第86回
下り21Mbps通信対応イー・モバイル端末
D31HW
(2009年9月4日購入・2011年6月14日著)



モバイルインターネット環境を改善しよう

 ロードテスト第85回で、ネットブックパソコンAspire One D250(AOD250-Bb83)を紹介した。この機種を購入する際に、同時に行ったのが、イー・モバイルの通信端末の買い換えである。これまで使ってきたのが、ロードテスト第54回で紹介した「D01NXII」という端末である。この端末は下り7.2Mbps・上り384kbpsで通信できるもので、コンパクトフラッシュ型の端末である。付属のアダプタを付ければPCカードスロットに挿すこともできる。これはパソコンでも、コンパクトフラッシュスロットしか持たないPDA「Zaurus SL-C3200」でも使えるようにと言うことだったのだが、今回問題が発生した。購入した、Aspire One D250にはPCカードスロットは無いのである。つまりこのままでは、せっかく携帯性の高いネットブックパソコンを買っても、外でインターネットを楽しむことはできない。
 ここで、端末の買い換えを決断したのには3つの理由がある。まず、今回ネットブックパソコンを購入したのは、祖母が入院をし、その間も病室でパソコンを使いたいだろうと考えてのことである。そのため、インターネットができないのはまずいのである。そして、そもそも最近では「Zaurus SL-C3200」でインターネットを使う機会が非常に少なくなってきているという事もある。「Zaurus SL-C3200」の性能は非常に低く、ウェブブラウザも簡易的なものなので、表示できないサイトが多い上に、表示にも非常に時間がかかり実用的ではないためだ。携帯電話のフルブラウザの方が手軽な上に、表示も速く実用的であるため、「Zaurus SL-C3200」に対応する必要性は小さくなっていた。
 さらに3つめの理由として、パソコンと同時にイー・モバイルに加入するとパソコンと通信端末の値引きがあったためだ。既にイー・モバイルに加入しているので機種変更ではないかと思われるかもしれないが、残念ながら機種変更ではパソコンも通信端末も割引はない。そこで、一度イー・モバイルを解約し、新規にネットブックパソコンで使用できるUSB接続の端末で新規加入をする事にしたのである。幸い、前の機種の最低利用期間は超えていたので、違約金は発生しない。また、新しく購入する通信端末は、「D31HW」という機種で、下り21Mbps・上り5.4Mbpsで通信可能で、「D01NXII」よりも高速になるのも魅力的であった。
 ちなみに、契約すると「にねんMAX」というプランになる。これはパソコンと通信端末の値引きがある代わりに、24ヶ月間の最低利用期間が発生すると共に、24ヶ月間毎月の利用料金が1,900円アップするというものだ。詳しく言うと、パソコンが35,000円引きに、端末代17.980円は無料になる。つまり実質は35,000円+17,980円の52,980円得だが、1,900円×24ヶ月=45,600円は毎月の利用料金として払うことになるので、差し引き7,380円だけ安くなるわけだ。こう考えると金額は小さいが、どうせ機種を買い換えなくてならず、その場合は端末代17,980円かかるので、機種変更と比べると、25,360円得となるため、この方法で購入した。
 ちなみに、コースは21Mbpsに対応した「データプラン21」となり、使い放題で月額5,980円である。7.2Mbpsまでしか対応しない「データプラン」と比べると1,000円高くなるが、もし「D31HW」で24Mbpsコースを使ってみて、そこまで速度を求めないと思ったときは、「データプラン」に変更することもできるので問題ない。また、2段階定額の「スーパーライトデータプラン21」にすると、使わないときは1,000円、よく使っても上限は同じく5,980円である。家庭内での通信用にADSLを無料で使えるという特典が「スーパーライトデータプラン21」には適用されないが、もともと我が家は光ファイバー回線なので、ADSLを使うことはない。そのため、購入時は「データプラン21」でないと割引特典が受けられないため、これに加入しておき、すぐに「スーパーライトデータプラン21」に変更するのが得策となる。もちろん、どのコースでも、前述の24ヶ月は1,900円アップが適応されるので、「スーパーライトデータプラン21」の場合、2,900円〜7,880円の2段階定額となる。

「D31HW」を見る

 それでは「D31HW」を見ていこう。まずおもしろいのがパッケージだ。なんと外見はまるでDVDビデオなどのトールケースである。一般的なトールケースより少し厚いがジャケットを入れるところもついていて、黒地に「EM」のロゴの入ったジャケットが挟み込まれているのである。しかし開けてみると、「D31HW」本体とUSB延長ケーブルなごがマニュアル等が出てきた。発泡スチロールの板が、「D31HW」やUSB延長ケーブルの形に穴が開けられており、そこにはめられているため、箱に入っているよりもしっかりしていると言える。しかし、今までこんなパッケージは見たことがなかっただけに驚いた。

「D31HW」のパッケージである。まるで少し厚くしたDVDトールケースである。「EM」のロゴも、ジャケットの形で挟み込まれていた。

中を開けると、発泡スチロールで埋められており、そこに「D31HW」やUSB延長ケーブルの形に穴が空き、そこにはめ込まれていた。意外としっかり収まっている。

 「D31HW」はUSB接続の製品である。USBコネクタは本体に内蔵されているため、ケーブル等でつなぐ必要はない。しかもUSBコネクタはスライド式であるため、側面の「スライドボタン」をスライドさせるとUSBコネクタが飛び出てくる仕組みだ。キャップが無いため、なくす心配がないのは安心だ。USBコネクタを出した状態の「D31HW」は、まるでUSBフラッシュメモリである。一般的なUSBフラッシュメモリと比べると少し太い印象だが、それほど大きいわけではなく、幅28mm、長さ76.5mm、厚み12.4mmで重量も25gと非常に軽量なので携帯性は抜群だ。

「D31HW」本体である。USBコネクタはスライド式なので、収納している状態だと非常にシンプルだ。光沢のある黒にロゴが入っていてかっこいいデザインだ。

「D31HW」の側面の「スライドボタン」をスライドさせてUSBコネクタを出した状態であるキャップをなくす心配がないのはうれしいところだ。

「D31HW」の側面である。側面には銀色でラインが入っている。USBフラッシュメモリのような薄型である。

「D31HW」とUSBフラッシュメモリの比較である。全体的に「D31HW」の方が大きいが、携帯性を損ねるほどではない。ただしパソコンに接続時は、隣接するUSBポートは使えなくなる可能性がある。

 裏を見てみると、USBコネクタと反対側がスライド式のカバーになっている。開けてみると中にEM Chipと呼ばれるSIMカードが見える。そしてもう一つ、microSDカードスロットが搭載されているのである。実際、これは、「D31HW」を挿したパソコンからmicroSDカードリーダ・ライタとして使用できるだけのものである。携帯電話のように、単体で使用するならまだしも、単なる通信端末にmicroSDカードがあるのは意外な感じがする。しかし、以外と便利に使えそうである。実際にリーダ・ライタとして使用することも可能だが、裏ブタを開けてmicroSDカードを取り付けなければならないため、単なるUSB接続のリーダ・ライタと比べると不便だし、SDカードには対応せずmicroSDカードだけというのも、使う場面が限定される。そもそも最近のパソコンで、カードリーダ・ライタが内蔵されていないパソコンは珍しいので、わざわざ「D31HW」をリーダ・ライタとして使うこともないだろう。それよりも、常にmicroSDカードを差し込んでおく方が便利そうだ。そうすることで、「D31HW」をUSBメモリのように使うことができる。「D31HW」を挿すだけで、通信端末としても、データの保存場所としても使えるというわけである。このスロットはSDHC規格にも対応しており、公式に最大16GBまでのmicroSDHCカードに対応しているため、それなりに大容量のUSBメモリ代わりに使えるのである。

「D31HW」の裏面である。裏面はスライド式のカバーがある。

「D31HW」の裏面のカバーを開けたところである。中にはEM Chip(SIMカード)を挿すようになっている。

「D31HW」のEM Chipスロット部である。EM Chipは写真の様な状態が、挿さった状態である。小さくEM Chipの挿入方向の図が書かれている。そしてその下には、「microSD」の図も見える。

「D31HW」とEM Chipスロットと直角の位置にmicroSDカードスロットがある。これを利用する事でUSBフラッシュメモリのような使い方も可能だ。

 それでは、パソコンと接続してみよう。まずは、「スライドボタン」をスライドさせてUSBコネクタを出し、USBポートに挿す。前述のようにケーブルが必要なく、キャップもないため非常に簡単だ。ただし、USBポートと比べると大きいため、USBポートが接近して並んでいる場合、隣接するポートは使用できない可能性がある。親切なことに、短い延長ケーブルが付属しているので、場合によってはこれを利用した方が良さそうだ。
 さて、先ほどmicroSDカードを挿す事でUSBメモリ代わりに使えると書いたが、「D31HW」自体にも小容量のフラッシュメモリが内蔵されており、ここにユーティリティーのインストーラーが保存されている。そのためパソコンに挿し込んでドライバが自動で組み込まれると、ディスクを入れたときと同じように自動再生の画面が表示されるため、「AutoRun.exeの実行」を選択する。すると、ユーティリティのインストーラが起動するため、手順に従っていけばユーティリティがインストールされる。CD-ROMも付属しているが、ネットブックパソコンなど光学ドライブが内蔵されていないパソコンもあるため、CD-ROMを使用せずにユーティリティのインストールが完了するのは便利だ。
 インストールが完了したら、デスクトップのショートカットアイコンをダブルクリックしインストールした「EMOBILE HWユーティリティ」を起動する。少しすると、「D31HW」を認識し、「接続」ボタンが押せるようになるので、これをクリックすると、数秒で接続される。これで、「D31HW」を使って通信ができるようになった訳である。ちなみに、本体にはLEDが内蔵されており、現在の通信状態が分かる。本体が起動中なら赤く点滅する。接続のためにダイアルアップ中は青く点滅し、接続に成功すると青の点灯に変わるが、赤く点灯する場合は残念ながら圏外である。。このように本体に液晶は無いため電波強度を示すアンテナ表示などはないが、圏外かどうかは一目瞭然で分かるようになっている。
 手順を文章で書くと長くなるが、実際には非常に手間がかからず、またわかりやすいため、ある程度パソコンを使っている人なら説明書を見なくても接続までできるはずだ。「通信端末の設定」というと難しそうだが、実際には難易度ができるだけ低くなるよう、さまざまな工夫がなされているといえる。


「D31HW」は通信状態によりLEDが赤(写真上)又は青(写真下)に光る。本体起動中なら赤点滅、圏外なら赤点灯、ダイアルアップ中は青点滅で、接続が成功すると青点灯となる。


「D31HW」の通信速度をテストする

 それでは、肝心の通信速度をテストしてみよう。今回の「D31HW」と、これまで使ってきた「D01NXII」を比較してみる。使用したパソコンはSONYの「VAIO VGN-SZ94S」でCPUがCore 2 Duo T7100(1.80GHz)、メモリが2GB、OSがWindows Vista Home Premiumとなっている。もちろん、PCカードスロットを搭載しているため、同じ環境で両端末のテストが可能である。テストは「RBBスピード測定」のサイトを使わせていただき、5回計測した平均値を出している。自宅で計測を行ったが、アンテナ感度は最高になる位置を探してテストしている。ちなみに「D31HW」は受信速度21Mbps、送信速度5.8Mbpsの端末で、「D01NXII」は受信速度7.2Mbps、送信速度384Kbpsの端末となっている。


 まずは、下り(ダウンロード)の速度である。「D01NXII」の約2.1Mbpsから「D31HW」では3倍以上の約6.7Mbpsまで高速化している。21Mbpsという最大通信速度から考えると寂しいとも言えるが、無線の回線ではこの程度であろう。また最大7.2Mbpsから最大21Mbpsと最大通信速度も3倍の向上である事を考えると、順当に通信速度が向上していると言える。また、実際に使ってみるとこの差は結構大きいのである。前回「D01NXII」に切り替えたときは、最大208KbpsのWILLCOMのAIR-EDGEからの切り替えであったため、劇的に高速化したように感じた。ホームページを表示するのが数十秒かかっていたのが2〜3秒になり、自宅の光ファイバー回線とそれほど変わらず使えるようになっていた。しかし、一瞬で表示できる光ファイバー回線でと比べると、2〜3秒かかる「D01NXII」では、一瞬の間というか、もたつきの様な物を感じずにはいられなかった。しかし、今回「D31HW」となり、その「もたつき感」がずいぶん軽減された。実際軽めのページであれば、光ファイバー回線と遜色ない速度で表示されるようになったため、次々とページを進んでいくような場合でもストレスは大幅に軽減された。無線のモバイルインターネットでここまで快適だとは正直驚きと言える。


 続いて、上り(アップロード)の速度である。こちらは、約357Kbpsから646Kbpsと2倍弱となっている。下りの速度の向上率から考えると低めで、最大通信速度では384Kbpsから5.8Mbpsと15倍になっている事を考えても寂しい数字だ。それでも、送信速度が向上したのはうれしいところだ。たしかに、モバイルインターネット回線を使ってアップロードする機会は少ないとも思うが、外出先や旅行先でホームページを更新したり、画像を添付したメールを送信したりといった場合の時間が短縮されるのは便利だろう。また、Webカメラを利用したテレビ電話を行う場合、受信速度は「D01NXII」でも2Mbpsを超えているため、相手の映像は比較的綺麗に見えたのだが、送信速度は受信速度と比べるとかなり遅いため、相手に送る映像がかなり汚くなっていた。今回「D31HW」では送信速度が向上したことにより、相手に送る画像が明らかに綺麗になった。送信速度の向上はそれほど大きくはないが、便利になったのは事実である。



 今回は、モバイルインターネット環境の充実を図るべく、通信会社はイー・モバイルのまま、端末を変更することで通信速度の向上を図った。最大通信速度21Mbpsを誇る「D31HW」は伊達ではなく、インターネットはかなり快適になった。また端末自体も、USB端子が収納式であったりと使いやすいと感じた。月額料金は1,000円上がるが、少しでも快適にモバイルインターネットを楽しみたい人には、オススメの端末と回線と言えそうだ。



(H.Intel)


■今回の関係メーカー・ショップ
イー・モバイル http://emobile.jp/index.html
D31HWのページ http://emobile.jp/products/hw/d31hw/index.html



今回紹介した商品や、その他のハードやソフトの
ご購入はコチラでどうぞ!