(A) 新潟県田上町で見られた、前鋤骨歯列の主枝末端の内側への折れ曲がりが深い個体(外見上はU字形を呈する)。このようなタイプは、一般に新潟地方中央部から採集した試料で生じている。
(B) 青森県田子町で見られた、前鋤骨歯列の側枝の数が少ない個体。この個体群のなかでは、前鋤骨歯の数が最大のものである。
(C-E) 秋田県大曲市で見られた、前鋤骨歯列の形状の個体群内変異。特に個体"E"は、前鋤骨歯列の主枝末端の内側への折れ曲がりが全く無い(外見上はV字形を呈する)。このようなタイプが出現する頻度に、個体群間の形質傾斜が認められる。
(F) 群馬県水上町で見られた、前鋤骨歯列の主枝が左右で互いに、くっ付いている個体。
古い分類学的形質の一つである、前鋤骨歯列のU字形やV字形は、もはやカスミサンショウウオ属の分類には適用できない。
アリザリンレッドで赤紫色に染色された頭骨の、試料の筋肉を透しての可視化(アリザリン染色)。
*Peters (1964)に準拠し、ここでは「前鋤骨の」という用語を使用している。前鋤骨は、爬虫類と両生類の口蓋にある、鋤骨と呼ばれる骨のために、かなり頻繁に使用されている。それは何故かと言えば、哺乳類の鋤骨との相同性に疑問があるからである。また、鋤口蓋歯列は、鋤骨歯列と同じものである。
Peters, J. A. 1964. Dictionary of Herpetology. Hafner Publishing, New York, New York, U.S.A.