燕岳・餓鬼岳縦走−5/5

3日目:2009年8月9日(日)

餓鬼岳小屋〜白沢登山口

餓鬼岳小屋540〜618百曲りの終点〜726大凪山738〜856水場910〜938魚止ノ滝〜1007紅葉ノ滝1015〜1049白沢登山口〜駐車場−(タクシー)−しゃくなげ荘駐車場

 朝4時に起床。昨夜の雷雨も上がり雲海が広がっていた。しかし、東の空には雲が多くご来光は余り期待できそうもなかったが、わずかに色付いていた。

 早立ちの人はヘッドランプを点けて餓鬼岳を登っていた。私は朝食を頂いてから餓鬼岳を往復し、それから下山の予定である。

 朝食は5時。それまで外でご来光を待った。思った通り雲が多く、すばらしいご来光とはいかなかったが、とにかく朝日が昇り、剣吊や烏帽子岳から野口五郎岳の稜線がまばゆく輝いた。

 遠くには富士山や八ケ岳、南アルプスまで見えた。これだけ見えれば申し分ない。


(餓鬼岳小屋からのご来光)

(朝日に染まる剣吊)

(裏銀座コース、右:三ツ岳、中央:野口五郎岳)

 朝食を頂いている間に、また霧雨が降って来た。今日は餓鬼岳の往復は諦め、このまま下山することにした。
 タクシーを11時に予約し、5時40分に出発。

 ここから白沢登山口まで私が持っている地図では4時間10分。小屋の後ろにある標識では4時間30分となっているが、朝食のとき隣に座った方から「ここは木のハシゴが多く、下りは滑るので充分注意した方がいい」とアドバイスを受けたので、余裕をみて11時にタクシーを予約したのである。

 小屋から5、6分ほど荒れた道を下ると、道幅も広くなりダケカンバとササになり、クルマユリなどが咲いていた。

 6時18分、ガレ場へ出た。ここがきっと「百曲り」の終点だろう。道はなだらかになったが、所々に水溜りやぬかるみがあり、木の根っこが滑って歩きにくい。

 途中で単独行のオジさんが雨具を脱いでいた。私もここで雨具を脱いでひと休みしていると、先客は出発して行った。すぐに一昨日、穂高町のしゃくなげ荘から一緒にバスに乗ったオジさん2人連れが到着。近くで休んでいたが、タクシーの予約の関係かすぐに下って行った。

 ここからも、ぬかるみの連続だった。滑って捻挫などしないように慎重に下って行った。こんな所で捻挫などしたら大変だ。

 6時50分、やっと大凪(おおなぎ)山(写真左)が見えて来た。

 ここから1、2分も下ると、右にガレ場が見えて来た。道は森林帯にあるので、ガレ場の淵をへつるようなことはない。

 大凪山頂へ7時26分着。ここで休憩していると、途中で追い越して来たオジさん2人もやって来た。しかし、よほど時間が気になるようで早々に下って行った。

 下りだして15分もすると、涸沢のような少しガレた所へ出た。そして沢音が聞こえて来た。しかし、それは沢音ではなく大粒の雨だった。急いで雨具を着こむ。

 さらにガレた涸沢を下って行くと、凄い崩落現場へ出た。台風によって崩落したらしいが、直接登山道が崩落した訳ではなく、隣の崖が崩れ落ちて登山道が瓦礫に埋まってしまったのだ。そのため大きな岩や木がゴロゴロし、ガレキで歩くたびに足元が崩れ落ちる。西穂高の天狗沢を下った時を思い出した(天狗沢はもっと凄い)。

 しかし、ザイルなどは必要ない。餓鬼岳小屋にはザイルを持って来た人が数人いたが、ザイルを使うほど大げさではない。ルートさえ間違わなければ問題ないだろう。


崩落現場(1)

崩落現場(2)

 ガレ場を巻き込むと左手から沢の音が聞こえて来た。今度は雨音ではなく本当の沢音だが、なかなか着かない。すると、ひょっこりとハシゴの改修用の材木がデポしてある開けた所へ出た。さっきのオジさんがその材木に腰を下ろして休んでいた。ここが水場だった。右手に小さな沢があり、綺麗な水が流れていた。

 私は沢水は飲まないようにしていたが、冷たそうな水の誘惑に勝てず、両手ですくってゴクゴク飲んでしまった。

 オジさん2人が下ると、入れ替わって鎌を持った方が登って来た。登山口から草刈りをしながら登って来たという。こういう人がいるから我々は助かる。
 しばらくこの方と話し込む。私が「崩壊現場のルートが分かりずらかった」と言うと、これから行って来ますとのこと。

 水場から7分ほど下ると小さな滝が現れ、沢沿いの道となった。沢の中を石伝いに下り、木のハシゴを渡って左岸へ。いよいよこの沢の核心部である。左岸に付けられた長いハシゴは鉄パイプの手すりが付いていたので難なくクリアー。
 今度は橋を渡り、右岸に付けられた階段とハシゴを登って行く。

 左手に滝が見えた。魚止ノ滝だろうと思って写真を撮ると、すぐ近くに立派な標識があった。
 ここからもクサリやハシゴが続く。


魚止ノ滝

滑りそうな木のハシゴ

クサリ場もある

 突然、右手に「紅葉の滝」の標識があった。しかし滝がない。「う〜ん、滝はどこだ?」、よく見ると左手後方にわずかに滝が見えた。しかし、樹木が多くて写真は撮れなかった。

 ここから10m程先で休憩した。ここまで来ればもう登山口へ着いたようなものである。あと30分だ。
 ここまでは確かに木のハシゴや階段が多かったが、赤牛岳から黒部ダムへ下った「読売新道」に較べれば大したことはない。

 沢へ出た。沢も広くなり登山口も近そうである。沢から森林帯のなだらかな道になった。もう登山口だろうと思った時、わずかな登りになり、それを登り切った所が登山口だった。10時49分着。

 しかし、タクシーは1台もなく、誰もいない。車は水場で会った草刈の人のものらしい軽が1台止まっているだけだった。タクシーは予約時間より早く来て待っていることが多いのだが、今日は忙しいのだろうか。

 ここで雨具を脱ぎ、一服しながらタクシーを待った。一向にタクシーが来る気配がないので周りをキョロキョロすると、大きな看板の下に小さい看板があり次のように書いてあった。
「タクシー予約の方は、ここから200m下流でお待ちしています」。ナニ!、ここじゃあなかったのか!

 今度は急いでザックを担いて歩き出した。タクシーを待たせては悪いから。約束の11時に1、2分前に駐車場へ着いた。タクシーは30分も前から待っていてくれたそうだ。

 女性のタクシードライバーは、私の前に着いた2人は10時半に予約をしていたが15分ほど遅れ、一人は疲れてフラフラだったと言った。私は余裕をみて11時に予約をして正解だったと思った。(タクシー代:しゃくなげ荘まで6,600円也)

 この白沢登山道は、昨日登って来た人は「ここは下りたくない」といい、下った私は「こんな所は登りたくない」と思った。どっちにしても余り楽なコースではないようだ。