ネットブックパソコン Acer Aspire One D250 (AOD250-Bb83) (2009年9月4日購入・2009年11月5日著)
少し前からネットブックパソコンが流行である。ネットブックパソコンとは価格が安く小型のパソコンの事で、店頭価格で4万〜6万円程度で販売されている。当然、ノートパソコンよりは性能は低く、ハードディスクやメモリ容量も小さく、画面も小さく、解像度も低い。それ以外の機能も省略されていたりスペック面で劣る事が多いが、Windowsはしっかり動作しており、インターネットや文書作成程度は問題なくできる。まさに「ネット」ブックである。 さて、その流行のネットブックパソコンはかねてから欲しいと思っていた。少し長く電車に乗って出かける場合や、待ち時間が多いと思われる場合に持っていけば、ホームページの作成やインターネット閲覧くらい出来そうで便利そうである。しかし、買うタイミングが掴めないまま今まで来ていた。そんな時、祖母が入院することとなり、入院先でパソコンが使えるようにと、母と私で半分ずつ出費して購入する事とした。 さて、ネットブックパソコンは今や様々なメーカーから様々な製品が出ており、機種数は50機種を超える。選ぶとなると一苦労だが、幸い、このホームページの小ネタ集で特集したことがあるため、ある程度頭の中でまとまっていた。改めて最新機種を見てみると、CPUはAtomのN280(1.66GHz)かZ520(1.33GHz)を採用した物が多く、メモリは1GB、ハードディスクは160GB、DVDなどの光学ドライブは内蔵せず、ディスプレイは10インチ程度で1024×600ドット又は1024×576ドット、OSはWindows XP Home Editionというのが定番のようだ。無線LANと有線LAN、メモリカードリーダーは全機種が搭載しており、WebカメラやBluetooth機能を搭載した機種も多い。重量も特殊な機種を除き1〜1.4kg程度と似ている。どの機種も似たり寄ったりであるが、よく見ると差別化されていることもある。例えば有線LANが1000BASE-Tに対応していたり無線LANがIEEE802.11nに対応している、画面の解像度が1280×800(768)ドットになっている、ExpressCardスロットを搭載している、ワンセグチューナを内蔵していると言った具合だ。また、メモリカードリーダーだけを見てもSDカードだけに対応している機種もあればMSやxDにも対応している機種もある。USBの数やWebカメラの画素数も違うし、中にはWindows Vistaの機種もある。画面は10インチより小さいが、その分小型軽量の機種画もあるし、逆に11インチ以上のディスプレイの機種もある。本体デザインやカラー、キーボード配列もメーカーの工夫が現れる部分だ。これらを考えて機種を絞ってみたいと思う。 まずCPUは、Atom自体の性能があまり良くため、その中でも少しでも良いように動作クロックの高いAtom N280(1.66GHz)搭載機種から選ぶ事とした。また、今回は携帯性と表示の大きさのバランスを考えてディスプレイは10インチクラスとしたい。また解像度は縦が576ドットだと、少しの差が意外と使いにくいという話を聞くため、1024×600ドット又はそれ以上の機種から選びたい。携帯することを考えると、バッテリ駆動時間が極端に短い機種は省きたいところだ。ディスプレイはできるだけ明るい機種が希望である。またハードディスクの代わりにSSDを搭載した機種もあるが、SSDは容量が少ないため、今回はハードディスク搭載機種の中から選ぶ事とする。またキーボード配列が極端に特殊な機種も省いていく。そして、あとは店頭でデザイン等も見た結果、以下の5機種が候補となった。
これらの機種の特徴を見ていくと、Eee PC 1005HAは長時間のバッテリ駆動が魅力の機種である。10.2時間と公称値で10時間を超えているので、持ち出して使う場合にもバッテリ残量を気にせず使えるはずだ。Eee PC 1008HAはバッテリ起動時間は5.5時間と半減する物の、1.1kgと軽量なのが魅力である。N10Jbは専用のグラフィックチップを搭載しているのが特徴だ。GeForce G105MとGeForceシリーズの中では下位の製品だが、それでも他機種のチップセット内蔵の物と比べると雲泥の差である。Aspire One D250は1.07kgという軽量ボディもメリットだが、スペック面で大きな特徴はないもののそつなくまとまっている割に39,800円と安価なのが魅力だ。VPCW119XJはSONYならではのデザインや作りの良さがある他、画面の解像度が大型ノート並みの1366×768ドットである事が特徴だ。 さてこの5機種から選ぶわけだが、まずN10Jbを除外した。軽いオンラインゲームなども動作すると思われる専用グラフィックチップは魅力的だが、本体が他機種より大きく何より1.55kgという重量が気になる。今使っているVGN-SZ94Sが1.74kgであり、190gしか変わらない。VGN-SZ94Sは光学ドライブを内蔵しディスプレイも大きく、CPUやグラフィック性能も高い。これを考えるとVGN-SZ94Sとの関係が微妙になってしまうのである。続いてEee PC 1008HAを消した。軽量なのは魅力だが、メモリもバッテリも交換不可で、さらに各端子に全てカバーが付いているのも不便だ。重量だけを見るならAspire One D250も同レベルであり、こちらの方が安価で大容量バッテリも用意される事を考えれば、Eee PC 1008HAの魅力は少ない。さらにVPCW119XJも候補から外した。画面の解像度は高いと便利な反面、表示が小さくなる。実際に店頭で見てみるとかなり小さく、見づらいとも感じ、ネットブックに最適な解像度は1024×600ドットだと感じた。また価格が最も高いのも気になった。カラーが3色あるが、店頭モデルはホワイトとピンクで、最も気に入ったブラウンがVAIOオーナーメイド専用であったのも残念であった。そして最後に、Eee PC 1005HAとAspire One D250が残るわけだ。軽量安価な機種か長時間駆動の機種かだが、結果的にはAspre One AOD250を選んだ。理由として、大容量バッテリを搭載して重いという選択肢しかないEee PC 1005HAより、標準バッテリなら軽量で、長時間駆動が必要なら別売りの大容量バッテリで対応できるAspire Oneの方が良いと感じた点が挙げられる。また、ネットブックパソコン自体の購入が初めてで、比較的軽量なノートパソコンと、PDA(Zaurus)、高性能になった携帯電話を持っている状態で、ネットブックパソコンを実際にどれほど使うか未知数なので少しでも安価な方が良い事も選んだ理由だ。もちろん39,800円と安価だが、他機種と比べて本体が安っぽいとか、液晶が暗いといったことがないのも理由である。またEee PC 1005HAもそうだが、Eee PC 1008HAはカードスロットがSDカードのみとなる点も気になった点だ。私の持っているデジカメはCyber-Shot DSC-T77で、使用するメモリカードはメモリースティック(MS)である。この点で、SD/MS/xDの3種に対応するAspire One D250の方が便利だ。という事で、Aspire One AOD 250を購入した。カラーが「シーシェルホワイト」「ダイヤモンドブラック」「サファイアブルー」「ルビーレッド」の4色があった。非常に迷ったのだが、「シーシェルホワイト」「ダイヤモンドブラック」はよくある色だと感じたため外した。「ルビーレッド」も真っ赤ではなく渋い赤でなかなか良かったのだが、少し目立ちすぎるように感じ、「サファイヤブルー」を選んだ。色合い的には「紺色」に近く、落ち着いた色目である。またMicrosoft Office 2007 2年ライセンス版がプリインストールされたモデルもあるが、安さを優先してMicrosoft officeなしモデルを選んだ。型番は「AOD250-Bb83」となる。 ヨドバシカメラマルチメディア梅田で購入した。Aspire One D250(AOD250-Bb83)は39,800円(10%ポイント還元)なのだが、購入の際にイー・モバイルの21Mコースに新規加入することで35,000円引きになり4,800円で購入した。イー・モバイルには既に加入していたが、持っていた端末が下り7.2Mbps対応の端末「D01NXII」である(ロードテスト第54回参照)ため、ちょうど下り21Mbps対応端末に機種変更しようかと思っていた所だったのに加え、Aspre One AOD250はPCカードスロットが無いためどちらにしてもUSB接続の通信端末が必要になったためである。そこでD01NXIIの方の契約は解約とし、新たに端末をD31HWで新規加入という形を取ることで35,000円割り引かれるという事で、こういった形での購入となった(イー・モバイル21Mコースに関しては、別途ロードテストは第86回で紹介している)。ちなみに、ただパソコンが割り引かれるだけではない。パソコンが35,000円引きになる事に加え、端末代17.980円も無料となるが、代わりに24ヶ月間月額料金が1,900円増になる。つまり実質は35,000円+17,980円−1,900円×24ヶ月=7,380円だけ安くなるわけだが、安くなるだけ得なのでこの方法で購入した。
Aspire One D250を購入して、最初に思ったのは箱が小さいという事だ。翌日に父が購入した15.4インチ液晶のノートパソコン「NEC Lavie L LL550/TG」と比べてもかなり小さい。中に入っている本体がかなり小さいことが分かる。さて、箱から取り出してみる。やはり本体がかなり小さい。店頭ではネットブックばかりが同じ場所に並んでいるために、小ささが分かりにくかったが、改めて家で見てみるとかなり小さい。また同時にかなり軽い。いつも使っているノートパソコンVGN-SZ94Sが1.74kgで軽い方だが、Aspire One D250は1.07kgであり、さらに39%も軽いのだからかなりの差である。VGN-SZ94Sは持ち歩くと少し重く感じるが、これなら持ち歩いても苦にならなさそうだ。マウスなどは付属していないが、マウスは人によって好みもあるだろうし、持ち歩いてばかりでマウスは不要という人もいるだろうからこれでよいのだろう。それよりも、キャリングポーチが付属していたのには驚いた。しかもただの布のケースではなく、クッション性があるものだ。もちろん付属しているのだから、Acerロゴも付いていて、サイズはぴったりである。持ち運ぶとなるとケース無しで持ち歩くのも怖いが、別にケースを購入するとなると、数千円の出費だし、サイズもどうしても大きめになってしまう。39,800円の機種でケースまで付属しているのには本当に驚いた。箱の中には他に簡単なマニュアルも入っている。
Aspire One D250本体は思っていた以上に高級感がある。サファイアブルーの本体は濃いめの紺色で派手ではなく、また光沢感があるため上品だ。天板とキーボード面はこのサファイヤブルーだが、液晶ディスプレイのフレームや側面と底面、バッテリ、キーボードはブラックである。全面がサファイヤブルーではないため引き締まって見える。また液晶ディスプレイの周囲はブラックの方が目に優しいし、キーボードはブラックに白字なので見やすい。また、前方から後方に向かって厚みがほとんど変化していないため、手前から見ると良いが後ろから見ると分厚くて格好悪いという事もない。また天板の後方を除く3辺と、本体の手前は斜めに面取りされているため、一見すると本来の厚み以上に薄く感じられるのもうれしい所だ。
バッテリは本体後部の液晶ディスプレイのヒンジ部分に取り付けられる。バッテリ部分は厚みがあるため、その部分だけキーボード面より厚さが増してしまうが、ただ厚くなっているのではなく、側面から見ると厚くなった部分がちょうど涙型になるようにデザインされている。そのためキーボード面からは徐々に厚くなっていくため、急にぽこっと飛び出るような不自然さが無い。また、キーボード面と液晶ディスプレイ面の角度をなだらかにしているように見えるため、デザイン的に非常に美しい。そして、その厚くなった部分の左右を金属風の塗装にし、側面に「ASPIRE」と書かれた青い透明のプラスチックが埋め込まれているなどデザイン面でも凝っている。また、バッテリ部分の左右が液晶ディスプレイのヒンジになっているため、バッテリが液晶ディスプレイより後方に不格好に出っ張っているわけではない。また、厚くなっているといっても、液晶ディスプレイの厚み分だけ厚くなっているため、液晶ディスプレイを閉じれば厚みが均一に見える。このように、とても39,800円とは思えないデザイン性の良さである。
さて、Aspire One D250の初期設定のためにACアダプタを接続する。付属のACアダプタは非常に小さいのが好印象だ。時々、本体は小さいのにACアダプタだけ大きい機種があるが、Aspire One D250付属のACアダプタはパソコンと一緒に持ち歩いても問題ない大きさだ、しかし、ケーブルには問題もある。アダプタとパソコンの間のケーブルは細いのだが、アダプタとコンセントの間のケーブルが太くて重いのだ。せっかく小さいACアダプタなのにこのケーブルは勿体ない。ACアダプタのコネクタ形状も通称メガネ型の2ピンのものではなく、通称ミッキー型の3ピンのタイプと特殊だ。携帯性を考えるなら2ピンと3ピンの変換アダプタを使用しても、細い電源ケーブルに交換した方が携帯性はアップするはずだ。
それでは、いよいよ起動してみよう。初回は初期設定が必要だが、Windows XPなので特に難しくなく、ユーザ名などを入力していくだけである。液晶は思っていたよりも明るい。スペック上も200cd/m2となっており、なかなかである。光沢液晶であり、高価なパソコンのように低反射コーティング処理などが行われていないのか、蛍光灯などの光が写り込むが、液晶が明るいためか、通常の使用ではそれほど気にならないレベルであった。LEDバックライトなので輝度ムラも少なく見える。ただし、背景が黒のホームページや、DVDビデオなどの暗めのシーンでは自分の姿や蛍光灯が映って気になることがあった。また、写真などを表示してみると分かるが、コントラストは高価なパソコンと比べると若干浅く見える。といっても、単体で見れば十分きれいな表示で、特に39,800円であることを考えると十分合格点だ(大型の一般的なノートパソコンの下位モデルより十分美しい)。また、画面サイズは10.1インチと小さいが、解像度が1024×600ドットと低いため表示はそれほど小さくない。 端子類を見てみよう。右側面が手前からSD/MS/xDメモリカードスロット、2基のUSBポート、電源コネクタ、セキュリティスロットとなる。背面はバッテリが大部分を占めており何もない。左側面が手前から、マイク端子、イヤホン端子、USBポート、ディスプレイ出力、そして排気口を挟んで有線LANポートである。前面はバッテリLEDと無線LANオンオフスイッチがある。USBは左右に分けて配置されているため使い勝手はよい。しかも3基というのは、ネットブックでは最大となる。ただし左右どちらも手前寄りに配置されているのが残念だ。特に右側面はマウスなどを繋ぐ事があるが、手前にあるとマウスに当たって邪魔である。右側面の奥か背面に1基欲しい所だ。しかし問題があるとすればこれくらいで、あとはおおむね良好だ。有線LANは左側面の一番奥なのでケーブルが邪魔にならない。また排気口も左側面なので、マウスを操作する手に風が当たって不快に感じることもない。メモリーカードスロットもSD/MS/xDの3種類に対応しているため、対応メモリカードがMSのデジカメを持っている私としては、安心だ。
続いて液晶ディスプレイを開いた面を見てみよう。液晶ディスプレイのフレームが太く見えるが、計ってみると13.3インチ液晶のVGN-SZ94Sや15.4インチ液晶のVGN-FZ92Sとほぼ同じであるため、液晶ディスプレイが小さいために相対的にフレームが大きく見えるだけのようだ。液晶ディスプレイ上部にはWebカメラとマイクが内蔵されている。Webカメラ部には「高画質Webカメラ」と書かれているが、実態は30万画素とそれほど高画素ではない。また小さな文字で「光りが暗い場所でもきれいに映る」と、「光」の送りがなもおかしい上に文章自体もなんだか変な文章が書かれているが、まさかCCDタイプと言う事もないだろうし、どういった意味で書かれているのかは分からない。実際にカメラを起動してみるとそれなりの画質で、室内ではノイズは載っているし、解像感もあるとは言えない。30万画素では仕方のない所だろう。といっても色合いがおかしくなったりという事はないため、実用最低限の画質は確保されており、ビデオチャットやテレビ電話などの用途には十分だという印象だ。
解像度は1024×600ドットと、一般的なノートパソコンと比べると低めである。実際に本機以外に、デスクトップパソコンVGC-RM50(解像度1280×1024ドット)とメインで使用しているノートパソコン(解像度1280×800ドット)で同じホームページを表示して比較してみた。表示したホームページは、Yahooのトップページと、Amazon.comのネットブックパソコンのページとした。ちなみに、本機とVGC-RM50はWindows XPにInternet Explorer 8だが、VGN-SZ94SのみWindows VistaにInternet Exolorer 7となっており若干異なる点はご了承いただきたい。
これを見ると、横方向の解像度にはそれほど問題がないことが分かる。Yahooのホームページ場合は横方向に1280ドットあるVGC-RM50とVGN-SZ94Sでも左右に余白があるだけで、Aspire One D250の横1024ドットでも問題ないことが分かる。Amazon.comではAspire One D250のみ商品写真の並びが詰まっているが、レイアウトが崩れていたり横スクロールが必要と言う事はない。ただ、縦の解像度に大きな差があり、その点では一覧性が大きく異なる。特にAspire One D250の縦600ドットではかなり狭いと感じてしまう。一部のページでは画像などの全体が表示できない場合があるなど、縦800ドットのVGN-SZ94Sよりかなり一覧性は悪い。それもそのはずで、解像度で見ると、600÷800ドットで75%の解像度のように思えるが、実際にはそうではない。Internet Explorer 8でホームページを表示させるとすると、まずWindowsのタスクバーが縦に30ドット表示されるため、残り570ドットにInternet Explorerが表示される。使い勝手を高めるためにメニューバーとステータスバーを表示させると、それらやアドレスと検索バー、タブボタン欄などで135ドット使用する。すると、Aspire One D250ではホームページの内容を表示できるのは縦435ドットのみとなる。一方、VGN-SZ94Sでは同条件なら、635ドットある。すると435÷635で、68.5%の大きさとなる。その上に、Amazon.comのページを見れば分かるように、2行で表示されている商品名が3行になるなど、横方向の解像度が低いためにさらに縦方向が狭くなる。 とは言っても、一般的なノートパソコンと比べれば狭いというだけで、使えないほど狭いわけではない。初期のネットブックでは800×480ドットという解像度の機種もあったが、それと比べればよっぽど使いやすいし、携帯電話のPCサイトブラウザで見るよりも圧倒的に使いやすい事は確かだ。またアプリケーションソフトも若干狭くなるが十分に使えるレベルである。また、アプリケーションの設定画面や、スキャンなどのTWAINソフト、ハードウェアの設定ユーティリティなどは、縦の解像度がギリギリに表示されることはあっても、切れてしまうことはなかった。とりあえず縦600ドットあれば、ウィンドウが表示しきれないという事はほぼなさそうで安心である。逆に縦が576ドットの機種では、「OK」や「キャンセル」ボタンが隠れてしまう危険性があると感じた。 それではキーボード面を見てみよう。キーボードはキーピッチ17.5mmで88キーとなる。キーの並びはごく一般的で変則的な並びが無いのは好印象だ。ネットブックでは「半角/全角」キーが入りきらずに最上段や最下段に配置されたり、中にはファンクションキー(F1〜F12)が数字キーと兼用されていたり、「ろ」キーなどが最下段になっている機種もあるが、そう言ったことは一切無い。Enterキーの右に他のキーが配置されるとタイプミスしやすくなるが、Enterキーはきちんと右端にあるし、カーソルキーも1段下がった所にある。Enterキーの周囲のキーに、一部横幅が小さくなってしまっているものもあるが、本体サイズを考えるとこれ以上の余裕はないのだから、メインのキーのサイズを確保したという点で評価したい。キー配列は一切問題がない。実際にタイピングした印象だが、こちらも悪くない。安価な機種などではキー中央部がたわむ製品もあるが、Aspire One D250は比較的しっかりしておりタイプ感は悪くない。17.5mmのキーピッチはタッチタイピングできるギリギリサイズに感じるが、このサイズなら何とか大型の機種とさほど変わらないスピードで文字入力が行えた。ただし横幅が小さくなっている所は実測で13mm程度で、さすがに横のキーを同時に押してしまうのでは無いかと気を遣う。実際に「ー」を入力しようとして「0」と入力してしまう事が何度かあった。ただし、これは慣れれば次第に無くなっていくと思われる。キーボードはこのサイズと価格にしては十分な出来である。
キーボードの手前にはタッチパットがある。本体サイズの関係で、横幅約5cm、縦幅約3.3cmと小さいため、使いやすいとはいえないが、本体サイズを考えれば仕方のないことだろう。また、マウスの左右クリックのボタンは左右のボタンが分かれていないため、最初は一瞬戸惑うが、慣れてしまえば問題はない。それよりも、よくネットブックでタッチパットの左右にクリックボタンが配置されている機種があるが、Aspire One D250は一般的なノートパソコンと同じタッチパットの下に配置されているため戸惑うことなく使用できる。またタッチパット部分が少しへこんでいて分かりやすいのも好印象だ。ちなみに、上端は線が印刷されているだけとなっている。大型ノートパソコンと比べれば若干使いづらいのは確かだが、家庭内での使用時にはマウスを接続すると思われるため、外で使用する間だけと考えれば十分である。 またキーボードの上には、電源ボタンと、Bluetoothオンオフボタンが配置されている。前述の前面の無線LANオンオフスイッチとと合わせて、なかなか便利な部分の一つである。バッテリ駆動時には少しでも長持ちさせたいところであり、そんな時に使用していない無線通信機能をワンタッチでオフに出来、また使用する時もすぐにオンに出来るというわけである。ただし、このスイッチにはちょっとした問題もある。Bluetoothは一度オフにすると次回起動時にもオフのままなのだが、無線LANは次回起動時には自動的にオンになってしまうのである。なぜこのような仕様になっているのか不思議である。
ちなみに、パームレスト部分にはASPIRE ONEのロゴと機能を示すロゴが貼ってあるが、6つのうち4つには*が付けられており「特定モデルのみ対応」と書かれている。確かにAspire One D250(AOD250-Bb83)には合わない事も多い。*が付けられていない「Dolbyヘッドホン」と「10.1" LED LCD」に関しては当然正しく、*は付けられている「Bluetooth」に関しても搭載されている。しかし「7.5hrsバッテリーライフ」はオプションのバッテリを購入した場合の時間である。さらに「WAN対応」に関しては対応したモデル自体が存在せず「特定モデルのみ対応」の注釈自体もおかしい。ただし、WAN用の機器が内蔵できる内部スペースが用意されていて、将来搭載モデルが発表されるという可能性はある。さらに「SignalUp」に関しては意味も分からない。そこで、調べてみるとAcer独自のテクノロジーの一種のようだ。SignalUpとはその名の通りSignal=信号のUP=強化の機能のようで、無線LANの信号強度を強めるという考え方のようだ。そのために最も高効率のアンテナタイプを使用し、さらにアンテナ液晶パネルの最上部に配置する事で受信しやすくしているという。これに関しては公式ホームページのスペック表に記載があるため、Aspire One D250(AOD250-Bb83)は対応しているようである。
その他、外見からは分からないスペックについても検証してみたい。CPUはAtom N280(1.66GHz)となる。ノートパソコンに搭載されるCore 2 Duoなどと比べると性能は低いが、ネットブックでは一般的であるため仕方がない。より低消費電力のAtom Zシリーズなら2.0GHzの製品もあるが、ただでさえ、Atom Nシリーズより低消費電力でVT対応など機能面でも優れているため価格が高めのAtom Zシリーズで、動作クロックも高めの製品となると、それだけでAtom N280とはかなりの価格差になる。少しの性能が高いだけで1万円以上も価格が高くなるとしたら、Atom N280で十分だろう。チップセットはIntel 945GSE Expressであるが、これもAtom Nシリーズで一般的だ。グラフィック機能はチップセット内蔵の物を使用している。メモリは標準で1GB(DDR2-533 SDRAM)搭載しており、公式には最大1GBとなっているが、バッファローなどのホームページでは2GBまでの増設が可能となっている。メモリソケットは1つしかないため、2GBのメモリを購入して交換する必要があるし、デュアルチャンネルにもならないが、2GBまで増設出来るのは安心感がある。ハードディスクは160GBで5400rpmのものである。5400rpmなら一般的なノートパソコンと同レベルであるし、160GBというのは実は我が家のノートパソコンの中で最大なので、十分と言える。 一方残念なのはLANの性能だ。有線LANが100BASE-TXまで、無線LANがIEEE802.11b/gとなる。他のネットブックでは有線LANが1000BASE-Tまで対応していたり、無線LANがIEEE802.11n Draftに対応している機種が多いため、どちらも高速な規格に対応していないのが残念なのである。特に我が家の場合は、インターネットは光ファイバーだし、ネットワーク接続のハードディスクを利用しており、他のパソコンのデータにアクセスしたりデータを転送したりすることも多い。それを考えると最大100Mbpsの100BASE-TXと54MbpsのIEEE802.11gでは性能不足と言えるのだ。これは今後何かしら対応を考えなければならなさそうだ。
では実際に使用してみよう。Atom N280(1.66GHz)の性能はCeleronの900MHz程度の速度と聞いていたため、かなり遅いことを覚悟していたが、使ってみた感じではそれほど遅いとは感じななかった。またWindows XPの起動は結構早い。普段使用するアプリケーションを多数インストールした状態でもさっと起動する。Celeron 900MHzの時代よりメモリやハードディスクが高速になっていると考えられるため、CPU性能は同等でもそれ以外の部分が高速ならある程度早いようだ。また、インターネットの閲覧では表示が一瞬もたつくような間隔も受けるが、ほとんど気にならないレベルで、文章入力時に変換などにもたつくことはなく、結構ストレス無く使えるのは意外であった。一方で遅いと感じるのはアプリケーションソフトの起動である。今回はMicrosoft Officeがインストールされていない機種であるため、OpenOffice.orgをインストールしているが、そのCalcの起動に34秒もかかる。また一太郎の起動に13秒もかかる。それどころInternet Explorer 8を開いてgoogleのトップページを開くだけで11秒かかるのである。これは今使っているCore 2 Duoのパソコンと比べて明らかに遅く、Atomである事を考慮して気長に待っても、まだ起動していないというぐらい遅いのである。起動してしまえばほとんどストレスなくスムーズに動くため、アプリケーションの「起動」だけ気長に待つことになりそうだ。 また本機に外付けのDVDスーパーマルチドライブを接続し、PowerDVD 7を使用してDVDビデオの再生を行ってみたが、コマ落ちすることもなくきれいに再生できた。また前述のように液晶ディスプレイは明るいためDVD鑑賞にも十分対応できると感じた。前述のコントラストが浅い点はDVD再生時にはそれほど気にならなかった。また、液晶ディスプレイの応答速度がどの程度かわからないが、DVD再生時に残像が気になるほどではなかった。液晶ディスプレイが普段使っているノートパソコンの1280×800ドットの液晶のよりもややワイドで、1024×600ドットというと16:9.375となり、DVDビデオなどを表示しても、上下12ドットずつが無駄になるだけでほぼ全画面表示が出来るのも便利である。処理スピード、液晶ディスプレイともにDVDビデオ再生は合格点である。 続いて、YouTubeの動画を再生してみた。スタンダード画質であればコマ落ちすることなく再生することができた。一方HD画質の動画は、コマ落ちが激しく鑑賞に堪えられるものではなかった。YouTubeの再生はスタンダード画質までといえる。 さらに難易度の高いネットゲームを起動してみた。ゲームはラグナロクオンラインであるため、ネットゲームのMMORPG系の中では比較的軽い方だが、それでもある程度の性能を必要とする。起動しない可能性もあるし、起動してもまともには動かないだろうと考えていた。ところが実際に起動してみると、なんと問題なく動作するではないか。町中のキャラクターがあまりにも多いところではフレームレートはかなり落ちるが、移動できないほどではない。また一般の狩り場であれば、ウィザードの魔法を使用してもそれほど重くなることもなくプレイできた。Atom+Intel 945GSE Expressチップセット内蔵グラフィックでも十分にプレイできると結論づけようとしたとき、一つ問題が発生した。ログインやマップ移動があまりにも遅いのである。通常、ログインやマップ移動時には「読み込み状態」を示すバーが出て、100%になると一瞬ブラックアウトしゲーム画面が現れる。ところが、まずバーが100%になるのが遅い。そして、100%になった後、実際に画面が現れるまで、場所にも寄るが10秒近くかかるのである。前者の方はバーが100%になるまではキャラクターは実際にはどこにも現れていないため、長くかかっても待てばよい。しかし後者の方は問題である。100%になってから画面が現れるまでの間、画面は見えなくてもキャラクターは実際にそのフィールドに出現してしまっている。数秒の猶予の後敵モンスターはおそってくる。実際に、画面が現れるとすでにモンスターに囲まれていてかなりのダメージを負っているという事があった。先ほどのアプリケーションソフトの起動は遅いが起動してからは快適なのと同じで、ログインやマップ移動さえしてしまえば快適だが、ログインやマップ移動の危険度は高くなるというのが結論となる。旅行先などでちょっと遊ぶくらいなら、なんとかなるだろうが、常に本機でプレイするのはストレスがたまりそうである。 そのほか、プリンタ複合機の「PM-T960」を使用して3200dpiでのネガフォルムスキャンを行ったり、同じくプリンタ複合機の「EP-901A」のADFを使用して、紙原稿を600dpiでスキャンを行ったりしているが、特別遅いとは感じない。大量にあるネガフィルムのスキャンを行わせるとかなりの時間がかかるため、そういった作業専用として使用すれば普段使っているノートパソコンがふさがらないため、なかなか便利だ。
それでは実際にベンチマークテストを走らせて結果を見てみることにしよう。現在使用しているVGN-SZ94Sと、母の使用しているVGN-FZ92Sとの比較では、差が出すぎる事が明らかなので、この2機種に加えて、以前使っていたVGN-S72PBとさらにその前に使っていたLavie M LM500/4Eも比較対象とした。詳しいスペックは以下の通りである。
それではベンチマークテストの結果を見ていこう。なお、結果には「N/A」と「N/T」があるが、「N/A」はスペック不足によりテストを実行出来なかったもの又はテスト結果が表示されなかったものである。一方の「N/T」は現在は処分してしまったパソコンで、所持している間にテストを行わなかったものである。 まずは、システム全般の性能を計測するHDBENCHの結果である。注目のAtom N280(1.66GHz)の性能であるが、CPUのIntegerはPentium M 740(1.73GHz)の91.5%、Floatは81.3%である。若干動作クロックが低いことを考えると、クロック当たりの性能は悪くないように見えるが、Atom N280にはHyper-Threading機能が搭載されており擬似的に2コアになっている事を考えると、やはりクロック当たりの性能は低めだ。もちろん、Core 2 Duoの2機種の半分以下である。ただし、それでも4年半前のパソコンに近い性能で、7年前のパソコンよりは確実に高い性能を示しているため、Windows XP+軽いアプリケーションなら問題なく動作することもうなずける。 メモリの項目はシングルチャンネルと言う事もあって性能は低めだ。DDR2-400 SDRAMのデュアルチャンネルとほぼ同等で、DDR2-667のデュアルチャンネルの半分以下となる。グラフィックの項目はWindows XPとWindows Vistaで結果が大きく異なるようなので、参考程度に掲載している。おもしろいのはHDDの項目で、全機種中でダントツの好成績となっている。HDDに関しては一般的な製品を使用しているようで、1年前の機種であるVGN-FZ92Sや2年前の機種であるVGN-SZ94Sと比べて、新しい分高性能という所のようだ。 続いて、同じくシステム全般の性能を計測するCrystal Mark 2004の結果である。CPU性能はやはりモバイルPentium M(1.13GHz)以上、Pentium M 740(1.73GHz)以下というところだ。Core 2 Duoの2機種と比べるとかなり遅いと言わざるを得ない。またメモリに関してもHDBENCHと同様の結果だ。HDDに関しても同様で、全機種中最高性能である。さすがにHDDは最新の方が高速だという事だろう。グラフィックに関してはD2Dの項目では検討している物の、DGIやOGLの項目ではかなり悪い。GDIではMobility RADEONにすら負けているし、OGLでは、VGN-FZ92Sの25分の1である。チップセット内蔵グラフィックではこの程度の性能だろう。やはりゲームなどには向いていないことが分かる。 同じくシステム全般の性能を計測する「Sandra Lite 2005」と「Sandra Lite 2009.1.15.72」である。前者はWindows Vistaでは動作しないためWindows XPの3機種のみの結果を、後者は「VAIO VGN-S72PB」と「Lavie M LM500/4E」を処分した後で登場したテストなので、現在手元にある3機種のみで計測している。 「Sandra Lite 2005」を見ると、CPUやメモリの性能はこの頃の製品と良い勝負だと言える。「VAIO VGN-S72PB」と「Lavie M LM500/4E」共にWindows XPの機種なので、この性能から考えるとAspire One D250のOSがWindows XPというのは妥当な選択肢だと言える。当然、比較的新しい機種と比較する「Sandra Lite 2009.1.15.72」の方の結果はかなりひどく、CPUでは、動作クロックが近いVGN-SZ94SのCore 2 Duo T7100(1.80GHz)との比較でも3分の1以下となる。 続いて円周率を計算する「Superπ」である。419万桁を計算する時間であるが、やはりLavie M LM500/4E以上VGN-S72PB以下である。ただし、Aspire One D250はVGN-SZ94Sの2.33倍の時間となっており、これまでのCPU性能を純粋に測るテストに比べると善戦している。実アプリケーションレベルでの差は、CPU性能を測るベンチマークテストよりは良好と言えるかもしれない。 ここからは3Dグラフィック性能である。まずは比較的軽めの「3DMark2001SE」である。ちなみに、1024×768ドットに関しては、Aspire One D250は画面の解像度が1024×600ドットであるため実行できず、Lavie M LM500/4Eではグラフィックメモリ不足で実行できなかった。640×480ドットの性能を見ると、グラフィックメモリ8MBのMobilityRADEONを搭載したLavie M LM500/4Eよりは高いものの、4世代前のシリーズであるGeForce 6000番台の中でも下位モデルのGeForce 6200 with TuboCacheを搭載したVGN-S72PBと比べても25.7%と、かなり性能は低い。GeForce 8400M GTを搭載したVGN-FZ92Sと比べると7分の1以下の性能だ。しかし、Lavie M LM500/4Eでもラグナロクオンラインを始めとする簡単なオンラインゲームや、軽めのゲームは動作していたことに加え、グラフィックメモリも224MBまで割り当てられることを考えると、簡単なゲームなら動作するとも言えるだろう。 続いて3DMark2001SEより負荷の高い3DMark05である。VGN-S72PBにも遠く及ばないという点では同じである。また更に負荷の高い3DMark06は起動しなかった。 続いて実際のゲーム環境に近いテストをいくつか実行してみよう。まずはFINAL FANTASY XIのベンチマークテストである。今となっては比較的軽めのテストであるためか、3DMarkより差は縮まっており、VGN-S72PBの29.0%、VGN-FZ92Sの20.4%の値である。また、この1457という結果であるが、公式ホームページによると1000〜1499は「FINAL FANTASY XI for Windowsを動作させることのできるマシン」、1500〜1999は「FINAL FANTASY XI for Windowsをデフォルト状態でストレス無く動作させることのできるマシン」となっている事から、ある程度快適に動作するレベルには達していると思われる。もちろん、メインで使用できるような性能ではなく、解像度を下げたりエフェクトを省略する必要があると思われるが、旅行先などで少し遊ぶことは出来そうだ。 「ぐるみん」というゲームを用いたベンチマークテストである。Lavie M LM500/4Eを若干上回る程度で性能的には寂しいが、とりあえずベンチマークテストは完了するだけの性能はあるようだ。 鉄道模型シミュレータ3のベンチマークテストである。現在は鉄道模型シミュレータ5が発売されているので、2世代前のソフトであり比較的軽めだ。VGN-S72PB、VGN-SZ94S、VGN-FZ92Sに遠く及ばないのは同じで、Lavie M LM500/4Eにもかろうじて勝っているという所だ。ただし、このベンチマークテストの結果はFPS(フレームレート:1秒間のコマ数)で表されるが、最小でも35fpsとなっている。一般的に30fps以上ならスムーズな動画に見えるので、このレベルならスムーズに動作させることが出来るようだ。 鉄道模型シミュレータ4のベンチマークテストである。VRM DirectXチェッカーより重いテストのため差も広がっている他、最新のv2の方は性能不足で動作しなかった。動作するのは二昔前のゲームやソフトまでのようである。 続いて最新のゲームのベンチマークテストをいくつか試した所、「BIOHAZARD 5 ベンチマークテスト」「The Last Remnantベンチマーク」はそれぞれエラーが出て動作しなかったが、「S.T.A.L.K.E.R.:Clear Sky Benchmark」のみテストが行えたため比較してみることとした。なお、テストは「Renderer」の設定がいくつか選べるが、最も軽い「Static lighting」でのみテストが行えた。また、あくまでテストが完了しただけであり、結果はひどいものだ。GeForce 8400M GTを搭載したVGN-FZ92Sでは45〜75fpsであり、GeForce 8400M GSを搭載したVGN-SZ94Sでも35〜60fpsは出ており、実際に画面を見てもスムーズに表示されている。一方Aspire One D250は解像度の低い800×600ドットでも1.7〜3.3fpsしか出ておらず、ほとんどコマ送り状態だ。Aspire One D250で最新ゲームはどんなに動作が軽い設定にしても難しそうだ。 CineBench R10は3Dベンチマークソフトとなっているが、テスト内容は3D画像をレンダリングするというものであり、CPUの性能が端的に表れると言って良いベンチマークテストだ。結果はこれまでのテスト同様、VGN-FZ92SやVGN-SZ94Sと比べるとかなり悪いスコアだが、このテストのおもしろい所は、使用するコア数を1コアの場合と複数コアの場合で実行できることだ。「1CPU」とは1コアのみを使って実行するもので、「xCPU」は最大のコア数(Core 2 Duoなら2コア、Core 2 Quadなら4コア)を使って実行するものである。そして、下の方のグラフが、その1CPUに対するxCPUの上昇率である。 まずVGN-FZ92SとVGN-SZ94Sであるが、どちらもCore 2 Duoになるため、全く同じ1.77倍となっている。Core 2 Duoはその名の通り純粋にコアの2つあるため、2倍とまではいかなくてもかなり高い上昇率である。一方のAspire One D250であるが、搭載されるCPUのAtomはシングルコアのCPUである。そのため1CPUとxCPUでは同じ値になりそうだが、実際にはそうではない。Atomには「Hyper-Threading」という機能が搭載されているためだ。CPUという物はどんなに効率よく処理できるように設計されていても、全ての箇所が100%動作しているという事はほぼ無い。Hyper-Threadingとは簡単に言えば、そのCPUの動作していない箇所を使って擬似的に2コア目として動作させ、CPUの処理性能を上げる機能である。そのため、CineBench R10のテストでも純粋なデュアルコアのCore 2 Duo程では無いものの、1.55倍とxCPUの方が性能が向上している。実際にはシングルコアなのにも関わらず、この上昇率はある意味驚きで、Hyper-Threadingの機能が優れていることが分かる。逆に言えばHyper-Threading機能が搭載されていなかったら、CPU性能は35.5%も低下することになり、使い勝手はもっと悪くなるだろう。よくぞAtomにHyper-Threading機能を付けてくれたものだと思わされる結果であった。 最後は、折角なので筆者の作ったベンチマークテスト「Click&Createベンチマークテスト2」も実行してみよう。VGN-FZ92Sの35.8%、VGN-SZ94Sの39.5%、VGN-S72PBの50.7%となっている。また僅差ではあるがLavie M LM500/4Eにも負けている。これはPentium MのVGN-S72PBとCore 2 DuoのVGN-SZ94Sの差が小さいことからも分かるように、Click&Createが1コア動作にしか対応していないためと思われる。そのため、AtomのHyper-Threadingの効果が出ず、スコアが伸びなかったと考えられる。 以上様々なベンチマークテストを行ってきたが、さすがに性能面では最近のノートパソコンには及ばない。それどころか4年半前のハイスペックノートにすら全くかなわないという状態である。Aspire One D250に動作の快適さを求めてはいけないという事が判る。それでも、同じWindows XPが比較的快適に動作していたLavie M LM500/4Eよりは性能が高いし、Hyper-Threadingの効果もかなり出ている。また、HDDの速度は5機種中トップなので、データの読み書きの待ち時間は少ない。3Dグラフィック性能も決して高くは無いが、軽めのゲームなら動作するレベルである。これを見ると、高性能とは言えないが、ギリギリ「使える」レベルの性能を有していると言えるだろう。 今回はネットブックの中でも安価な39,800円の機種を購入したが、予想以上に「使える」機種であると感じた。しかも予想していたよりも動作は遅くなかった。たしかにビデオ編集や画像編集、ハイビジョン動画の再生などを行うには性能不足なので、メインとして使用するのには少々無理があるが、サブ用途と割り切れば十分である。完全なサブではなく、簡単なメインの作業も行えるサブパソコンという感覚だ。しかも本体デザインや質、液晶の表示品質などを考えても、39,800円とは思えない質の高さだ。それでいてCPUやメモリ、ハードディスクのスペックはもう少し高価なネットブックと比べても劣っておらず、USBポート、メモリカードスロット、Bluetooth、Webカメラなどの機能も問題ない。また、思った以上に軽量コンパクトなので、持ち運びの苦労も少ない。このロードテストも、本機を使用して出先の電車内で書いているが、そういった用途にはちょうどよい大きさでありながら使いにくくもなく、バランスがとれている。もちろんより高性能であったり、画面が高解像度であったり、バッテリ駆動時間が長かったりする機種もあるが、本機はそういった突出した部分はないものの欠点のほとんどないバランスのとれた機種である。それでいて39,800円と安価であるため、「ネットブックに興味はあるけど、実際にどの程度使うかわからない」という様な筆者のような人を始め、「高性能でなくてよいから持ち運べるパソコンがほしい」「サブ用途なのでできるだけ安くて良い機種がほしい」という様な人には非常におすすめの機種である。またWindows 7の登場により、同じ本体でOSをWindows 7 Starterにしたモデルも追加されている。ディスプレイが1280×720ドットというハイビジョンの解像度にアップしているほか、付属のバッテリが6セルのタイプに変更され、重量アップと引き替えにバッテリ駆動時間が7.5時間になっている。価格も少し高くなっているが、高解像度液晶やWindows 7に魅力を感じる人はこちらも良い選択肢になるだろう。 (H.Intel) ■今回の関係メーカー・ショップ
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