結局30分か1時間位演ったでしょうか?マリアッチ風の面白い曲が出来ました。
 私はいつも自宅で使ってる会議用のカセット・レコーダーを持って来てたので、忘れない様にそれにセッションした曲を録音しておきました。後はこれで詞を付けたら直ぐにレコーディングに入れます……が、それはまた今度。仮題は、とりあえず「楽しいマリアッチ」とでもしておきましょう。

2003年10月22日水曜日
 2年前にレコーディングした「青い東京タワー」のニュー・ヴァージョン、「テレビ塔の空」ですが、この曲にアイルランドの民族楽器、ティン・ホイッスルをダビングしようと思います。ティン・ホイッスルと言うのは、1ペニーで買える気軽さから「ペニー・ホイッスル」とも呼ばれています。私のはリコーダーの様にプラスチックみたいな合成樹脂で出来ています。キーは低いDとGそれに、高いC、D、Eフラットと5つあります。この曲のキーはCで、途中から半音転調してCシャープになりますので、そこはEフラットを使います。ティン・ホイッスルとリコーダーとの違いは、裏に穴がなく、オクターヴを息の強さで変えます。これが意外に難しいのです。
 ティン・ホイッスルの音にはやはりエコーが似合います。しかし、これは掛け録りせずにミックス・ダウンの時に掛ける様にします。勿論このレコーディングではデジタル・リヴァーブは使いませんので、アナログのエコーって事になりますね。

2003年10月23日木曜日
 今日は数曲、ラフ・ミックスを作りました。普段ラフ・ミックスにはエコーとかは余り掛けないのですが、今日はエコーを1台だけ繋ぎました。ラフ・ミックスを作り、それを自宅に持ち帰る事によって、客観的に聴いて判断出来る様にする為です。例えば、エコーを掛けないで置けば、本当にエコーが必要なら欲しくなりますし、逆に掛けた場合などは、それの多い・少ない、必要・不要などの判断も出来たりします。これはバランスにも言えますし、それから定位なども的確に決められます。それから、細かいプレーの気になるところや、アレンジで足りないところや余計なところなどがより見えてきます。ミックス・ダウンではそのラフ・ミックスを用意しておいて聴き比べることも大事です。往々にしてミックス・ダウン本チャンよりも、ラフ・ミックスの方が出来が良い場合もありますが、聴き比べる事により、この事態を回避できます。


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