カムイエクウチカウシ山−3/4

1:札内川ヒュッテ〜八ノ沢出合〜BC
2:BC〜三股〜八ノ沢カール
3:八ノ沢カール〜カムエク〜三股〜BC
4:BC〜八ノ沢出合〜札内川ヒュッテ

八ノ沢カール〜カムエク〜八ノ沢カール〜三股〜BC

八ノ沢カール820〜900ピラミッド峰との分岐〜925稜線〜1050カムエク1110〜1202稜線1210〜1245八ノ沢カール1300〜1509三股1515〜1620BC

 8時20分、いよいよカムエク本峰に向かってカールを出発。まずはピラミッド峰を正面に見ながら、高山植物が咲き誇るなだらかな道を登って行く。
 すると、すぐ右手に沢のような直登する道のようなものが現れた。一瞬迷ったが、しっかりと踏み固められた直進の道を選択した。(右の道はショートカットの近道だった)

 稜線近くなって、ついにカムエクの雄姿が見えた。「お〜!これよ、これこれ!」 私はこの山容を見るために10年もの歳月を要してしまったのだ!

 ピラミッド峰との分岐へ9時ジャスト着。ここはまだ稜線ではない。稜線は急峻な岩場なので巻いているのだろう。
 振り向けば、何とピラミッド峰がその名の通りピラミダルに見えるではないか!


(カムエク)

(ピラミッド峰)

 今回はあのピラミッドにも登るつもりで、あえて八ノ沢テント場へは泊まらず、三股まで行くつもりだった。それが三股まで行けなかった時点で、ピラミッド峰は半ば諦めかけていたが、明日の天気を考えると、キッパリと諦めてカムエクのみに絞ろうと思った。

 稜線へなかなか着かない。暑くてたまらず途中にあった低木の茂みへ頭から突っ込んで休憩。

 ここから八ノ沢カール越しに、1628mピークとその右手に岩内岳が見えた。実はこの2座は私にとって深い深い意味があった。

 6年前に道に迷ってビバークした時、岩内岳から朝日が登り、私は両手を合わせ、「どうか生きて帰れますように」と祈った山だった。
 ここから見ると、この真下当たりでビバークしたようだ。



(今回撮った写真)

(ビバークした時に撮った写真)

 お花畑の中を進み、ハイマツ帯をわずかに登るとパーと視界が開け、稜線の小さなピークへ飛び出した。

 ここから見るカムエクは、まさにアルペン的だった。右(北東)に八ノ沢カール、左(南西)にコイボクカールを持ち、豪雪に晒された急峻な岩壁は、アルプスの山に引けをとらない。

 今、途中で私を追い越して行った二人の青年が、手前の岩場と、山頂直下を歩いているのが見えた。
 

 西側には、1839m(イッパーザンキュウ)峰が目を引く。その左手にペテガリ岳が見えるらしいが分からなかった。

 ここからは、腰ほどもあるハイマツを漕いで行く。時々、潜って行くこともあった。とにかく凄い藪だ。
 岩場へ出るとホッとする。この岩場を登りながら、日高山脈固有種であるカムイビランジ(ナデシコ科)が咲いていないかと目を凝らしたが、見つけることは出来なかった。

 岩場を登り、ハイマツをわずかに漕ぐと、お花畑になった。ここで先行者が一人下って来た。
   
 お花畑を過ぎると、アッという間に山頂へ着いた。時に10時50分。ついにカムエクへ登ったぞ〜〜!
 これで日本二百名山も完登だ。ヤッター!!

 山頂には三角点はあったが、標識などはなかった。風に飛ばされてしまったのだろうか。

 山頂にいた若者が、「九ノ沢を下る」といって下っていった。私はたった一人の山頂で昼食にした。

 昼食を摂っている間に、10人位のツアーや町田のFさん他、続々と登って来た。一気に狭い山頂が賑やかになった。


(幌尻岳を遠望)

(九ノ沢を下るという青年)

 私は山座同定もそこそこに下山することにした。
 下りは得意だが、今日は足が痛くて辛い。そもそも履き慣れない軽登山靴を持ってきたのがいけなかった。両足にマメができ、爪先まで痛い。一歩ずつゆっくりと下って行った。


(下りの途中から見たピラミッド峰。カールから来ると手前のピークへ飛び出す)

 途中で先行するFさんの姿が見えた。しかし、足が痛くて追いつけない。
 Fさんが、「ピラミッド峰との分岐」よりはるか手前で左へ下って行くのが見えた。「?」と思いながらも私もその道を下って行くことにした。この道は登って来る時、沢か道か分からず迷った道で、涸れ沢の一気の下りだった。足が痛い私には辛かった。やはり正規な分岐まで行けば良かったと思った。

 八ノ沢カールへ12時45分着。Fさんが休んでいた。私もここで一服しながら沢靴に履き替えた。
 山頂で一緒になったツアーが下山して来たが、彼らは休憩もそこそこに下って行った。それが裏目に出て、岩場のロープ場で散々待たされることになる。

 カールからFさんと一緒に下ることにした。やはり一人よりは二人の方が心強い。
 途中の湧水でペットボトル3本をマンタンにした。後は注意しながら下ろう。

 ロープ場では、ツアーが一人ずつハーネスをつけ、固定ロープへカラビナを付けたり外したりしているので、待たされることしきり。ロープを掴んで下ればいいのになあ〜? 待つ方も疲れる。数年前、同じ北海道のトムラウシでツアーが遭難しているので、より慎重になっているのだろう。

 三股へやっと着いた。すでに15時を過ぎていた。明日の天気を考え、体力と時間があれば今日中に七ノ沢まで下ろうかとの思いもこれで諦めがついた。もう時間的に無理である。ならば早くベースキャンプへ行ってビールが飲みたい。

(三股で休憩しているツアー)

 Fさんは「ここからは、のんびり下りたい」というので、私は一足先に出発。
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 三股から1時間5分でマイ・テントへ着いた。

 到着するなり、沢へ冷やして置いた缶ビールで乾杯!(もちろん一人であるが)。今、登って来たばかりのカムエクを見ながら飲むビールは最高だった。

 隣のテントはもちろんない。今宵はたった一人であるが、熊が怖いとか寂しいということはなかった。ここは河原で周りが開けているからだろう。

 早々に夕食を済ませ、18時には寝てしまった。