火打山(ひうちさん)    37座目

(2,462m、 新潟県)

(天狗ノ庭から見た火打山)

【登頂歴】
A2013年8月3日(土)、(未登)笹ケ峰〜天狗ノ庭散策(ハクサンコザクラ紀行)〜妙高山〜笹ケ峰

@1995年8月27日(日)、笹ケ峰〜火打山〜妙高山〜燕温泉
 




@笹ケ峰〜火打山〜妙高山〜燕温泉


1995年8月26日(土)

 先日、JRの駅で妙高山のポスターを見て目が釘付けになった。そのポスターには、残雪がわずかに残った妙高山と、山麓のミズバショウの花が写っていた。妙高山の溶岩ドームのような独特の山頂部と中腹の白い残雪を見て、無性に妙高へ行きたくなった。

 妙高山は、火打山、焼岳とともに頸城(くびき)三山と呼ばれ、北アルプスの白馬岳や鹿島槍などがある後立山連峰と、安曇野平野を挟んだ対岸に位置している。したがって、後立山連峰からこれらの山が見えるはずだが、私が後立山へ登っていた頃は頚城三山などに興味がなかったので、どれが何という山が分からなかった。

 さっそく地図を買って調べ、笹ケ峰から入って火打山と妙高山を登って燕温泉へ下る予定で夜行列車に乗り込んだ。
 久しぶりの夜行だった。昔のような4人掛けの列車ではなく、特急列車のようなリクライニングシートで快適だった。しかし、私はほとんど眠れなかった。


8月27日(日)

上野−(JR夜行)−妙高高原755−(バス)−笹ケ峰〜高谷池ヒュッテ〜火打山〜高谷池ヒュッテ(泊)

 妙高高原駅から7時55分発の笹ケ峰行きのバスに乗った。今日は天気もいいので途中から妙高山が見えるかも知れないと思ってカメラをザックから出しておいた。

 すると、市街を抜けてすぐにポスターで見たあの妙高山が右手に見えて来た(写真右)。ヤッターとばかりに急いで写真を撮った。やっと妙高山に逢えた。はるばるやって来た甲斐があったと思った。

 約50分ほどで終点の笹ケ峰へ着いた。いよいよここからが登山道である。ブナの大木が所々にある森林地帯のゆるやかな登りである。妙高高原駅で一緒にバスを待っていた中年の男性3人衆と前後しながら登って行った。

 しばらく登ると黒沢へ出た。ここは沢というよりも川という感じで、休憩するのには格好の場所だった。すでに上から下って来た10人ほどのパーティーが休んでいた。

 ここからは十二曲がりの尾根道で、つづら折りの急登が続く。私はもう足がふらついていた。昨夜の夜行列車の寝不足がこたえてきた。若い頃は山といえば夜行で行くものと決まっていたが、もう夜行で行って山が登れるほど若くはないということを教えられた。

 やっと稜線へ出た。そしてゆるやかな登りと急登を繰り返す。

 樹林地帯を抜け出すと分岐点の富士見平へ着いた。ここを左に行くと火打山が見えた。初めて見る火打山は何とピラミダルな山容だろうか。すっきりとした三角形の美しい山だった。これが妙高山よりも標高が高いとは思えないが、実際は8メートルほど高いらしい。山麓から山頂が見える妙高に対し、山頂近くまで登らないと見えない火打山の違いだろうと思った。

(やっと見えた火打山←拡大できます)

 高谷(こうや)池とヒュッテの赤い三角屋根が見えてきた。高谷池ヒュッテ付近は、まるで尾瀬ケ原のように湿原が広がっていた。山の上によくもこんな平らな所があるものかと驚いた。ヒュッテの前には池が広がり、その奥に火打山がドーンとピラミッドのように聳えていた。

 ヒュッテで宿泊手続き(予約制)を済ませ、サブザックに水とカメラだけを入れて火打山へ向かった。

 木道を進んで行くと、すぐに天狗の庭といわれる所に出た。ここも池塘があった。池塘の水を飲んでみると、土と埃が混じったような味だった。

 さらに木道を進み火打の右側の稜線へ出て、それを登ると山頂だった。初めて立った火打山の山頂であるが、初めて立った頸城山脈の山頂でもあった。思わず「ヤッター」とガッツポーズをしてしまった。

 山頂から、今登って来た道を振り返ると、広々とした緑の湿原の中に、小さな池が幾つも白く光って見えた。その湿原の左奥に待望の妙高山が聳え立っていた。ここからは遠いせいか少し霞んで見えた。


(火打山頂からの妙高山)

(山頂の人)

(火打の途中から見た池塘群と高谷池ヒュッテ)

 山頂には、登山口からほとんど一緒に登って来た中高年の3人衆がいた。その中の1人にカメラのシャッターを押してもらった。

 下りはまるで遠足のようだった。眼下に広がる緑の湿原と池塘を見下ろし、妙高山を眺めながらの下りである。

 ここはアルプスのような岩場も岩稜もないので安心して歩ける所である。湿原の中に建っている高谷池ヒュッテの赤い三角屋根が絵になった。私には絵をかく才能はないが、もしこんな所で絵を描いたら最高だろうと思った。

 高谷池ヒュッテは、町営(妙高高原)で、しかも予約制なので混雑することもなくのんびりすることが出来た。ここは山小屋というよりもペンションという感じだった。

 夕食の時、昨年定年になったという夫婦が私の前に座り、
「山は北アルプスが一番楽ですね……」と言った。
 私は一瞬返す言葉に困ったが、「北アルプスは小屋が沢山あるので歩く距離が短かくて済む」という意味に解釈して、
「そうですね……」と歯切れの悪い返事をした。

 この夫婦は糸魚川から来たと言うので、紅葉で有名な雨飾山について聞いてみた。すると、「雨飾山へ行くなら平日に行った方がいい。週末はマイカーが多くてバスが動かないほど混雑するから、絶対に平日に行くべきです」、と教えてくれた。


妙高山へ続く