憧れの仙人池〜雲切新道〜水平歩道を行く・・2/6

  1日目:信濃大町=室堂〜(雷鳥沢)〜剣山荘・・・1/6
  2日目:剣山荘〜真砂沢ヒュッテ〜(仙人新道)〜仙人池ヒュッテ・・・2/6
  3日目:仙人池ヒュッテ〜(雲切新道)〜阿曽原温泉小屋・・・3/6、4/6
  4日目:阿曽原温泉小屋〜(水平歩道)〜欅平=(トロッコ電車)=宇奈月温泉=新魚津=東京・・・5/6
  おまけ:今回出会った花・・・6/6


2日目: 2008年9月1日(月)

剣山荘〜真砂沢ヒュッテ〜〈仙人新道〉〜仙人池ヒュッテ


仙人新道から見た三ノ窓雪渓

剣山荘605〜825真砂沢ヒュッテ850〜1003二股吊橋1013〜1115昼食1210〜1344仙人峠〜1355仙人池ヒュッテ

 今日は剣岳を往復して来る予定だったが、明日から天気が崩れるというので剣岳往復を諦め、仙人池ヒュッテまで行くことにした。とにかく、仙人池から一目でいいから裏剣が見たいという一心である。

 朝起きた時は雲が多かったが、その雲も消え、まさにカンパレ、ピーカンになった。
 6時5分、剣山荘を出発。ほとんどの人が剣岳か剣御前小屋(帰る人)へ向かうが、私は剣沢をめざして行った。地図では剣山荘からも剣沢へ下れるようになっているが、かなり急な道を下りそうなので、剣沢小屋の方から下ることにした。

 剣沢の手前まで来た時、剣沢の右岸の巻道を下っている5、6人のパーティーが見えた。剣沢(雪渓なし)を越え巻道を探している時、剣沢小屋から下って来た人がいた。

 巻道を尋ねると、
「私も仙人池ヒュッテまで行きます。雪渓の情報を得て来ましたので、一緒に下りましょう」、と言い、さらに、
「二人ならもし何かあった時、どちらかが連絡できますから・・・」と言ってくれた。お互い単独行は心細い。すぐに意見が一致した。親切な方の後に付いて行く。

(写真右:朝日に輝く剣岳を見ながら剣沢を下る。拡大できます)

 小さな滝が現れると、すぐ下から雪渓になった。そして、対岸に剣山荘からの道が合流した。その道を今下って来た3人のパーティーが雪渓へ下りたのを見て、我々も雪渓へ下りた。ここは雪渓を踏み抜いたら絶対に助からないという。雪渓の下は激流なのでアッという間に流されてしまうらしい。したがって、雪渓へ下りる場所の見極めが難しいのだが、前のパーティーが雪渓へ下りているのを見て我々も下りたのである。

 まずはアイゼンを装着し、慎重に下って行く。所々にクレパスがあった。ここは日本三大雪渓の一つである。白馬大雪渓や針ノ木雪渓に比べると、斜面はなだらかなような気がする。平蔵谷の手前に、少し急な斜面があったがアイゼンさえ着けていれば全く問題ない。


大雪渓らしくなって来た。(拡大できます)

源次郎尾根(右)と平蔵谷

真砂沢ロッジが見えて来た。

 大きな荷物を背負って雪渓を登って来た人がいた。前を歩いていた”親切な方”が、夏道への出口を尋ねると、「雪渓上に真砂沢ロッジのホースが現れるので、それに沿って下ればよい」と教えてくれた。

 我々はその教えに従って下って行った。雪渓から左岸の夏道へ出た所でアイゼンを外す。しかし、夏道を少し歩くとまた雪渓へ下る。それを何回か繰り返す。何度目かに夏道へ出た時、雪渓が滝になって落ちていた(ナムの滝というらしい)。あのまま雪渓を下って滝へ落ちたら大変だ。

 8時25分、真砂沢ロッジへ到着。
 ここで、コーヒーを注文。ご主人が挽いたというブレンドでくつろぐ。
 「雪渓は毎日変化しているから、自分で判断するしかない」、というご主人。ここから先のコースについても、色々とアドバイスしてくれた。

 8時50分発。
 河原の左岸を進んで行く。1か所だけ雪渓があったが、ご主人のアドバイス通り、二人離れてトラバースした。

 二股までずっと左岸の巻道である。剣沢の水量が多く、音を聞くだけで迫力を感じる。

 二股の吊橋へ10時3分着。
 吊橋を渡ると、左手正面に大きな雪渓が現れた。写真を撮り、地図を広げてみると、何と三ノ窓雪渓ではないか! こんな間近から三ノ窓雪渓が見られるなんて信じられない。


二股の吊り橋

三ノ窓雪渓

 二股を10時13分発。
 ここからが急登の始まり、始まり・・・!!
 10分も登ると、もう心臓がバクハツしそうだった。連れは先に行ってしまい姿が見えない。剣沢は下りばかりだったので、ギアチェンジがうまくいかない。
 とにかくこの急登を登らない限り、あの裏剣の雄姿は見られない。

 HPやブログなどに仙人池からの写真などは沢山載っているが、この「仙人新道」がこんなに苦しいとは書いてなかったような気がする。少し勉強不足だった。

 10時43分、見晴らしのいい場所へ出た。ピークの上に小屋らしきものが見える(実際は違ったようだ)。

 しばらくすると、道がなだらかになったので、ここで休憩。彼と離れてしまったが仕方がない。東京から来たという彼に一言お礼を言いたかったが、付いて行けず済まないことをしてしまった。(2日後に宇奈月温泉駅でお会い出来た)

 ここから5、6分ほど登ると、突然尾根へ出た。そして、正面に三ノ窓が天高く聳え、白い雪渓がまるで天から滑り降りる滑り台のように見えた。

 11時15分、三ノ窓雪渓が見える所で昼食にすることにした。地べたに座り込んで湯を沸かす。この道がこんなにキツイとは思わなかった。12時10分発。

 歩き出して2、3分もすると、立派なベンチが2つある広い休憩所へ出た。「な〜んだ!ここで昼メシにすれば良かった〜」と思ったが、ここまで来られなかったのだから仕方がない。
 ここは、きっと展望もバツグンなんだろうが、生憎、山のテッペンに雲がかかってしまった。

 道端に目が覚めるようなナナカマドの紅葉があった。

 途中で中年のご夫婦が下って来た。聞けば真砂沢ロッジのテン場から池ノ平と仙人池を往復しているという。

 やっと稜線へ出た。道もなだらかになった。仙人峠まであと5分か10分だろうと思いながらも、ここで休憩。三ノ窓の上部はガスに隠れてしまった。

 やっとヒュッテが見えて来た。途中で小屋だと思ったのは小屋ではなかった。

 仙人峠、13時44分着。ここから右へ曲がって仙人池ヒュッテをめざして行く。木道を下り、少し登り返した所にヒュッテがあった。ヒュッテ着、13時55分。

 ザックを放り投げ、宿泊の手続きを済ませ、早速ビールを買い込む。とにかく、「ビール!ビール!」とオマジナイのように唱えて来たのである。

 ビールを飲んでから、仙人池へ行ってみたが、生憎というか予想通りというか、裏剣の雄姿は拝めず、裾の方がチラッと見えただけだった。すべては明朝に期待するしかない。あ〜神様、仏様、明日は晴れてくれますように・・・!

 今日は一人一部屋だという。そもそも今日の客は私一人のようで気抜けしてしまう。私の前を歩いていた10人ほどはどこへ行ってしまったのだろうか。仙人温泉小屋まで下りたのか、それとも池ノ平小屋まで行ったのだろうか。

 4時ごろになって予約していたという団体さん10名ほどが来た。私は玄関前まで出て、出迎えてやった。その後3名の消防署員が来た。彼らは業務で来たという。

 剣沢を一緒に下った東京から来た、あの”親切な御仁”は、当初はここへ泊る予定だったが、急遽、仙人温泉小屋まで行くと言っていた。明日中に欅平まで下るためには、今日中に仙人温泉小屋まで行く必要があるとのこと。雲切新道が出来たことによって、 以前より1〜2時間余計に時間がかかるため、仙人池ヒュッテに泊まっていた客が仙人温泉小屋の方へ流れているようだ。新道が出来たことによって山小屋の経営にも大きな変化が生じているようだ。


仙人峠近くから見えた小窓雪渓