作成:2004/7

関東大震災の跡と痕を訪ねて

番号 : 藤沢市 FS-09

藤沢市 --- 江ノ島の波食台 ---

  • 対象:江ノ島の波食台
  • 所在地:神奈川県藤沢市江の島
  • 交通:小田急江の島線「片瀬江ノ島」
  •    江ノ島電鉄「江ノ島」
  •    湘南モノレール「湘南江ノ島」
江の島全景

写真1 江ノ島全景

岩屋・稚児ケ淵の石碑

写真2 岩屋・稚児ケ淵の石碑

波食台

写真3 波食台

波食台と海食崖

写真4 波食台と海食崖

撮影:2004/6

陸地の地盤昇降

図1

陸地の地盤昇降図(新編 日本被害地震総覧 宇佐美龍夫1987)に書き込み

写真2は江の島南西端にある「稚児ヶ淵」・「岩屋」の石碑です。この写真の左側に遊歩道が続いており、遊歩道から海岸に下りると波食台が左右に広がっています。なお、岩屋とは海面が現在より高い位置にあった時の海食洞であり、断層に沿って奥深く延びています。第一岩屋(奥行152m)と第二岩屋(奥行56m)。

波食台*は関東大地震によって地盤が隆起したために陸化した平坦な岩盤面であり、海が荒れていなければ散策することができます。


*波食台について

岩をも砕くといわれるように、白波を立てた波浪は岩盤を侵食します。この侵食作用は干潮時の海面より下には及ばないため海面下では平坦な岩盤台地が形成されます。この平坦な岩盤台地を波食台(海食台ともいう)と呼びます。

波食台の形成と同時に波浪の攻撃前面となる陸側は時には足元をすくわれるように岩盤もろとも崩壊するために断崖のような海食崖が形成されます。

写真4は波食台と海食崖で、岩屋から東方向を望んでいます。遠景にうっすらと見える低い山並みは三浦半島です。波食台と海食崖を形成している岩石は凝灰質の砂岩で、新生代第三紀の海に堆積した堆積物が固結してできた岩石(葉山層群)です。


江ノ島の被災状況

……、同島は桟橋は流失したれども全島岩礁に依り成立し居る關係上、震撼比較的輕く縣社江島神社少破壊に止まり、旅館兼料理店岩本樓仝惠比壽屋は共に建物中の一部數棟全潰し、仝金龜樓には大なる被害なく全島に於て全潰十一戸、半潰十八戸を出せるに過ぎず、……
神奈警察部 大正大震火災誌 1924より


関東大震災と江ノ島の波食台

地震後の水準測量によると相模湾北岸の小田原付近から房総半島の先端に至る地域で最大2m隆起しました。図1の「陸地の地盤昇降図」には隆起した領域が「点々マーク」で示されており、江の島付近では1m程度の隆起があったことを示しています。地震前には海面下すれすれに没していた波食台が地震に伴う隆起によって写真のように海面上に姿を現しました。

その他の参考資料

・神奈川県地学のガイド 神奈川県の地質とそのおいたち 見上敬三監修 奥村清編集 コロナ社 昭和46年 205~213頁

・同改訂版 昭和56年 202~205頁

・新訂版 日曜の地学 神奈川県の自然を訪ねて 神奈川県の自然を訪ねて編集委員会 築地書館 2003 102~107ページ