希望の星?


「羽角さんは希望の星です」と言われたことがある。これは、新潟大学理学部生物学科の某大学院生の言葉である。言ってる意味が分からないので、何のことか尋ねると、次のような説明をしてくれた。

ちゃんとした指導教官もいなかったのに(1)、しっかりとした研究をして、専門の国際誌に何本も学術論文を書いている。しかも、現在は研究生という立場にありながら、劣悪な研究環境の中で、そこら辺の教官に負けない研究業績を残し、我々に「新潟大学の卒業生でも、こんなに出来るんだ」ということを示してくれている。だから、羽角さんは希望の星なんです。

それまで話をしたことのない大学院生からの突然の言葉に「これは、彼の指導教官が、普段から彼に話してることなんだろうなあ」と、こそばゆい思いをしながらも、私には彼の言葉を全面否定するより他になかった。

それは違うんじゃないかなあ。頑張っていて、研究業績があっても、まだ職に就けないでいる(2)。俺をみていたら、みんながみんな、希望を無くすんじゃないか?

その後、数分の沈黙が訪れたことは、言うまでもない(彼の希望を、一瞬にして打ち砕いたようで申し訳ない......。でも、これは紛れもない現実だ!!)

[脚注]
(1) 私の指導教官だった教授は、人間的にも研究者としても嫌いだが、ひとつだけ評価できる点がある。それは「新制大学出身の研究者が、旧帝大系出身の研究者に伍していくためには、第一著者の論文をたくさん持つより他に方法がない」という研究者の社会を、私たちに徹底して教え込んだことである。だが、それも現実的でなかったことは、現在の私の境遇が証明している。
(2) 私のプロフィールにも書いているが、旧帝大系の大学を卒業しないと、大学などの研究・教育機関に採用されるのは容易でない。余程のコネや、研究室の教授の引きでもなければ、私のような新制大学の卒業者は、路頭に迷うのが落ちである。


Copyright 2003 Masato Hasumi, Dr. Sci. All rights reserved.
| Top Page |