遠藤賢司資産

　エンケン何と１６年ぶりのフルアルバムとして発売された空前絶後の名盤中の名盤。

　この間もライヴハウスを中心に壮絶且つ感動的なライヴを展開していたエンケンだったが、ちょうどレコード会社がいわゆるメディアミックスなどという、小手先のくだらん営業に傾倒していたため、全く新作を発表する機会が与えられずにいた。

　しかし、エンケンは全く周囲に迎合せずに、己の魂から搾り出されるかのような「純音楽」道を邁進したのだ。そして、少しずつ、観客が増え始めた。そして若者の姿も目立つようになる。

　そして、みうらじゅん、佐野史郎、曽我部恵一らの献身的な一人電通活動などもあいまって、明らかに地に足の着いたムーブメントが起こり、遂にこのアルバムが発売になった時の感動は、語り尽くせない。

　ちょうど発売日に南青山のマンダラでエンケンバンドのライヴがあった。会場でこのＣＤを手にした時、リアルタイムで聞ける幸せを感じた。そう、このアルバム自体が「夢」だったのだ。

　このアルバムには、16年間のエンケンが凝縮された、10+1（ジャケットも含む）の夢が詰まっている。それらは、一般的に語られがちな抽象的な夢ではない。
瑞々しく、生々しい。現実的であり、非現実的的でもある。

　一対一の人間の距離から果てしなく広がる大氷原、そして裸の大宇宙空間。
男と女、親友同士から片目の狼の咆哮。過去、未来が走馬灯のように駆け巡る中のたったの一瞬、今永劫。

　それらの世界観が、時には壮大なドラマとして演じられ、時には直接語りかけられる。轟音と繊細な音色。それらは二極性ではない。それら全てが包まれるのが純音楽なのである。

　余談だが、発売記念ライヴ終了後、初めて出待ちのようなことをやって、３人にサインを入れてもらった。その時、とーべんさんもエンケンさんも「えー、汚しちゃうの勿体無いなあ」と仰っていた。

　私も同じ気持ちがしていたので、もちろんもう一枚購入して未開封品のまま保存している。さらに、追加プレス盤も買ってしまった。