雑誌は、どこに消えた?


2003年12月19日(金曜日)の午後2時を回った頃、新潟大学理学部生物学科事務室に、いつものように私宛ての郵便物が届いていないかどうか確認に行くと、見覚えのある萌葱(もえぎ)色の表紙の雑誌が目に飛び込んできた。待望の「Herpetologica」である。だが、よくよく確かめてみると12月号であった。これで「Herpetologica」の9月号が完全に行方不明であることが、はっきりした(1)。

この雑誌が配達された時点で、航空便で送られた雑誌の国内配達を一手に引き受けているのは「佐川急便」一社だけのように思われた。それを裏付けるかのように、今回、届いた雑誌にも、以下のような日本語のラベルが付けられていた(2)。

[ 飛脚メール便 ]
この荷物は佐川急便が配達しました
お問合せ店: 佐川急便(株)名東店 TEL 052-704-3553

-お届け先-  950-2102
新潟県新潟市五十嵐二の町8050 新潟大学 理学部
はすみ まさと 様

このラベルで幸いしたことは、2点あった。ひとつは「FACULTY OF SCIENCE」が、ちゃんと「理学部」と和訳されていたことである。もうひとつは、ラベルが端のほうにずれて貼ってあったため、以下の英語の住所が読めたことである。これなら、理学部に届いた後は、事務の担当者が生物学科の郵便物として仕分けてくれる。

MASATO HASUMI
BIOLOGICAL INSTITUTE
FACULTY OF SCIENCE
NIIGATA UNIVERSITY
NIIGATA 950-2181
JAPAN



年が明けて、2004年1月6日(火曜日)、私の元へ届けられた「Copeia」の2003年12月号は、驚いたことに「ヤマト運輸」による配達であった。まさか「宅配便業界の威信をかけて」というわけではないだろうが、ここに来て、とうとう他の宅配便業者も、航空便の国内配達市場に参入してきたようである。私は、佐川急便と違って、ヤマト運輸は信用している。惜しむらくは、これにも以下のような、おかしな日本語のラベルが付けられていたことである(3)。

[ クロネコメール便 ]
ヤマト運輸株式会社 愛知物流システム 057-600
この荷物の配送に関するお問い合わせ先 tel:0120-118-010

-お届け先-  950-2102
新潟県新潟市五十嵐二の町8050 新潟大学 Biological
はすみ まさと 様

「これで、よく届いたなあ!!」と感心するような、佐川急便と同じような間違いを犯していた。察するに、日本語の宛名書きを作成するソフトが、不完全なまま市場に出回っているから、こういったおかしなことになるのだろう。

2004年1月14日(水曜日)には「Herpetological Review」の2003年12月号が届いた。この雑誌には、以下のような日本語のラベルが付けられ、ラベルの片隅には鉛筆書きで「理学部」の文字があった。

[ 飛脚メール便 ]
この荷物は佐川急便が配達しました
お問合せ店: 佐川急便(株)名東店 TEL 052-704-3553

-お届け先-  950-2102
新潟県新潟市五十嵐二の町8050 新潟大学 Biological Institute
はすみ まさと 様

なぜ、こうも同じ間違いばかりするのだろう? いい加減、嫌になってくる。鉛筆書きの文字から推察するに、この雑誌も一度、本部に配達されてから、学内便で理学部に送られたのだろう。ところが、この「Herpetological Review」という雑誌が届いたことで、今度は新たな問題が出て来た。それは「購読している爬虫両生類関係の季刊誌の中で、この雑誌が常に最後に届いている」という事実である。この時点では、まだ「Journal of Herpetology」が届いていない。さて、どうなってしまうのか?

と、思っていた矢先の2004年1月19日(月曜日)、この雑誌の2003年12月号が届いた。今度は、ヤマト運輸による配達である。日本語のラベルには、前述の「Biological」の代わりに「理学部」と印刷されていた。英語の宛名は外から見える状態なので、これも「理学部に配達された後は、事務が生物学科の郵便物として振り分けてくれたのだろう」と推察される。

これで2003年12月号は、米国から購読している雑誌の全てがそろったことになる。まだ届いていないのは「Herpetologica」の2003年9月号と「Herpetological Monographs」の2003年号、それに航空便で配達されたはずの「Herpetological Review」の2003年9月号の3誌である(4)。さて、これらの雑誌は一体どこに消えてしまったのか? そして、その責任は誰が取ってくれるのか?

郵政民営化に当たって、このような解決されるべき難問は山積している。その中でも、宅配便業者の「配達能力」が現在、問われている。「東京国際郵便局(5)」に到着した雑誌の国内配達が、どのようにして宅配便業者に振り分けられるのか、その仕組みが私には分からない。ただ私としては、日本語のラベルで同じような間違いを犯していることはあっても、ヤマト運輸が航空便の国内配達市場に参入してくれたことは、有り難いと思っている。佐川急便は、昔から威勢の良さと安さだけが取り柄で、誰に聞いても「商品がちゃんとした形で届かない」などと評判が悪く、信用できなかったからである(6)。

ちなみに雑誌以外の航空書簡は、日本郵政公社(新潟西郵便局)による配達が続いている。最近の配達では、米国ミズーリ州から郵送された2004年2月5日付け消印のある航空書簡が、10日にはもう届いている。時差を考慮すれば、およそ4日間で配達されたことになる。しかも、郵便番号が間違って「950-2128」と書かれているのに、この速さである。

[脚注]
(1) この件に関して再び、学会の事務局に問い合わせてみた(本文だけを以下に掲載)。しかし、この「独り言」をアップした時点で返事はなく、まだ雑誌も発送されていないようである。
I have received a December 2003 issue of Herpetologica today (19 December 2003), but I have not yet received a September 2003 issue of Herpetologica and a 2003 issue of Herpetological Monographs. It is evident these issues are missing. I hope you will send me them as soon as possible.
(2) 既に宅配便業者の名称が明らかにされているため、これまで書いてきた私の住所を示すだけの日本語のラベルとは異なり、ここでは完全な文章を示すことにする。
(3) ヤマト運輸が親切なところは、お問い合わせ先が「フリーダイヤル」になっていることである。これだと、通話料金を気にせずに電話をかけることが可能である。いつものことながら、お客様の身になった経営方針には感心させられる。
(4) 「Herpetological Review」の2003年9月号は学会事務局の手違いで船便でも発送されたのだが、これが今回は幸いしたことになる。
(5) 「国際郵便交換局(国際郵便を専門的に取り扱う通関交換局)」は10局あるが(東京国際郵便局のシェアは全国の約7割)、日本に到着した航空便が、その後どういう経路を取るのか、はっきりしない。ただ雑誌に関しては、佐川急便もヤマト運輸も、愛知県にある店が配送しているところをみると、もしかしたら「名古屋中央郵便局」あたりが取り扱っているのかもしれない。
(6) 私がインターネットショッピングを利用するときも、佐川急便を配送業者に指定している通販会社からは、絶対に商品を購入しないことにしている。


Copyright 2004 Masato Hasumi, Dr. Sci. All rights reserved.
| Top Page |