(2,454m、 新潟県)
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朝、外へ出るとまだ真っ暗だった。しかも霧のような小雨が降っていた。
今日は早立ちなので朝食は頼まず、持って来たパンを軒先で食べて済ませる。
雨具を着てヘッドランプを点けて出発する。15分もするとヘッドランプがなくても歩けるようになって来た。
50分ほどでドーム形をした黒沢池ヒュッテへ着いた。ガラス越しに朝食を摂っている人達の姿が見えた。この小屋には昨日一緒だった3人衆が泊まっているはずだった。彼らは高谷池ヒュッテへ泊まるつもりで来たが、予約をしていなかったので泊まることが出来ず、黒沢池ヒュッテまで行くハメになった、と言っていた。
ここからは、どこをどう歩いたのか分からなかった。朝方の霧のような雨が次第に本降りになり、視界も悪く、ただひたすら足元だけを見て歩いて行った。
大倉乗越から妙高山への急登を登っている時、大きな岩があったので、その岩の陰で雨宿りをしながら休憩した。湯を沸かしてコーヒーを飲んでいると、例の3人衆が下から登って来た。
私が、「おはようございます」と声をかけると、それまで足元だけを見て歩いていた彼らはビックリしたように私の顔を見た。それは岩陰からクマが飛び出したかのような驚き方だった。
憧れの妙高山の山頂は、雨と強風の山頂だった(写真左)。わずか10メートル先がボンヤリとしか見えなかった。雨の中で交代で記念写真を撮ったが、ただ人が写っているだけで背後の岩塊は写らないだろうと思った。
山頂から下り出してすぐに、若い単独行が、「道がない」と言って引き返して来た。私も一緒に引き返すと、すぐに右手に踏み跡があった。岩場は踏み跡が分かりにくいので、今日のように視界が悪い時は一層気をつけなくてはならない。
燕温泉へ下る途中で、沢沿いの道が台風で崩れており迂回させられた。どこをどう廻ったのか分からないが、予定より1時間以上も遠回りさせられた。
燕温泉へ下る吊り橋の所に「露天風呂、無料」と書かれた案内板があったが、かなり上流の方らしいので諦めた。
燕温泉へ来ると、ここにも露天風呂の案内があった。無料である。さっそく汗を流すことにした。雨はいつの間にか止んでいた。一人で露天風呂に入っていると、雲の切れ間から妙高山が見えて来た。「クソー」と思わず悔しさがこみ上げてきた。登っている時はその姿を一目も見せず、下ってきてから姿を見せるとは……、全くツイていない。
(写真は風呂上りに撮ったもの)
ひと風呂あびて、食堂の外のベンチでビールを飲んでいると、やっと3人衆が下ってきた。
「早いですね……。吊り橋の所の露天風呂に入って来たんですか」と聞かれたので、近くの露天風呂へ入ったことを伝え、ぜひ入ってくるといい、とお勧めした。
このあとタクシーで妙高高原駅へ出て電車で帰って来たが、今度は天気の良い時に車で行ってみたいと思っている。 (平成7年)