第137回
USB3.0接続ハードディスク2台内蔵外付けケース
玄人志向 GW3.5AX2-SU3/MB
(2012年1月1日購入・2012年10月15日著)


ハードディスクが2台入るケースを探す

 様々な大容量データのバックアップが必要な筆者は、内蔵用ハードディスクを複数持っておき、バックアップするときだけハードディスク用のクレードルであるセンチュリー裸族のお立ち台USB3.0eSATAプラス(CROSEU3)」(ロードテスト第139回参照)を使用して外付け化してパソコンに接続している。その際、バックアップすると長時間連続してアクセスが発生し、かなり発熱があるので、 シグマA・P・Oシステム販売のUSB扇風機「UMF02WH」(ロードテスト第110回参照)で風を当てて冷やしている。しかし1ヶ月に1回程度の作業のデータはともかく、スキャンした雑誌やマンガのデータはその都度バックアップを取っているし、ノートパソコンが壊れた時用にシステム全体のバックアップも頻繁に行っている。バックアップを行うたびに、クレードルを取り出してきて電源とUSBケーブルを接続し、ハードディスクも取り出してクレードルにセット、さらにUSB扇風機も取り出してきて、パソコンに接続して風を当てるという手順は何とも面倒だ。頻繁に使うハードディスクだけ外付けケースに入れて外付け化する事とした。
 頻繁に取り出すハードディスクは2台なので、これを外付け化する事を考えてみる。バックアップする内容によってハードディスクを何台も取り付けるのは面倒だし、ノートパソコンでは数少ないUSBポートもふさがってしまう。そこで2台を1つのケースに入れられ、USBケーブル1本で接続できる機種を選ぶこととした。それ以外の条件として、今回内蔵するハードディスクが3.0TBと2.5TBであることから、2TBを超えるハードディスクで動作検証がなされていることが最低条件だ。接続はUSB3.0があればよしとする。また前述のようにアクセスが長時間連続すると思われるので、冷却ファンは必要だ。2台内蔵するタイプなので冷却ファンが付いていない製品のほうが珍しいとは思うが、念のため確認である。また、バックアップ時だけ接続することから、パソコン電源連動機能などは不要だ。また2台のハードディスクは別々のドライブとして認識してもらいたいので、RAID機能などは不要だ(あってもRAID機能をオフにできるので良いが)。そして、できるだけ価格は安い方が良い。
 この条件で見つけたのが玄人志向の「GW3.5AX2-SU3/MB」である。玄人志向の製品はサポート面で不安があるが、そもそもハードディスクケースでサポートを受けることは無いと思われることと、以前に玄人志向のハードディスクケースの品質が良かったことなどから、問題はなさそうだ。パッケージには「高放熱アルミボディ採用」に加えて、「冷却ファン搭載」と書かれていて安心だ。「冷却ファン」のオン・オフスイッチも付いているようだが、冷却ファンを切るような冒険をすることは無いだろう。「3TB×2台=6TB対応」と書かれているため、2TBを超えるハードディスクも安心だ。「RAID 0」と「RAID 1」に対応しているが、独立して認識する「シングルモード」も備えている。そして接続はUSB3.0だ。インターネット上での評価も悪くないことから、この製品に決めたのである。ドスパラのネット通販で購入し、4,480円であった。2台収納できるハードディスクケースとしてはかなり安価だ。

「GW3.5AX2-SU3/MB」の外見を見る

 早速購入した製品を見てみよう。箱は玄人志向の製品によくある、段ボールに黒インクで印刷しただけの簡素な箱ではなく、全面が色で塗られ、製品のデザインや特徴なども書かれていて持ち手も付いたしっかりしたものだ。裏面にはハードディスクの組み込み方の簡単な説明まで書かれている。

「GW3.5AX2-SU3/MB」のパッケージである。カラー印刷で持ち手まで付いているしっかりしたもので、玄人志向らしくない。

「GW3.5AX2-SU3/MB」のパッケージ正面である。アルミボディを採用していることや、冷却ファンを搭載している事が書かれており、冷却面で安心だ。3TB×2台に対応しているとも書かれている。

 箱を開けて「GW3.5AX2-SU3/MB」を取り出してみる。ちょうどハードディスクが1台入るケースを横に2倍にしただけのような大きさで、重さもそれなりにあるが、驚くほどで重いわけではなく予想の範囲内だ。前面と背面部分はプラスチックという感じだが、それ以外はざらざらとしたアルミボディで、質感は高い。 側面には「MOBILE TwinDrive」のロゴがあるが、「TwinDrive」は良いとして、重さからして「MOBILE」は少し無理がある。前面は、ボタンが3つ並んでいるように見えるが、実際にはすべてLEDランプだ。一番上の一番大きな物が「POWER」、下の2つが、それぞれ「HDD1」と「HDD2」のアクセスランプである。その周りにはU字型にスリットがあるが、これが吸気口である。
 背面でもっとも目立つのが冷却用のファンだ。ハードディスク2台分+αの横幅があるため、ファンの大きさにも余裕があり、5cmファンが取り付けられている。四隅でネジ止めされていることから見ても、一般的な5cmファンである可能性が高いので、場合によってはより静音又は冷却能力の高いファンに交換も可能だろう(実際に確認したわけではなく、交換は個人の責任で行う必要がある)。ファンの下には電源スイッチ、どの左にUSB端子である。青い端子はUSB3.0対応の証である(形でもわかるが)。そのさらに下には、ACアダプタの接続口、そしてファンのオン・オフ切り替えスイッチがある。いくらアルミボディとは言え冷却ファンを止める事があるかは疑問だが、低速で発熱の少ないハードディスクを1台だけ搭載した場合などならなんとかなるかもしれない。
 付属品はACアダプタの他、スタンド用の台、USB3.0ケーブル、HDD固定用ネジである。ACアダプタはアダプタ部がコネクタの所にあるタイプなので、電源タップなどに取り付ける場合は邪魔になりそうだ、。スタンド用の台は本体を上から乗せることで左右に倒れにくくするだけの簡単な物で、しっかりとジョイントするわけではない。移動する際に置き忘れてしまうことが多々あったため、残念だ。

「GW3.5AX2-SU3/MB」の側面である。前面部分以外はアルミである。ザラザラとした表面で質感は高く、ブラックカラーであるため安っぽくは感じない。

「GW3.5AX2-SU3/MB」の前面である。3つのボタンに見えるが、上から「POWER」「HDD1」「HDD2」のLEDランプである。その周囲にはU字型に吸気口が開けられている。

「GW3.5AX2-SU3/MB」の背面である。大型のファンが頼もしい。また、USBポートは青色に塗られていて、形状と併せてUSB3.0対応であることを主張して言る。電源スイッチの他に、ファンのオン・オフスイッチもある。

「GW3.5AX2-SU3/MB」の付属品である。左から、スタンド、電源ケーブル、ネジ、USBケーブルである。USBケーブルも付属するのは親切だ。一方スタンドは、上から本体を載せるだけなので、持ち上げるとスタンドだけ置いてきてしまうことがあるのは残念だ。


「GW3.5AX2-SU3/MB」にHDDを組み込む

 それではハードディスクの組み込み作業に入ろう。20ページのマニュアルが同梱されているが、英語マニュアルというだけでなく、表紙に載っている写真は「GW3.5AX2-SU3/MB」とはカラーだけでなくLEDランプの形状なども異なる製品で、少々怪しく感じる。中を見ると、前面デザイン以外は同じようなので、こちらを参考にしても良いが、前述の箱の裏に書かれた簡単な解説を見た方が日本語なので良さそうだ。
 まず、背面の4カ所のネジを外す。すると、背面部分をケース部分から後ろに引き出すことができる。背面部分と一緒に、内部の基盤やハードディスク取り付け用の金属フレーム、前面のLEDランプの中身まですべてが取り出せる。ここにハードディスクを取り付けることになる。背面側にSerialATAコネクタが2つ並んでいるのが、2台搭載できる証である。横から見ると、LEDランプがちょうど中央にあり、その上下にハードディスクを取り付けるようになっていることがわかる。このことがわかれば後は簡単である。
 まず、下段にハードディスクを挿し込む。しっかりとSerialATAコネクタに挿し込む。そして、側面の金属フレームに、付属のネジでハードディスクをネジ止めすれば完成だ。続いて上段にも同じようにハードディスクを挿し込み、側面からネジ止めして固定する。ネジを使って固定するのは、ハードディスクを挿し込むだけのケースと比べると手順は多いが、その分しっかりと固定できるため好印象だ。ちなみに、RAIDの設定だが、基盤部分にあるジャンピンで行う。ジャンパピンは2×2の4つ並んでおり、基板側を上にした時の上二つにジャンパブロックを取り付けると独立して認識し、左二つに取り付けるとRAID 0、右二つに取り付けるとRAID 1となる。あとは、元通りケース部分に収納してネジ止めすれば、組み込み作業は完了である。1台搭載のハードディスクケースと何の変わりもなく、ただハードディスクを2回取り付けただけである。ハードディスクの組み込み作業が初めての人でも何の問題もないだろう。また、付属のマニュアルは英語で書かれていて驚いてしまうが、箱に書かれた解説だけで問題ないだろう。

背面の四隅のネジを外すと、背面の部分がケースから引き出せる。

ケースから引き出したパーツである。背面の基板部分にハードディスク取り付け用のフレーム、前面のLEDランプまでが取り出せる。

ケースから引き出したパーツを前方から見ると、LEDランプ部分を挟んで上下に2段、ハードディスクが取り付けられるようになっていることが分かる。

基板部分にはSerialATAコネクタが2つ見え、ハードディスクを2台取り付けられる事が分かる。その上に、上向きに並んでいる金属棒がRAID設定用ジャンパピンだ。

基板と背面パネルの間にはファンが見える。一般的な5cmファンのようだ。ハードディスク2台分+αの横幅があるため、ファンは比較的大きめだ。

「GW3.5AX2-SU3/MB」の下段にハードディスクを取り付けたところである。

「GW3.5AX2-SU3/MB」の上段にもハードディスクを取り付けたところである。側面からネジ止めするため、しっかりとフレームに固定できる。


「GW3.5AX2-SU3/MB」を使用する

 それでは、ACアダプタとUSBケーブルを接続して、電源を入てみよう。電源を入れると自動的にドライバが組み込まれ、使用できる状態になる。今回はRAID設定を行わなかったので、「コンピュータ」には2つのドライブが表示されている。ファン自体は温度によって回転数が変化するような機能はないので。常に最高速回転だ。それなりに音はするが、ファンのモーター音と言うよりは風切り音なので不快な音ではない。ファンも比較的大きいためか、音自体もそれほど大きくなく、常用しても問題ないレベルに感じた。使用してる時は気にならないが、電源を切って静かに感じるというような感じである。また、ファンの風量は並と行ったところだが、排気風に手をかざすと温かいので、冷却はしっかりできているようだ。また、片方のハードディスクからもう片方にデータをコピーして、同時に動作させてみたが、ケースに触れても温かいより少し温度が高い程度までしか上がらなかった。どちらも5400rpmで発熱がそれほど大きくないハードディスクであることもあるだろうが、ファンのないハードディスクケースでは熱いと感じるほどまで温度が上がっていたことを考えると、冷却ファンの効果はたしかにあるようだ。
 前面の電源LEDとアクセスLEDは、見た目の大きさの割には光り方は小さいが、適度な明るさとも言える。これ以上暗いと視認性が損なわれ、これ以上明るいと、正面を向いている場合まぶしく感じるだろう。また、電源LEDは青、アクセスLEDは緑なので、大きさだけでなく色でも分かれており、分かりやすいのも好印象だ。

「GW3.5AX2-SU3/MB」を動作させたところである。電源LEDは青、アクセスLEDは緑に光る。眩しすぎず、暗すぎずちょうど良い明るさだ。


「GW3.5AX2-SU3/MB」の速度をテストする

 それでは恒例のベンチマークテストで速度をテストしてみよう。使用したベンチマークテストは、CrystalDiskMark3.0で、テストデータ1000MB、テスト回数5回としてテストを実行した物をさらに3回行った平均値としている。接続したパソコンは、マウスコンピュータの「MDV-AGZ8000B」(CPU:Core i7-3770K(3.50GHz・TuboBoost時3.90GHz・4コア8スレッド)/メモリ:8GB/OS:Windows 7 Premium)である。比較検討のために内蔵したドライブは、Seagateのハードディスク「ST3000DM001」とCFDのSSD「CSSD-S6M64NMQ」の2台である。Seagateの「ST3000DM001」は3TBのハードディスクで、1TBプラッタで7200回転と現時点で非常に高スペックなハードディスクであり、一般向けとしてはかなり高い性能を示す。ただ、それでも200MB/s前後であるため、より高速なドライブとして、SSDでもテストしている。この「CSSD-S6M64NMQ」はCrucialの「RealSSD C300」という、大人気だったSSDのOEM品で、製品は同じ物だ。SerialATA3.0(6Gbps)に対応しており、読み込み速度は300MB/sを超える。ただ64GBと容量が少ない製品である事から、書き込み速度が遅いため、ハードディスクも同時にテストしているという訳である。「GW3.5AX2-SU3/MB」に組み込んでUSB3.0接続した場合と、比較対象として「MDV-AGZ8000B」に内蔵して、マザーボード上のSerialATA3.0ポートに接続した場合でもテストしている。なお、「GW3.5AX2-SU3/MB」は3.5インチのドライブしか内蔵できないため、2.5インチハードディスクサイズのSSDは、3.5インチハードディスクの形状に変換するアダプタを介して内蔵している。


 それでは、もっとも速度が速いシーケンシャルアクセスの速度を元に検証してみよう。まず、ハードディスク「ST3000DM001」はシーケンシャルリード、シーケンシャルライトのどちらのテストでも、「GW3.5AX2-SU3/MB」に内蔵しUSB3.0接続した場合でも、パソコンに内蔵しマザーボード上のSerialATAポートに接続したのとほぼ同じ速度が出ている。シーケンシャルリード、シーケンシャルライトのどちらも「GW3.5AX2-SU3/MB」の方が若干低い値だが、どちらも1%以内であり、実際の使用上は感じるほどの差ではないだろう。3.5インチハードディスクとしてはかなり高速な200MB/s近い速度が出ているにもかかわらず、SerialATA接続した場合と同じ速度が出ているのは正直驚きだ。ハードディスクを内蔵してい使う分には、何の問題もないことになる。
 よりリード性能が高い、SSD「CSSD-S6M64NMQ」のテスト結果も見てみよう。SerialATA接続では、SerialATA3.0ポート(6Gbps)に接続していることもあって、362.73Gbpsというシーケンシャルリード速度が出ている。これに対して「GW3.5AX2-SU3/MB」に内蔵しUSB3.0接続すると208.47MB/sとなってしまう。ハードディスク「ST3000DM001」と似たような性能になってしまっている。やはり、SSDの速度をフルに発揮できるほど高速ではないようだ。USB3.0は理論上の転送速度は5Gbpで、600MB/s以上でるはずだが、理論上の転送速度が480Mbps(60MB/s)のUSB2.0でも30MB/s台後半がせいぜいだったことを考えると、実際の速度の限界との差はあるのが当たり前で、仕方のないところだろう。一方、気になるのはシーケンシャルライト性能だ。64GBと容量が少ないSSDなのでライト性能は低く、SerialATA接続でも74.56MB/sし¥かでない。本来なら「GW3.5AX2-SU3/MB」に内蔵してUSB3.0接続でもフルに速度が出そうなものだが、なぜか55.75MB/sにとどまっている。何度計測してもこの数値なので、何らかの原因があると思われるし、相性なども考えられるが、200MB/s以内に収まっていれば、SerialATA接続と同じ速度が出るというような単純な話ではないようだ。


 ついでにランダム512Kとランダム4Kのランダムアクセス速度でも比較してみよう。ランダム512K、ランダム4K共に、ハードディスク「ST3000DM001」は相変わらずSerialATA接続の何の変わりもない速度を記録している。一方。SSD「CSSD-S6M64NMQ」の場合、ランダムリード512KではUSB3.0の転送速度を超えているようで、大きな差が付いている。またランダムライト512Kに関しては、USB3.0の転送速度上はボトルネックにはならないはずだが、シーケンシャルライト以上に差が付いている。ランダム4Kに関してはリード・ライト共にUSB3.0の転送速度でも十分なはずだが、「GW3.5AX2-SU3/MB」の方が遅くなっている。「GW3.5AX2-SU3/MB」はSSDと速度を十分に発揮できないのか、「CSSD-S6M64NMQ」の場合だけ遅くなるのかは不明だが、パソコンに内蔵する場合よりは遅くなってしまうのは残念だ。それでもリード性能はすべてのテストで、ライト性能もランダム4Kではハードディスクより高速なので、パソコンに内蔵するほどではなくても、ソフトの起動やデータの読み出しは「CSSD-S6M64NMQ」の方が快適ではあるはずだ。



 今回はハードディスクを2台内蔵できる事と、USB3.0接続が可能という条件からもっとも安価な製品を選んだが、製品の質も良く、冷却ファンによる冷却効果も安心でき、転送速度も十分高速と、非常に満足のいく製品であった。今回はRAIDなどは行わなかったが、RAID機能を使わないにしてもお買い得なのは確かなようだ。ハードディスクを2台まとめて外付け化したい人にはお勧めの製品だ。


(H.Intel)


■今回の関係メーカー・ショップ
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